写真ならiPhoneで撮れば十分…と思っていませんか? 確かに、写真は文句のない画質で撮れるようになりましたが、動画はまだ満足とはいえません。特に、歩きながらiPhoneで動画を撮ると、どうしても手ブレや細かな揺れが目立ってしまいます。

それもあって、筆者は「友だちと旅行に行ったときなどに、手軽にきれいな動画が撮れるカメラが欲しい」と感じていました。そこで、1年ほど前に人気のアクションカム「GoPro」を購入。確かに、手ブレのない動画が撮りたいときに撮影できるようになりました。

けれど、使っているうちに不満も感じてきました。手持ち撮影では映像の水平が取れないのです。水平が取れていないと、どうしても素人っぽい映像になりがち。揺れを抑えて水平を保つ役割を持つジンバル(スタビライザー)を買い足せばよいのですが、そうなるともう手軽に撮影できるとはいえなくなります。

そこで出会ったのが、新しいアクションカム「Insta360 ONE R」(インスタサンロクマル ワン アール)でした。このカメラなら、走りながら撮影しても手ブレしないうえ、斜めに持っても常に水平が保たれるので、周りで起こった面白いシーンも撮り逃す心配がありません。しかも、わざわざパソコンを使わずにスマホで簡単にビデオを編集してSNSに共有が可能と、いいこと尽くめなのです。

  • 中国のInsta360が発売した合体式のアクションカム「Insta360 ONE R」。今回は、ユニークな撮影が可能な360度モジュールの使い勝手を試してみました

前置きが長くなりましたが、本稿でInsta360 ONE Rの製品レビューをしてみましょう。さまざまなシーンで使うごとに、カメラに詳しくない人ほど買うべきアクションカムだと感じました。

どんな製品なの?

1月下旬に発売されたばかりのInsta360 ONE Rは、カメラレンズ、モニター、バッテリーの3パーツを自由に組み合わせて使えるユニークな設計の最新アクションカメラ / 360度カメラです。360度モジュール+4K広角モジュールが付属する「ツイン版」の実売価格は税込み57,000円前後、1インチ広角モジュールが付属する「1インチ版」は税込み68,200円前後となっています。

  • パズルを組み合わせるように使える、ユニークなモジュール式のアクションカムです

360度モジュールを装着した時の重量は約130.5g、サイズは72(W)×48(H)×43(D)mm。ちなみに、前モデルの「Insta360 ONE X」の重量は約115gとより軽量でしたが、形状が違うため比較には適しません。そこで、GoProの売れ筋アクションカム「HERO8 BLACK」と比較すると、重量にして+4.5g、大きさは横幅が+5.7mm、高さが-0.6mm、奥行きが+14.6mmといったサイズ感になっています。

  • 360度モジュールを装着して上から見た様子。レンズが前後に張り出していますね

撮影も簡単でした

実際に、公園で動画を撮ってみました。まずは、360度モジュールを装着した本体を直に手持ちして撮影。歩きながらでも映像がブレず、途中でカメラをタテにしても水平が保たれていることに驚きました。これなら、旅先の風景を映像に残しておきたいときに便利に使えます。もちろん、友だちとの楽しい会話も丸ごと収録可能です。

Insta360 ONE Rならば、カメラがどれだけ傾こうが水平をバシッと保ってくれます

  • 付属のフレームを装着すれば、GoPro用のマウントが利用できるようになります。360度モジュールのレンズを保護できる付属のカバーを着ければ、ポケットの中に入れて気軽に持ち運べます

現在、アクションカメラ市場には、さまざまなマウントが用意されています。ほとんどがGoPro用のマウントですが、実はInsta360 ONE Rでもそのまま使えるんです。例えば、バックの持ち手に着けられるサードパーティのマウントを利用すれば、フリーハンドで撮影を続けられます。

  • マウントの利用イメージ。もともとGoProのために買ったものでしたが、カメラの状態によらず常に水平が保たれるInsta360 ONE Rで、ようやく真価を発揮してくれました

次に、自撮り棒を伸ばして歩いてみると、まるでドローンで空撮しているような映像に仕上がりました。モードを『小惑星』にすれば、アニメのような特殊効果も楽しめます。

ところで、ここで1つお詫びと注意喚起があります。実は、マウントのネジを逆に装着して撮影したため、映像にネジが写り込んでしまいました。後日、別の場所で撮り直した映像も追加しました。意外と見落としやすい盲点だと思いますので、ぜひ気をつけてください。

  • マウントのネジを逆に装着して撮影すると、映像にネジが写り込んでしまいます!

自撮り棒を装着して撮影したところ。思っていたよりも高い位置からの撮影となり、上から見下ろしたような動画が撮れます。再生時にアプリで調整すれば、リトルプラネットのような表現もできます

動画の編集こそ本製品の醍醐味

「動画編集なんて、やったことない」「難しそう」と思う読者も多いのではないでしょうか。しかし、Insta360 ONE Rの醍醐味は、むしろ動画編集にあるといえます。

スマホの専用アプリを使えば、誰でも簡単に編集ができます。ズームイン、ズームアウト、カメラを振る(パン)、固定(フィクス)、動いている人やペットなどを追い続ける、といった本来であれば撮影時に気を付けるべきカメラ操作を、あとから行えるのです。だから、撮影時にやることといえば、本機の撮影開始ボタンを押すだけ。友だちとの会話に集中できますし、周りの風景に目を奪われてもOK。家族旅行でありがちな「ちょっとお父さん、撮ってばっかりで自分がちっとも写ってないじゃない!」ということがなくなります。

アプリは、スマホ版とPC版が提供されています。スマホアプリなら、動画を再生させながら指でぐるぐると画角を変えていき、好きなシーンで+マークをタップしていくだけ。動画を再生させたときに、その+マークに画面が向くようになります。

  • こちらはスマホ向けの専用アプリの使用イメージ。分かりやすいチュートリアル映像も用意されています

  • こちらはWindows / Mac向けの専用ソフトの使用イメージ

BGMとしてプリインされているフリーのミュージックトラックは、どれもセンスの良い楽曲ばかりでした。映像をスローモーションにしたり、色味を変えたり、不要な部分をカットしたり。前モデルのInsta360 ONE Xではアプリが使いやすいと評判でしたが、このInsta360 ONE Rでもその特徴を継承しています。

アウトプットは、360度動画とFlat videoから選べる仕様で、そのままLINEやYouTube、Twitterに共有することだってできます。旅行から帰ってきてからじっくり編集、なんて悠長なことをいわず、旅先の宿でちょこっと編集して旅行中のメンバーのグループLINEに共有しちゃう、なんて芸当も楽々です。

  • あらかじめSNSへの投稿が想定されているのがうれしいポイント

アップで映し出すポイントを撮影後に選べるのがユニークです

本体のみで防水に対応しているのもポイント

前モデルのInsta360 ONE Xでは、スマホに転送するまで撮影した映像が確認できませんでした。Insta360 ONE Rでは、本体内蔵のモニターでチェックできるので安心です。また、前モデルは防水に非対応でしたが、Insta360 ONE Rは最大5mの防水に対応しています。水辺のレジャースポットでも安心して撮影できます。

  • 4K広角モジュールを装着すれば、GoProライクに使うことも

本稿では詳しく紹介できませんでしたが、レンズを4K広角モジュールや1インチ広角モジュールに交換すれば、GoProのような使い方もできます。レンズを逆向きに取り付けることで自撮りも簡単。広角なので、背景に観光名所を入れて自撮りできますし、複数の友だちとグループショットを撮影するときも便利です。

  • カメラを前 / 後、どちら向きにも装着できるのがユニークです

このほか、AIにより被写体を自動追尾してくれる機能や、AIによるオート編集機能、歩いている人がまるで滑っているかのように移動するストップモーション動画撮影機能など、さまざまな新機能も追加されています。

テレビ番組のような、クオリティの高い動画を手軽に撮ってみたい――。Insta360 ONE Rは、そのように思っているカメラに詳しくない人ほど買うべきカメラに仕上がっていました。もちろん、カメラに詳しい人にとってもオススメです!