[写真]=Getty Images

 2月15日に発売となった雑誌『SOCCER KING』3月号では、チャンピオンズリーグのラウンド16を完全プレビュー! いよいよ始まる決勝トーナメントに向けて、一部コンテンツを公開します。

 

 バルセロナが迷走している。シーズン途中での監督解任は2003年1月のルイ・ファン・ハール以来、実に17年ぶりのことだ。

 人格者として知られるエルネスト・バルベルデは、フロントや選手たちとも良好な関係を保っていた。スーペルコパ・デ・エスパーニャのアトレティコ・マドリード戦でお粗末な逆転負けを喫したとはいえ、解任が発表された1月14日時点でラ・リーガでは首位に立ち、チャンピオンズリーグもドルトムント、インテルを抑えてグループ首位で16強入りを決めている。普通に考えて、このタイミングでクビにする必要があったとは思えない。

 それでも監督交代を敢行したクラブからは、「このままではまずい」という焦りが強く感じられた。一昨シーズンはローマ、昨シーズンはリヴァプールを相手に信じられない形で逆転を許した失態を、これ以上繰り返すわけにはいかないという焦りだ。

 確かに、バルベルデ体制3年目を迎えた今シーズンのチームから、ポジティブな話題を見出すことは難しくなっていた。攻撃はリオネル・メッシとルイス・スアレス、守備はマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンやジェラール・ピケの個人能力頼みになって久しく、格下相手に大苦戦を強いられることもめずらしくない。目玉補強のアントワーヌ・グリーズマンより16歳のアンス・ファティの活躍が大きなニュースになっていることが、チームがうまくいっていないことを表している。

 しかし、シーズン半ばの監督交代にリスクはつきものだ。難航した代役探しもその一つ。大本命のシャビに「時期尚早」というもっともな理由で断られると、クラブはラ・マシアたたき上げでバルサB3年目のガルシア・ピミエンタには目もくれず、“外様”であるキケ・セティエンを大抜擢した。

 クライフィスタ(クライフ信者)として知られ、ボールポゼッションとポジショナルプレーに異常なまでのこだわりを持つセティエンは、確かにバルサのプレースタイルには合致する。ただ、20年近いキャリアにおいてビッグクラブの指導経験は皆無で、過去の実績はラシン・サンタンデールでの1部昇格やルーゴでの2部昇格、昨シーズンまで率いたベティスでのヨーロッパリーグ出場権獲得くらいのものだ。

 何より彼は、バルサが今シーズン最大の目標に据えているCLを指揮したことがない。グループリーグから経験させるならまだしも、失敗が許されない決勝トーナメントでの初采配はリスクの高い賭けだと言える。

 与えられた時間は少ない。就任からナポリとの1stレグまで約6週間だ。ミッドウィークにコパ・デル・レイが続く間はトレーニングに割ける時間も限られているため、実戦のなかで自身のアイデアを落とし込んでいかなければならない。その過程では、理想と現実の間で折り合いをつけることも求められる。

 グラナダとのデビュー戦。セティエンはポゼッション時に左サイドバックのジョルディ・アルバと右FWのファティが両翼となり、メッシとグリーズマンが入れ替わりでセンターフォワードの位置に入る3-3-4に近いシステムを採用した。アンカーのセルヒオ・ブスケツが最終ラインに下りるのではなく、センターバック2人と右サイドバックのセルジ・ロベルトが3バックを形成してビルドアップを行う形は、これまでにない試みだった。

 しかし、この試合は80パーセント超えのポゼッションを計上しながら1-0の辛勝。翌週のバレンシア戦を0-2で落とした時点で、早くもセティエンは軌道修正を強いられた。

 以降はオーソドックスな4-3-3に変更し、ビルドアップ能力を重視したサミュエル・ユムティティの登用も断念してクレマン・ラングレを先発に戻した。両サイドバックの攻め上がりを促したその後の戦い方は、言ってしまえばバルベルデのときと何も変わっていない。

 理想家、ロマンチスト、耽美主義者―。セティエンはしばしばそういった言葉で形容されてきた監督だ。このまま前任者を踏襲した無難な采配に終始することはないと期待している。61歳にしてようやく手にした、キャリア最高の大舞台だ。結果はどうであれ、是非とも我を貫いてもらいたい。

◆【PLAYER FOCUS】FW 17 アントワーヌ・グリーズマン

 バレンシアのロドリゴを獲得できず、スアレス不在の穴を埋めるセンターフォワードの補強は失敗に終わった。スアレスの復帰は5 月初旬の予定。そこまでCL制覇の夢をつなぐためには、新たな得点源として期待されるグリーズマンの活躍が不可欠になる。

 締め切り時点までに公式戦で挙げた12ゴールはメッシ、スアレスに次ぐチーム3位の数字ながら、まだ本領を発揮しているとは言い難い。アトレティコ時代の後期からすでにそうだったが、ドリブルで強引にマークを剥がすような突破は皆無だ。シンプルにパスをさばくばかりで怖いプレーがなく、崩しのスイッチとなる突破やスルーパスはメッシに一任している感がある。

 それでも、得意とする裏へ抜け出す動きを繰り返すことで、徐々に味方からのパスが集まるようになってきている。コパ・デル・レイのイビサ戦では、引き出した2本のスルーパスをいずれもゴールにつなげる決定力の高さ発揮した。CLでもその得点感覚は大きな武器となるはずだ。

文=工藤 拓