2020年のMacを考えるシリーズ、最終回となる第4回は「新しいインターフェイスの可能性」についてだ。

オールマイティではなかったTouch Bar

Macにまつわる新しいインターフェイスとしてまず挙げられるのが、2016年のMacBook Pro刷新の際に搭載された「Touch Bar」だ。Samsungから帯状の有機ELパネルの供給を受け、ここにAppleお得意のマルチタッチセンサーを載せたデバイスだ。macOSからカスタマイズできるものの、制御自体はT1/T2チップによってmacOS/Intelプロセッサと分離される仕組みで実装された。

  • MacBook Proの特徴ともなったTouch Bar

    MacBook Proの特徴ともなったTouch Bar。利用しているアプリに応じて表示が変わり、タッチパネル的な使い勝手をMacにもたらしてくれる

しかし、Touch BarはiMacシリーズやMac Proに付属するMagic Keyboardには搭載されておらず、MacBook Pro 13インチモデルの上位機種と、15インチ改め16インチモデルにのみ採用されている。

Touch Barはファンクションキーの代替として、メディアコントロールやボリューム調節、ディスプレイ輝度の変更といった機能のほか、fnキーと組み合わせることで通常のF1~F12キーとしても利用できる。

例えば、写真アプリやGarageBandアプリでは、パラメータの設定をタッチ操作で微調整できるなど、マウス操作よりも直感的な作業が可能だ。iMovieやFinal Cut Proでは、ビデオ全体の中から特定の箇所を確認しながら選択できる方法として、作業効率の向上に貢献している。ただし、「常に便利に使える」というものではなく、その有用性を実感できるのはあくまで特定の条件や機能のもとでしかない。

失敗作となったバタフライキーボード

MacBookシリーズは、16インチMacBook Proが登場するまで、2016年以降バタフライキーボードを採用してきた。0.55mmの薄さながら、新しいバタフライ機構でキーを安定して押し下げることができるメカニズムが特徴だ。だが、そのストロークの薄さから、ゴミなどが詰まってキーがうまく働かなくなるトラブルが続出し、ついにはキーボードの無償修理プログラムが提供されるようになった。

  • MacBook Proで採用されたバタフライキーボード。ストロークの薄さを特徴としていたが、ゴミが入り込んでトラブルを起こしやすいことが嫌われた

Appleもそのトラブルは認識しており、2017年、2018年とMacBook Proを年次刷新するたびにキーボードに改良を加え、最新モデルではキーボードのメカニズムをシリコンで覆うことでホコリやゴミの侵入による不具合を起きにくくし、さらに打鍵音を小さくしている。そのような対策を施していても、発売時から無償修理の対象とするなど、自他ともに認める失敗作となってしまった。

こうした経験を経て、2019年に登場した16インチMacBook Proには1mmのキーストロークを確保し、シザーメカニズムを改良した新しいMagic Keyboardが採用された。このネーミングは、iMacなどに付属するBluetooth接続の標準キーボードと同じで、キートップもそのまま交換できるという。

  • 16インチMacBook Proで採用されたMagic Keyboard。バタフライキーボードで指摘されていた欠点を解消した

Touch Barにしろ、バタフライキーボードにしろ、2015年以降のMacにおけるインターフェイスはヒットしたとはいえない状況が続いた、と評価せざるを得ない。