【フラット35】2020年3月の金利予想、新型肺炎の影響は?

住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんが、連載形式で住宅を買う側・住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信。2020年3月の住宅ローン金利について世界情勢や国内金融市場にインパクトを与えそうな事柄を踏まえ、解説いただきます。

こんにちはブロガーの千日太郎です。

新型肺炎のリスクから長期金利は急降下したにも拘わらず2月の【フラット35】金利は1月から0.01ポイント上がってしまいました。では3月はどうなるのか?決算月の完成引き渡しラッシュを前に住宅ローン金利の動向に注目が集まっています。

いまだ新型肺炎の感染拡大のリスクは大きく、3月の決算期を前に企業の業績にも影響を与えそうではありますが、長期金利は徐々に上がり始めたかと思えば再び下がり始めており、不安定な動向となっています。では3月の【フラット35】はどうなるのか?わかりやすく解説します。

新型肺炎の感染拡大と長期金利の動向

 

こちらは2019年12月から日米長期金利の推移をとったグラフです。特に米国の長期金利が20日あたりを境として大きく低下しています。これは新型肺炎のリスクを大きく見た投資家たちが株式を売却し安全資産の債券を買ったためです。これによって債券の価格が上がり、利回り(金利)は下がったのです。

そして日米ともに1月末あたりに長期金利が底を打ち、そこから今度は上がり始めたかと思えば、再び下がっています。これはどういうことなのでしょうか?

感染拡大リスクの高さが金利の低下をもたらした

新型コロナウイルスの感染がここまで広がっている原因の一つがその潜伏期間の長さです。平均5.2日とのことですが、最長で14日は潜伏し、症状が出ていない状態で感染が拡大するためです。

大阪で武漢への渡航歴のない方の感染が明らかになったのは、感染の疑われる時期(1月12日~17日)から約2週間経過してからでした。また、感染した方が一度は検査で陰性と診断されていた事実も明らかとなり、感染しているか否かの判断にも不安があるということもリスクです。

長期金利の急激な下落はこうした感染を食い止める難易度の高さを反映したものだったといえるでしょう。

その反面毒性が低いことが金利の上昇要因

感染を食い止めることが難しい反面、毒性は低いことがわかってきました。日本人で初めて新型肺炎への感染が確認された奈良県のバス運転手の男性はすでに治療が終了し、退院したと発表されています。また、大阪で感染が判明したバスガイドの女性は、比較的早く快方に向かったとの報道がなされており、適切な治療を受けられる環境にあれば重篤化する前に快方に向かうことが実証されてきています。

中国では死者が出ていますが、WHOによると致死率は約3%であるとのことです。過去に蔓延したSARSコロナウイルスが約10%、MERSコロナウイルスが約34%であったことと比べると、まだ生命のリスクは高くないといえます。これが比較的早く金利が戻り始めた要因でしょう。

想定外の事実が出てくると過敏に反応する市場

しかし、一時は上がった長期金利が再び低下しています。毒性が低いとはいえ、中国国内の経済活動がストップしていることの経済的な悪影響が意識され始めたからではないかと分析しています。

中国に生産拠点を置く大手自動車メーカーは中国工場の操業停止によって部品供給が止まり中国国外の生産にも影響が出る可能性があることを公表しています。また、私のオフィスは難波にあるのですが、これまでインバウンドに沸いていた難波の街からは目に見えて中国人観光客が減っています。

大方の予想として収束に向かうだろうとなっているところで、想定外の事実が出てくると過敏に反応する、そんな不安定さをはらんでいるのが今の状況です。今後20日前後までの長期金利の動向から目が離せません。

長期金利の動向から【フラット35】の金利が予想できる訳

20日までの長期金利を確認することで、なぜ【フラット35】の金利が予想できるのかを解説しておきましょう。

住宅ローンの【フラット35】を融資するのは住宅金融支援機構という国の機関なのですが、わたし達が融資を申し込む窓口については、民間の銀行が代行して行う形をとっています。そして、わたし達が住宅ローンとして借りるお金は、住宅金融支援機構が金融市場から調達して貸しているのです。

典型的な例として「買取型」という【フラット35】のスキームを図にすると以下のようになります。

住宅金融支援機構が民間金融機関からフラット35の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債」という形で販売するという仕組みになっています。機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を国が取り扱う安全な債券という考えで購入します。そのため、表面利率は国が発行する債券=10年国債の利回りに連動する傾向があるのです。

民間金融機関は住宅ローンのお金を出しますが、すぐに住宅金融支援機構に債権を買い取ってもらいますので、住宅ローンの金利で儲けるということはありません。民間金融機関は融資事務を代行する手数料で儲けています。

実際の長期金利の推移と【フラット35】金利

長期金利と【フラット35】金利推移を振り返ってみましょう。

【フラット35】の金利は毎月20日ごろに発表される機構債の表面利率によって決まるため、ちょうど20日ごろの長期金利の影響を強く受けます。なので、機構債の表面利率が発表される20日ごろの長期金利がどのくらいの水準になるか?が予想のポイントになります。

1月末に長期金利が大きく下がったのに、2月の【フラット35】の金利が上がってしまったのは、長期金利が下がり始める前の段階(長期金利が約0%の時点)で機構債の表面利率が決まり発表されたからです。

機構債の表面利率が発表される20日ごろの長期金利が-0.05%~0%付近で推移するとすれば、【フラット35】金利も1.25%~1.30%の間くらいだという予想が可能となるのです。

まとめ~機構債の表面利率が発表される20日までの金利動向に注目

2019年2月に機構債の表面利率が発表されたのは2月20日でした。今年も同じく20日あたりに公開されるでしょうからそれまでの長期金利の動向をよく見ておいてください。

なお、下表は2019年10月~2020年2月までの【フラット35】金利が決まるタイミングの長期金利、機構債の表面利率を並べて各金利の上がり幅を比較したものです。

長期金利+0.22%上昇に対して、【フラット35】金利は+0.17%の上昇ですから、0.05%も金利上昇が抑制されています。もしも20日までに大きく長期金利が上がってしまったとしても、すでにかなり【フラット35】の金利上昇は抑えられているのです。【フラット35】を選ばれた方の判断は今のところ正解であるといえるでしょう。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

執筆者:千日 太郎