元アンジュルム・和田彩花がソロとして歩んだ半年間「作詞をしてみて、改めてつんく♂さんのすごさを実感」

2009年から2019年6月まで、ハロー!プロジェクトのアイドル・アンジュルムとして活躍してきた和田彩花。卒業後はこれまでとは異なるアプローチをしながら“ソロアイドル”として活動している。2月24日からは東名阪を巡る初のツアーも控えている彼女が思う、卒業してからの半年と、これからのこと。
──今日はソロ活動を始めてからの半年間を振り返っていただきます。

和田 ソロになってから、単純にできることが増えました。今はアイドルでいること以上に、何を表現するかが大事だなと思っています。とはいえ、いきなり1人で表現することはできるとも思っていなかったです。アンジュルムでは、ほぼほぼ完成形で曲を頂いて、しかも仮歌まで入っている。私たちは仮歌通りに覚えてくることが多くて、レコーディングで修正していくようなやり方でした。振りも先生が付けてくれるし、ステージでも「位置はここで、みんなでタイミングを覚えてね」って感じで丁寧に教えてくれました。じゃあ自分で表現することって何があったんだろう、と考えてみると、意外と何もできていなかったんだなと。

──表現することについて受け身だったというのは、アンジュルム卒業前から感じていたことですか?

和田 いえ、卒業してから改めて気付きました。もちろんアンジュルムにいたときも、「もっとこうしたいな」という自分の欲はあったけど、その程度だと欲でしかなくて、それを形として表現するのは、すごく大変なことでした。アンジュルムを卒業して数週間後に、「詞を書いてみなよ」って言っていただいたので、とりあえず作詞をしてみようと。それで、この半年間いろいろ書かせてもらっていますが、ずいぶん世界観が広がりました。

──それまで作詞の経験は?

和田 全くなかったです。ただ自分では書かなかったけど、詞を読むのは大好きだったんです。特にアンジュルムの詞をたくさん書いてくださっている作詞家の(児玉)雨子さんは、直接の会話は少なかったんですけど、同世代だから詞を通して価値観を共有している感覚が楽しかったです。今は自分で表現できる場を頂いてはいますけどイントロダクションでしかなくて、自分にとって何が必要で、どうしたら思い描いている表現になるかを、いろいろ試しています。現時点で公開している曲は3曲で、2曲はステージで披露していますが、それぞれ方向性の違う曲なので、いろいろな気付きがあります。自分的には、いろんなことに挑戦した半年間でしたね。それを卒業直後からできたのは、恵まれた環境だと思います。

──アンジュルム時代から続き、現在通われている大学院と、ソロ活動の両立はいかがですか?

和田 今は大学院がメインです。アンジュルム時代も両立はさせていたんですけど、生活の7割は仕事で、その合間に勉強をする感じでした。きちんと取り組む時間が修了には必要だし、そこはしっかりやりたかったので、今は学業を優先させてもらいながら、自分のやりたいこともやらせていただいています。



──作詞は普段から書き留めているんですか?

和田 曲が先にあって、それを聴いてから詞を書いています。めちゃ楽しいですね。前からいろいろ自分で書きたいと思っていたから、ネタはたくさんあったし、書くのに苦戦するってことはあまりないです。ただ先に曲があって詞を付けているから、音の数や言葉の組み合わせ、発音の響きも考えなきゃいけない。最初はそんなことも分からなくて、とりあえず音のあるところに言葉を付けていくみたいな、その程度だったんですけど、今は譜割りも意識するようになりました。あと、詞の世界って1つのストーリーで成り立っていると勘違いしていたんです。もちろんAメロからストーリーを繋いでいく方もいますけど、実際に言葉をはめていくと、そう上手くはいかなくて。そういう作り方はあまり私に合わなくて、1つのテーマはあるけど、いろんな場面を繋ぎ合わせています。いろんなところに意味を含ませていくのが、今の自分にはやりやすい形です。自分で作詞するようになって、改めてつんく♂さんのすごさを実感しました。分かりやすい言葉で感情を伝えて、しかもメロディーに寄り添っていますからね。

──2月24日から始まる初ツアーでは何曲披露する予定なんですか?

和田 13曲です。アンジュルムの頃は、曲を覚えて、それを自分の体に落とし込んでステージ上で歌と踊りでパフォーマンスをするって感じだったので、音楽の成り立ちを全く知らなかったんです。だから、この半年間で曲に関わってくれている人たちに雑談ベースで、いろいろ教えてもらっています。そもそもの話なんですけど、曲って楽器で成り立っているんだなと、作詞の機会をいただいてから思いました(笑)。まだアレンジにまでは気が回らないけど、音楽ってこうやって成り立っているんだなって改めて気付いたんですよ。自分が曲作りに携わるようになって、もっと深く自分から音楽に接していかないとダメだなと。だからこそ、いろんな音楽を聴いていますし、実際にライブにも足を運んでいますし、音のイメージから言葉を連想して作詞に生かすようになりました。聴く音楽はそれほど変わってないんですけど、音とかメロディーとか注目するポイントが変わりました。

──詞のテーマも自分で考えるんですか?

和田 そうです。前から幾つか書きたいテーマを自分の中で溜めてあったんですけど、曲によって合う・合わないがあるから、曲を聴いて、「こういうのが書きたい!」と思ったテーマで詞を書きます。

──最初に公開された『Une idole』はタイトル通り“アイドル”をテーマにしています。

和田 まずは自分の立ち位置を示さなきゃいけなかったから、直接的にアイドルをテーマに書きました。

──歌詞の大半がフランス語です。

和田 仮歌は英語だったんですけど、私はフランス語で書く方が得意なので、許可を頂いてフランス語で作詞して、書き終わってからフランス人の方に確認してもらいました。





──今年1月1日にYouTubeで公開された『空を遮る首都高速』はどんなテーマですか?

和田 都会に集まる人たちの中で自分が思うことや、そこで生きる人たちの生きがいをテーマに、都会ならではの寂しい感情などを詞にしてみました。



──先の2曲はアンジュルムとは曲調も大きく変化しているので、自然と歌い方も変わってますよね。

和田 今も試行錯誤しています。曲調によっては「囁くように歌って」と言われるんですけど、私はボイストレーニングで声を張って、おなかから響かせて歌うのを、ずっとメインにやってきたんです。そうすると、すごくマイクに歌声が乗りやすいし、おなかで支えて安定するので音程も取りやすいんですよね。そうじゃない歌のアプローチを試してみると、声の出し方も分からないし、音も取りにくいし、マイクに声が乗らない。それだとレコーディングでは上手く歌えたとしても、ステージでは再現できないじゃないですか。なので今までの発声法で、小さな声でもマイクに乗るような声を出せるように、ちょっとずつ研究しています。

──振りはどうしているんですか?

和田 1曲目は先生に付けていただいたんですけど、やってみると自分はこうじゃないかもって気付いたんです。もちろん付けてもらいたい曲もあるんですけど、マイクスタンドを使って歌う曲もあるので、そこは自分の表現でやった方が形になるかなと。自分の感情とは違う動きがあったりすると違和感があるので、振り付けも試行錯誤中ですね。

──昨年12月31日に「第3回ももいろ歌合戦」に出演して、『Une idole』を披露しました。スマイレージと同じ2010年にデビューして同時代を生きてきたももいろクローバーZ、東京女子流と同じステージに立って感慨深かったことをツイートしていましたね。

和田 ももクロと女子流と一緒に歌えたことに感動しましたし、この機会をありがとうって気持ちでした。

──アンジュルム時代はグループのこと、メンバーのことなど考えることも多かったと思うんですけど、その辺はソロになって楽になったのではないでしょうか。

和田 当時、私たちはメンバー主導では何も進められなかったけど、スタッフの方々が考えてくれたものに対して、自分はこう思う、こういうのはどうですかと提案することはできたので、1日中アンジュルムのことを考えていました。なので、考えることがいつもたくさんあって、心も体も疲れていたんでしょうね。今は自分以外のことを考える時間は減りましたし、体調も良くなりましたね。



──今もアンジュルムの活動は気になりますか?

和田 気になりますし、メンバーの卒業とか節目のコンサートなどは観ています。ただ今は私がどうこう言える立場じゃないし、いつまでもアンジュルムのことを考えるのは違うかなって思うんです。たとえば卒業するメンバーのコンサートに行って、SNSで感想などを書いて、たくさん「いいね」がついたりすると、私の言葉がメンバーに影響を与えちゃうかもしれないし、ファンの人たちにとってもどうなのかなって。なので極力、発言することを避けています。そういう距離感が今はちょうどいいですね。いつまでも元リーダーが発言する、みたいな雰囲気は好きじゃないですし。

──どうしてもファンは和田さんの発言を期待しちゃいますからね。

和田 ファンの方に私の気持ちを理解してもらえるとうれしいです。とはいえアンジュルムメンバーのブログには「いいね」をけっこう押しています(笑)。あと卒業したメンバーとは会う機会も増えて、今まで以上に距離が近くなっています。

──自分に対するSNSの反応などはチェックしていますか?

和田 直接届いたメッセージは見ますけど、自分から積極的には見ないですね。それでもソロになってから自分が発信することが、こんなにも広がっていくことなんだなって実感しています。私にとっては考えるのは当たり前のことだし、自分の意思を示すことが大切だと思って発信しているんです。でも素直に受け取ってくれない人もたくさんいるから、政治絡みの発言をしたときに、右寄りの方から返信があって驚きました。ただそういう方とか、今まで出会うことのなかった方からメッセージが届くのも新しい経験ができて楽しかったですね(笑)。

──ライブの向き合いも以前とは変化していますか?

和田 アンジュルムでやってきたライブは楽しかったけど、疑問に思うこともたくさんあったんです。応援してくれるのはうれしいんですけど、私はお客さんに持ち上げられて「キャー!」って言われるのが、あまり好きじゃないんです。もちろん私がお客さんを下に見るようなライブも嫌だし。どちらかが偉いとかではなく、対等にライブを楽しみたいんですよ。アンジュルムにいたときは、常にお客さんを盛り上げて盛り上げて一体感を作ってということを教えられて、そこを目指すように言われてきたんですけど、それだけが正解なのかなと。お客さんと直接アイコンタクトを取ることだけが重要な事なのかなと。私は卒業してからバンドのライブに行く機会も増えたんですけど、生の音だけで一緒にいるなと感じられたんです。

──ライブする側からガンガン煽らなくても、音だけで一体感を得られるということでしょうか?

和田 そうです。こちらから促さなくても同じ空気で、同じリズムに乗ることはできるじゃないですか。だから自分のライブでも、こういうコミュニケーションの取り方をしたいって示していきたいですね。



──どんなワンマンツアーになるのか決まっているんですか?

和田 まだ詳細は決まっていないんですけど、バンド編成の曲もやります。ライブは全編を通してがっちりした世界観を作りたい訳じゃなくて、その曲ごとの世界観をライブでやりたいんです。やたらと照明でガーっと明るくするとかは、私のライブの在り方としては好きじゃない。「見えること、見えないこと」がテーマの1つにあって、モニターがあるとみんなそっちを観ますけど、果たして本人の姿をすべて見せるのが大切なことなのか。同じ空間でいることが絶対なのに、そのバランスを崩すようなことは必要なのか。そんなことを考えながら演出を考えている最中です。

──カバー曲をやる可能性は?

和田 ないですね。お客さんは期待するでしょうし、そういう気持ちも汲み取らなきゃいけないなとも思います。でも、せっかくソロが始まったのに、今はまだ昔のことは振り返りたくないんですよね。

──ソロになってからの自分を漢字1字で表すなら何でしょうか。

和田 「探」です。まだソロになって半年ですけど、その間にいろんなものを探して、その結果が2月からのワンマンツアーになると思うんです。大学院が修了すると、自分の表現に一直線できますし、そこからが本当の始まりですね。

──大学院卒業後、仕事以外でやってみたいことはありますか?

和田 大学院を卒業したら語学を学ぼうと思っています。同じ意味を持つ言葉でも、国によってニュアンスが違ったり、逆に違うようで一緒だったり、それを知るのが楽しくて。語学を通して国の在り方も見えてくるのかなと思うんですよね。あと海外旅行に行きたいです。お仕事でしか行ったことのないフランスまで1人旅を考えています。



──最後に4つのワードテーマを出しますので、それに対してパッと思いついたことを聞かせてください。まずは「愛」です。

和田 愛って小さい頃から誰もが共通で知っている言葉ですけど、それがどの感情を表すかは分からなかったんです。使うのも恥ずかしかったんですけど、20歳を過ぎて、アンジュルム卒業間近になって普通に口にするようになりました。メンバーそれぞれ本当にバラバラな個性があって、その差を埋めるときに愛が必要だなと気付いたんですよね。愛があれば人の差は埋まるんだなと。だけど、愛が素晴らしいのかどうかは分からない。どんな相手でもすべてをさらけ出すのは難しいですし、愛を保つためには素直な気持ちのままではいられない。どうしても自分のわがままも出てしまうでしょうしね。とは言っても、雨子さんに「何でも愛で片付けてしまったら思考停止する」と言われたこともあるんですけど(笑)。

──続いては「平和」です。

和田 私の最大の目標は世界平和なんです。戦争がない時代でも、みんなが幸せに生きているわけじゃないし、どこかで悲しい思いをして生きているわけじゃないですか。そういうのが少なくなって、なるべくみんなが一緒に生きていけたらいいなというのが願いなんです。そのメッセージを、音楽を通して自分なりに表現することが大切かなと思います。

──続いて「革命」。

和田 私は大学院で画家の(エドゥアール・)マネを勉強しているんですが、よくマネは革命的と言われます。確かにマネは西洋絵画史を大きく展開させましたけど、本人的には革命の意識はなかったと思うんです。伝統的な絵画を学ぶ過程で、自然と新しい表現を発見したんだろうなと。私も尖ったところがあるって言われるんですけど、別に変えたいとか革命を起こしたいからやっているわけじゃありません。疑問や気付きは伝統と向き合うことで沸き上がるものですし、それが結果とて革命的になることもマネに学びました。

──最後は「怒り」です。

和田 アンジュルム時代、怒りは私の原動力でした。毎日が怒りでしたね(笑)。いる場所が違ったなって思うんですよ。私は保守的な場所にいると壁に感じるというか、閉塞感があったんです。常にそういうものを感じていて、それを怒りに変えて表現していたときがあります。今は自由奔放に何でもやれる環境だから怒りはないので、それでいいのかな? って思う気持ちもあります。ただ、いろんなことに対する関心は広くなって、今まで以上に世界情勢にも目を向けるようになりました。もちろん今でも自分の合わないものと対面したときに怒りはあります。性格が真逆で合わない人もいます。ただ、そういう感情を歌詞にすることで心を整理して、どういうことなんだろうって考えるきっかけにもなっていますね。

(取材・文/猪口貴裕)
▽和田彩花(わだ・あやか)
1994年8月1日生まれ、群馬県出身。2009年にスマイレージ(のちにアンジュルムに改名)の初期メンバーに選出。2019年にアンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業。現在はソロアイドルとして、活動の幅を広げている。
Twitter:@ayakawada
Instagram:@ayaka.wada.official

「和田彩花ライブツアー前2021─この気持ちの先にあるものはなに?─」
2月24日(月・祝) Zepp Nagoya (愛知) 開場17:00/開演18:00
3月7日(土) Zepp Osaka Bayside (大阪) 開場16:30/開演17:30
3月12日(木) Zepp Tokyo (東京) 開場18:00/開演19:00