新型ウイルス、陰謀論者が盲信する「特効薬」の正体

新型コロナウイルスが世界中に蔓延する中、特にソーシャルメディアでの反応は恐怖とパニック一色だ。だが一部陰謀論者にとっては、病気に関する偽情報や事実無根の噂を拡散する格好のチャンスとなっている――その中には、極めて危険なものもある。

恐ろしい例をひとつ挙げよう。Qアノン信奉者は人々にMMS(ミラクルミネラルソリューション、反ワクチン派などから”奇跡の治療薬”と謳われている漂白剤)を飲めば、新型ウイルスを撃退できると勧めているのだ。YouTubeなどのプラットフォームではこうしたコンテンツの規制に努めているものの、やはり目にするのは難しくない。

オンラインマガジンDaily Beastによれば、Qアノン(ドナルド・トランプ大統領が民主党率いる児童売春組織を相手に密かに闘いを挑んでいる、という陰謀論)の支持者は、MMSがコロナウイルスの「特効薬」だとTwitter上で吹聴している。取り分けMMSの名前で売られている”20-20-20スプレー”に関しては、「ウイルスを速攻で除去する」と主張するユーザーまでいる。別の陰謀論者は「コロナウイルス は人口減少計画のひとつ」だとツイートし、予防対策としてコロイド銀(サプリメントの一種で、大量に服用すると肌や爪の褪色の他、腎臓障害を起こす)やMMSを勧めている。

MMSを絶賛するこうしたツイートは、新型ウイルスは製薬業界が金儲けのために(多くの場合、陰謀論者のお気に入りビル・ゲイツ氏によって)人工的に製造された、という俗説との合わせ技で広まるのが常だ。以前ローリングストーン誌でも報じたように、こうした主張の拡散にはQアノン信者のユーチューバー、ジョーダン・サザー氏の影響が大きい。

新型コロナウイルス感染拡大が最初に報じられて以来、彼は自分のTwitterアカウントでウイルスは2015年に登録された鳥コロナウイルスの特許が元になっていると主張したり(もちろん正しくない)、中国の研究室で製造されたのだと示唆するなど、病気に関する偽情報を煽っている。

また、MMSが新型ウイルスの治療薬であるという「証拠」があるとも主張し(これも嘘)、「州全体をMMSしろ、MMSで全部消毒するんだ」と呼びかける動画を撮影している。医学的に危険な偽情報をばらまいているという批判に対しては、彼は先の主張を繰り返し、「二酸化塩素がどのくらい危険かと言うと……水を飲めるようにするタブレット状のものがアマゾンで10ドルで買えるほどだ。奴らの理屈だと、日光に当たると”色褪せ”するから、太陽も取り除いた方がいいってことになる。二酸化塩素は、使い方を間違わなければ役に立つんだ。マスコミは科学なんてわかっちゃいない」

MMSは、主にジム・ハンブル大司教率いるメキシコの一派、ジェネシスII教会が販売している。元航空宇宙学の研究者で、健康食品店の経営者であり、金鉱掘りでもあるハンブル氏は、南アフリカで金を発掘していた時にMMSを発見したと主張している。

MMSの主成分は亜塩素酸ナトリウムで、”活性剤”、つまりレモン汁などのクエン酸と混合すると、漂白剤の成分である二酸化塩素が発生する。昨年食品医薬品局(FDA)が発表した声明によると、大量に摂取した場合「激しい嘔吐や下痢、脱水症状によって引き起こされる命に係わる低血圧や、急性肝臓不全」を引き起こす場合もあるという。

MMSは近年ソーシャルメディア上で、マラリアからHIV/エイズまであらゆる病気を治す奇跡の薬と謳われている。昨年FDAは、我が子の自閉症スペクトラム障がいを”治そう”とした母親が相次いでMMSを使っているとの報告を受け、使用しないよう呼びかける公式警告を発令した。

だが最近になって、ハンブル氏はコロナウイルスの症状緩和剤としてMMSを売り込み始め、1月27日付のニュースレターにも「私には、MMS(二酸化塩素)がコロナウイルスの予防と撲滅に非常に効果的であると信じる理由があります……私に言わせれば、真っ先にMMSに頼るべきです」と書いている。


YouTubeはMMSの効能謳う動画の全面禁止を発表済み

ソーシャルメディア各社が偽情報を黙認しているという激しい批判を受け、早速MMSコンテンツ削除に取り組んでいる企業もある。例えばYouTubeは昨年11月にポリシーを更新し、MMSの効能を謳う動画の全面禁止を発表した。

だが規制されたにも拘わらず、同プラットフォームでは未だにこうした動画を簡単に見ることができる。ジェネシスII教会を喧伝する18分の動画では、20-20-20スプレーの効果を語る証言が次々と流れる。別の動画では、コロナウイルスとMMSに関するハンブル氏のニュースレターが読み上げられ、MMSガイドブックを購入するよう勧めている。「皆さんの病気や病状によって、手順もそれぞれ違ってきます」 別のYouTuberはキャプションに「間違いなくMMSでコロナが治るとは言えないけど、大手製薬会社は答えを見つけられていないし、MMSは安全で効果的だと証明されている」と書いている(後者に関してはもちろん証明されていない)。

YouTube側も新型ウイルス関連の偽情報拡散を食い止めるべく、コロナウイルスの検索結果を表示する際、ニュースソースなど信頼できる情報筋を他の投稿よりも優先するようにしているという。「YouTubeのコミュニティガイドラインは、有害な治療薬の宣伝など、身体的危害や死を引き起こす可能性のある危険な行動を推奨するコンテンツを禁じています」と、YouTubeの広報担当者はローリングストーン誌に語った。YouTubeによれば、「有害または危険なコンテンツ」に関する同社のポリシーは特にMMS支持の投稿に目を光らせており、ローリングストーン誌が先に挙げたような動画などは発見され次第直ちに削除されるという。

だとしても、緊急速報が飛び交うような事態となると、各社プラットフォームがデマ拡散に対応するのは難しい。この点に関しては、YouTubeだけではない。急速な偽情報の拡散取り締まりに甘いことで有名なTwitterを例に挙げると、MMSの効能を裏付ける「証拠」についてのサザー氏のツイートはすでに640回もリツイートされている。新型コロナウイルスが蔓延するにつれ、それを取り巻く偽情報もまだまだ拡散していきそうだ。