コンビ仲悪くても揺るぎない相方への信頼感…お笑い第7世代のダークホース「コウテイ」

“超不完全究極肯定完全感覚奇天烈漫才”という尖り切ったキャッチフレーズを掲げる「コウテイ」。下田真生さんと九条ジョーさんが2013年に結成しました。昨年は「ytv漫才新人賞決定戦」などで決勝に進出。今年1月に行われた音声だけで審査するMBSラジオの賞レース「ヤングスネーク杯」では優勝しました。「笑い飯」の西田さんや「とろサーモン」久保田かずのぶさんら「M-1グランプリ」王者が絶賛するポテンシャルを誇り、4月、5月には大阪、東京、愛知で単独ライブを開催。“お笑い第七世代”のダークホースとも言われていますが、その原動力は二度の解散が物語っているコンビ間の緊張関係にありました。



(取材/文:中西 正男)
九条:相方が鹿児島出身で、僕が滋賀県出身でNSC大阪35期生として出会ったんです。同期はゆりやんレトリィバァや「ガンバレルーヤ」「からし蓮根」などでかなり個性派が揃っている感じではあります。



下田:最初、NSCのクラス分けで同じ班になりまして。話してみると家の方向も同じだったので、そのまま、一緒に帰ろうとなったんです。じゃ、なんと、同じマンションでして(笑)。そこで意気投合して「これも縁だし、一回、漫才をしてみようか」とコンビを組んだのがスタートでした。



―ただ、これまで2回解散されてるんですよね?



下田:最初の解散はNSC在学中で、その半年後に再結成。そして、その2年後くらいにまた解散して再結成。そして現在にいたるという感じです。



九条:解散の話し合い自体は、ゆうに100回以上はしてきましたね。



下田:解散を切り出すのは、基本、僕からなんです。理由としては、とにかく性格が合わない。性格の不一致。基本的に、相方は僕のことをナメてるんですよ。ネタも書かんし、パチンコに行くし、競馬も行くし「お前、お笑いをなんやと思ってるんや」というのが根底にあると思うんです。

ただ「コンビとしてやっていくんなら、さすがにそういう言い方まではしない方がいいんじゃない?」ということを“そういう言い方”で言っちゃうんですよね(笑)。それが続くと「もうやってられん」なっちゃうんです。それが過去、解散に至った流れです。



九条:ナメてるつもりはないんですけど、僕は全部言うタイプなんです。逆に相方は「そこまで強くは言うな」というスタンス。そのぶつかり合いはあると思います。ただ、明らかに僕より相方の方がパフォーマンス能力は長けている。その一点を見ても、全くナメられないというか。だから僕は続けてるし、僕から解散は口にしたことはないんです。



下田:言ってることは正論なんですけど、言い方なんですよね。僕からしたら、許容範囲を超えているというか…。



九条:「とろサーモン」の久保田さんや「笑い飯」の西田さんにすごくお世話になってるんですけど、お二人は「コンビってそういうもんやから。結局、笑いが取れているということはそのコンビで合ってるという証拠。互いに折れて、向かい合ってやっていくしかない」とは言っていただくんですけどね。皆さんが笑ってくださる。結局、それに尽きると思います。昨年あたりから賞レースでも少しずつ結果が出てきて、最近はまだ以前よりは仲良くなっているとは感じています。あくまでも“僕は”ですけど。



下田:確かに、少しずつ上には向かってるとは思っています。ラジオの特番とかテレビにも出させていただいて、感覚的には一段一段上がってるんじゃないかなと。
 (4602)左からボケ担当の下田真生とツッコミ担当の九条ジョー
―2020年の目標は?



九条:正味の出場資格的にはまだまだ何年も先まで出場はできるんですけど、僕は勝手に「M-1」は去年がラストイヤーだと思ってまして。というのは、同期の「からし蓮根」みたいに正統派でカチッと面白いタイプでは僕たちはないですし、今のような変わった芸風でいくんだったら、去年が“賞味期限”やったのかなと。

だから、最低でも準決勝までは行きたかったんですけど、それができなかった。となると、もう今年は去年と同じスタイルで、同じような笑いを取ることはないと思っていて。

3~4年かけて今のスタイルを何とか作り上げてきて、昨年はいろいろな関西の賞レースで決勝までは行くことはできたけど、優勝はできなかった。そして「M-1」でも結果が残せなかった。

 確かに、いろいろ考えて、力を注いで、積み重ねてきた“積み木”ですけど、もう一回、それを一旦バラす。そして、また積み上げていって、これまで積み上げたものよりも1センチでも高いものを作っていく。それをまた今年から始めないといけない。そういう年に今年はなるだろうなと考えています。



―そのためにやっていることは?



下田:今は九条が100%ネタを作って、僕がそれにチョロチョロ言うくらいなんです。ただ、今年からは僕もネタを作って、去年から毎月やっているネタの単独ライブの時に、少なくとも一本は僕が作ったネタを入れてみる。そうやって、僕のスキルを上げることによって「コウテイ」の底上げをするというか、総合力を上げるということを試みています。



九条:去年の5月から単独ライブをネタとトークに分けて月に2回は必ずやってまして。ネタで言うと、ひと月に最低でも20本以上は書いてきました。それこそ、わき目もふらず。今年は変化を求めると言っても、結局、さらにネタを書いて、試して、磨いてということは変わらないんですけど、やっぱり、その積み重ねしかないなと。



―月に最低でも新ネタ20本とはすごいペースですね。



九条:でも、それだけ作れるのは、相方のパフォーマンス能力が高いから。本当に、そこなんです。「こんな感じのことができたら面白いけど、実際にやるのは難しいもんな…」ということがないというか。

思ったことが全部具現化できる。それだけのパフォーマンス能力があるので、考えること全部がネタにできると言いますか。



―信頼もあるが、ぶつかり合いも多い。これまでそんな二人の活動を支えてくれたような先輩の言葉などありましたか?



九条:本当にたくさんの方にお世話になってるんです。先ほどの西田さん、久保田さんもですし「スーパーマラドーナ」の武智さんも熱い言葉を日々かけてくださいます。皆さんに共通するのは「とにかく辞めるな」ということでして。こんなことを自分で口にするのはおこがましいんですけど、皆さん、表現は違いますけど、骨子としては「売れるから、絶対に大丈夫。だから、辞めることだけはするな」と。これまで2回解散はしましたけど、そこから何とか持ちこたえているのは、そういう言葉に応えられるよう、何とか踏ん張らないといけない。その思いですね。
©ytv (4604)―芸人としての大きな目標はありますか?



九条:…僕は、僕の、国を作りたいです(笑)。僕が全部正しいとされて、僕がしゃべれば拍手喝采。そういう国を作りたいなと思います。



―いきなりかなりのシフトチェンジ…。なかなか香ばしい発言ですね(笑)。



九条:ま、あえて、こういう言い方をしましたけど、単独ライブで僕らのコミュニティーを広げていくというか、全国どこに行っても、僕らを見に来てくださる方がいらっしゃる。そんな状況が築ければ一番ありがたいなと思っているんです。そして、ゆくゆくはお笑いの中に「コウテイ」というジャンルを作りたいです。例えば「ジャルジャル」さんだったら、もう「ジャルジャル」と聞いただけで、みんなの中に笑いの方向性というか、イメージができるじゃないですか。

そういった感じで「コウテイ」と聞いたら「あ、そういう感じね」となるようなものを作り上げたいというか。いつかは、そこを目指したいです。

あと、僕は短編小説を書いたりとか、インスタグラムにポエムを載せたりもしているので、そういうものを集めて、小さな僕の聖書を発行したいです。



―また、最後に香ばしくなりましたね(笑)。



下田:僕は…、これはホンマにある種の願いなんですけど、最後の最後には、普通に九条と友達になりたいですね。



九条:なんやその願い(笑)。



下田:今は本当にギクシャクしているので、いつかそれを取っ払って、幼馴染くらいに二人で仲良くなってみたいです。じゃ、何をしたらそこにたどり着くのか。ま、それが分からんのですけどね(笑)。ただ、そうなったら、その時は、いい味が出てくると思うんです。それを出したい。とことん売れることなのか。また違うものがあるのか…。「オール阪神・巨人」師匠も60歳を越えてから本当に仲良くなったみたいなお話を伺ったことがありますし、いつかは、そんな境地にたどり着いてみたいですね。



九条:でも、今はホンマに一番関係性はいいと思います。本当にただただ嫌いなら、ここまでネタも作れないし、ネタ合わせもできませんから。売れたいという思いは合致していること。そして、そのためには相方とやるのが一番だと確信していること。それは互いに強く持っているので、今もやっているんだろうなと。確かに、70歳くらいになって、二人で肩組んで風呂とか入ってたら理想かもしれないですね。「今日も笑わしたったで!」と。

…すみません、なんというか、まじめな感じで話してしまったんですけど、こんなんでいいんですかね?もっとボケた方が良かったんですかね?僕ら、まだまだいけますよ(笑)。



■取材後記

周囲から“コンビ仲の悪さ”という情報を聞きかじってはいましたが、その状況で取材現場へ。微妙に離れた二人の間に、仲人よろしく、僕が座る形で取材がスタートしました。

文字でどこまで伝わるか分かりませんが、取材中もそれぞれがそれぞれの話の語尾で「ま、あくまでも『僕は』ですけど」などと相手との距離感を強調したり、けん制したりするやり取りがてんこ盛りで、ガチンコでギクシャク感、バチバチ感がひしひしと伝わってきました。

後で取材用のレコーダーを聞いてみて驚きましたが、いつも以上に、僕がよくしゃべっています。二人の間に走るピリッとした空気をマイルドにしようと、自ずと口数多くなっていました。

二人の間にある緊張感はホンモノ。ただ、ただ、最終的に出てくる話は相手への圧倒的な信頼感でした。

そんなきれいなところに帰結させるの二人にとっては不本意なのかもしれませんし、他人の僕が云々するのは不遜かとも思いますが「いろいろと思うところはあるが、相方としてはこれ以上の相方はいない」。そんなところが二人の最大公約数なのだと強く感じました。
執筆者プロフィール

中西 正男(なかにし まさお)

1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。