私たちにとって身近な存在の電車運転士。私たちの知らない姿や「あるある話」などを、「近畿日本鉄道株式会社」の岡本諭さんに伺いました。普段は見えない仕事の一面を知ることで、電車運転士の新たな魅力が発見できるかもしれません。

■日常生活の中でもついしてしまう確認動作

―― 電車運転士ならではの「あるある」なことがあれば教えてください。

 
運転士が指を差して「〇〇よし!」という、指差確認喚呼は、皆さんが電車を利用される際にもよく見かけると思います。この基本動作を自宅でもしてしまうことがありますね。
例えば、部屋の電気を消したり、エアコンを消したり、家の鍵を閉めたりしたときに、つい指を差して「よし!」と声を出してしまいます。
職場にいる周りの運転士にも尋ねてみると、やはり戸締りをする際には、「よし!」とつい口に出して確認してしまうそうです。

―― このお仕事ならではの休日の過ごし方を教えてください。

休日に、私自身が乗客として電車に乗ると、どうしても乗り心地が気になってしまいます。この仕事に就くまでは意識することもなく、違いも分かりませんでしたが、今は「この運転士は上手だな。」とか、「少しショックのある止まり方だな。」などと感じるようになりました。

■「出発進行!」は、発車合図の言葉ではない?

―― 業界や職務内での、一般人が知らない業界用語はありますか?

皆さんも「出発進行!」と掛け声をかけて自動車などの乗り物を発車させることがあると思います。日頃から見慣れた電車運転士の喚呼の言葉が影響しているのだと思うのですが、これは必ずしも発車の合図として言う言葉ではありません。
鉄道の信号機にはたくさんの種類があり、そのうちの「出発信号機」の青色を確認した時に「出発(信号機が)進行(青色を示している)」と喚呼しているんです。


―― 業務をされてから、一番驚かれたことは何ですか? イメージとのギャップはどんな部分にありましたか?

運転士の「出発進行!」の喚呼は、ここぞという場面に使うものだと思っていたのですが、前に述べた理由からも、想像以上にたくさん喚呼する機会があり、とても驚きました。駅と駅の間で、休みなくずっと喚呼している区間もあります。

■自分が運転する電車に両親を乗せて親孝行できたことが、一番の思い出

―― 業界内ではどんなキャリアパスがありますか? どんな人が出世していますか?

乗務員から助役という監督職や、運転司令員・駅長といったキャリアがあります。あくまでも私の印象ですが、出世している方は、どんな人に対しても態度を変えずに接することができるような気がします。


―― この仕事をしていることについて、周囲の人々からはどのように言われますか?

誰もが知っている職種であるということもあり、親戚からは「すごい、立派なお仕事をしているね」と言ってもらえます。また、これは他の運転士さんもよくあることだと思うのですが、「車内アナウンスやってみて。」と言われることがあり、少し照れますね。



―― 最後に、お仕事の中で、一番の思い出や達成感を感じたエピソードについて教えてください。

一番の思い出は、運転士になって間もない頃、私が運転する電車に両親を乗せたことです。その日に担当する電車の時刻をあらかじめ伝えておいて、乗りに来てもらいました。当日は緊張もしましたが、いつも以上に気合いが入りました。
乗車してもらったその日、自宅に帰ると、母から「丁寧な運転で快適だったよ」と感想を伝えてくれ、とてもうれしかったことを覚えています。私の活躍している姿を両親に見せることができ、少しは親孝行になったかなと思っています。
この時の気持ちを忘れず、普段も丁寧な運転を心がけ、多くの方に安心して乗車していただけるように日々努めています。


休日でも乗車した電車の乗り心地を気にしてしまうという岡本さん。電車運転士に憧れを持つ皆さんも、今度電車に乗った際に快適な運転とはどういうものかを考えてみてはいかがでしょうか。運転士さんの気持ちを考えながら電車に乗ることも、その職業に近づく一歩かもしれません。

 
【profile】近畿日本鉄道株式会社/高安列車区 岡本諭
 https://www.kintetsu.co.jp/