日本で最初にDOHCエンジンを実用化|ホンダ|日本ツインカム発展史の中で 1

DOHCが使われた理由

 エンジンには多くの性能が求められる。もっとも分かりやすいのはパフォーマンスだ。高性能エンジンの代名詞といわれたのがDOHCである。クルマ好きにとっては憧れの的だった。言うまでもなく、ダブルオーバーヘッドカムシャフトの頭文字を並べたのがDOHC。吸気効率と排気効率を高め、高性能を得るために生み出された。

 カムシャフトをシリンダーヘッドに置き、クランクシャフトからベルトやチェーンで駆動してプッシュロッドをなくしたものをOHC、またはSOHCと呼び、これを発展させたのがDOHC方式だ。2本のカムシャフトを用いて吸気バルブと排気バルブを開閉するエンジンである。カムシャフトが2本あるから「ツインカム」とも呼ばれている。バルブの近くにカムシャフトを置くことができるからバルブ配置やバルブ数の設計自由度が高く、充填効率も大幅によくなる。

 高回転まで無理なく回すことができ、高出力を得やすい。そのため高性能車の多くはDOHC方式を採用する。日本で最初にDOHCエンジンを実用化したのはホンダだ。2輪の世界グランプリに参戦していたホンダは、限られた排気量のなかでハイパワーを絞り出すためにDOHC方式を採用した。
神々しいDOHC

ホンダ、トヨタ車のDOHC化(ホンダ編)
HONDA DOHC

 62年1月、ホンダは4輪業界への進出を表明。その半年後の6月、完成したばかりの鈴鹿サーキットで第11回全国ホンダ会を開催した。このときホンダ関係者にオープンスポーツカーのS360と軽トラックのT360をお披露目したのである。この2台のプロトタイプに搭載されていたのが、直列4気筒のDOHCエンジンだ。10月の第9回全日本自動車ショーにはホンダS500を加えた3車を参考出品し、センセーションをまき起こした。

 最初に発売されたのは、軽トラックのT360だ。63年8月に送り出したが、これは世界最小クラスの4気筒DOHCである。10月にはS500を市販に移した。531ccのAS280E型は、乗用車カテゴリー最初のDOHCエンジンだ。総アルミ製ブロックにウエットライナー、ローラーベアリング支持のクランクシャフト、直動式タペットなどを採用した。そのメカニズムの多くはホンダのF1エンジンに受け継がれている。64年1月、発展型のAS285E型DOHCをS600に搭載。66年1月にはAS800E型をS800に積んでいる。


ホンダT360(63〜67年)。ホンダ初の4輪市販車。世界最小のDOHCエンジンを搭載。

 ホンダはライトバンのLM700などにもDOHCエンジンを搭載。しかし、商用車に積んだことで、DOHCの凄さは当時の人々に理解されていなかった。

L700
ホンダLM700(65〜66年)。DOHCは商用車にも搭載。しかし、これがDOHCの価値。

ノスタルジックヒーロー  vol.146 2011年 08月号(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)