撮影 穂坂瑠美

華やかで夢のある職業・舞台俳優の仕事。そのやりがいや魅力、裏側にある努力について語っていただいた本編に引き続き、脚本家・演出家としても演劇に深く関わる村松みさきさんに、舞台を通じて実現したいこと、演劇に向き合い続けるその揺るぎない想いについて、これからの展望とともにお伺いしました。

■常に高いレベルの人と仕事をすることで、自分の器も大きくなる

―― 村松さん自身が考える自分の武器、あるいは俳優としての自分にしかない魅力とはどういったことでしょうか?

人の心に寄り添った表現をしようとする、その姿勢は私の武器、強みだと思います。芝居は上手い下手ではなく、「どれだけ多くの人の傷に寄り添えるか」ということに集約されていると思うんです。自分自身の弱さや不安も役に重ね、表現に昇華したいですね。
これは、劇団で演出助手をしていた時代に、実力がありながら演劇を手放さざるをえなかったたくさんの人々の想いや傷に触れてきたことが大きく影響しています。こうして今、私が演劇をやり続けていることに使命感や責任があると感じています。

―― 舞台に立つ時、村松さんが大切にされていること、必ず心がけていることがあれば教えてください。

これは俳優としても、脚本家・演出家としても、常に心掛けていることなのですが、「自分より高いレベルの人たちと行動を共にする」という事です。舞台をプロデュースしていると言うと、一番上のポジションに君臨しているように思われることも少なくないのですが、私が舞台を創る際には、常に「自分より演技がうまい人、自分より容姿が優れている人、自分より芸歴が長い人、自分よりしっかりしている人」を招くようにしています。自分よりもレベルの高い人達と一緒にすることで、自分の器もグッと大きくなり、「お山の大将」にならずに自身の成長につなげていけると思います。 

■それぞれの傷のために書かれた舞台

―― 脚本家・演出家としても活躍される村松さんにはどういった舞台を作り上げたいという思いがあるのでしょうか?

私が作る舞台ファンの方々の中には、便箋6枚にも渡りご自身の半生や悩みを書いて下さる方が多くいて、びっくりしながらも毎回うれしく、手紙も大切に保管しています。また、「私のために書かれた舞台だった」「心が癒された」という声も多くいただきます。これは先ほどもお話ししたように、私自身が多くの人の傷に寄り添いたいと考えており、脚本のセリフや演出の中にもそれが表現されているからだと思います。多くの人が我慢してきたようなこと、心根にある寂しさや孤独を引きだして行きたい。人の心に突き刺さるものを作っていきたいと追求し続けています。


―― 演出や脚本執筆のお仕事と俳優の仕事はどのように両立されているのでしょうか?
一つ一つの仕事に集中するため、脚本の仕事・演出家の仕事など、なるべく時期を区切ってそれぞれの仕事に集中するようにしています。
各現場で求められる要素や技術が違うから大変なこともあるのですが、ようやく、それが「楽しい」と思えるようになりました。ときには、(脚本家としての私に)「子供の作文の面倒を見て下さい」という依頼もありますよ。そういう仕事が、なんだかとてもうれしかったりもします。

■「演劇のバトン」を持って、夢に突き進んでいく

―― これからやりたいこと、チャレンジしたいことはどんなことでしょうか?

脚本家としては雑誌で連載を持てるようになったり、より多くの新作を書きたいと思っています。舞台俳優、そして作品を作る身としては、「村松みさきプロデュース館」のような、稽古場と劇場が併設された劇場を作って、まるで職場にでも通うように毎日芝居ができるようになりたいです。夢のまた夢ですね(笑)。
 

―― お仕事の中で、一番の思い出や達成感を感じたエピソードについて教えてください。

達成感とはまた少し違いますが、よくよく思い起こせば、私に「演劇のバトン」を渡してくれた先輩たちがいて、私は今それを持って必死に走っているのだと思います。そのバトンは今のところ、できれば誰にも渡したくないもの。でも、演劇というのは、「手元に置いておくものではなく、常に再会するもの」、だと私は思っています。
もし、この先夢を叶えて、無事に芝居の世界に進めたとしても、経済的な問題や育児、人間関係などさまざまな理由で芝居から離れざるをえない状況もきっとやってくると思います。でも、そんなときは「今は誰かがバトンを持ってくれているから、大丈夫。つらいこと、悩みを乗り越えたら、また自分も演劇と再会しよう」と思うようにしてほしいです。私もそう思いながら、全力で自分の表現と向き合っています。


演劇業界に13年携わり、さまざまな人の苦労や傷を目の当たりにしてきた村松さん。それでも「演劇のバトン」を持って走り続けている今、多くの人の心に寄り添う作品を作り続けていくという使命感を感じていると言います。表現することに興味のある方は、そのバトンを引き継ぐべく、村松さんのアドバイスを参考にしてみるといいかもしれません。 

 
【profile】脚本家・演出家・俳優 村松みさき
http://misaki-produce.main.jp/