TBSラジオが有料の大型リアルイベント「ラジオエキスポ」を開催すると聞いて、いくつかの疑問が浮かんだ。例えば、今回のイベントと「ラジフェス」の関係性や、チケットの金額はどうやって決めたのかといったことだ。TBSラジオで担当者に話を聞いてきた。

取材に応じてくれたのは、ラジオエキスポのプロジェクトリーダーを務めるTBSラジオ 編成局 事業部の内田寛之さんと、同部次長の野上知弘さんだ。ちなみに、ラジオエキスポの内容と楽しみ方については前回の記事で紹介済みなので、気になる方はチェックしてみていただきたい。

  • TBSラジオの内田さん(左)と野上さん

    TBSラジオの内田さん(左)と野上さん

「ラジフェス」は終了してしまったのか

マイナビニュース編集部(以下、編):TBSラジオでは「ラジフェス」というイベントを開催していましたよね。「JUNK」(月曜~土曜、深夜1時~3時)のパーソナリティを務めるバナナマンやおぎやはぎも登場する人気イベントで、会場の赤坂サカス(東京都港区、TBS放送センターの正面)は人であふれかえっていました。今回のラジオエキスポは、ラジフェスをこれまで通り開催するのが難しくなったから、場所を大きくして、有料のイベントにしたということなのでしょうか?

2018年の「ラジフェス」の様子

2018年の「ラジフェス」の様子

内田さん(以下、内):そうですね、集客が増えすぎたというのはあります。2018年は「国際新赤坂ビル」(TBSの道路を挟んで向かいにあるビル)や「一ツ木通り」などに会場を拡大して、2日間で16万1,000人(2017年は9万4,000人)の皆さんにお越しいただいたのですが、お客様が増えすぎた結果、安全面に対する不安や、会場の居住性に問題があるのではないかといった声が出始めました。それと、場所の問題だけではなく、イベントを通してやりたいことが増えてきたというのもあります。

なので、これを機に会場を変えて、さらに広いところで、有料イベントとして開催しようと決めました。企業としては、やっぱりマネタイズも考えなければならないので、TBSラジオを表現することができるラジオエキスポというイベントで、挑戦しようということです。

野上さん(以下、野):ただ、パシフィコ横浜というとてつもなく広くて舞台も何もないフラットな会場で一から設営するということを考えると、正直にいって、そんなに儲かるイベントではないんです(笑)。どちらかというと「アイデンティティイベント」といいますか。

:私もラジフェスには欠かさず行っていましたが、すごい人出でステージに近づけず、遠くから大型ビジョンを見ているだけだった回もありました。なので、赤坂サカスで同じようなイベントを続けるのは厳しいということも、なんとなく理解できるんです。そして当然、パシフィコ横浜を借りてイベントを開催するとなれば、有料化する必要があるということですね。

ただ、ラジフェスは楽しいイベントでしたね……。

:今回のイベントは「ラジオエキスポ」です。「ラジフェス」とは名前が違いますよね。それと、私たちとしては、「ラジフェスは毎年やる」とは明言していませんでした。結果的に、2018年までは毎年、11月に開催するのが恒例のようになっていましたけど。

:これは、うれしいお話ですね。まず、ラジオエキスポはラジフェスが姿を変えたものではなく、全くの新規イベントであると。そして、TBSラジオとしては、これでラジフェスが終わったと明言したわけでもないと。確かに、2019年はラジフェスが開催されなかったですが、別に毎年やると決まっていたわけでもないので、今後の開催については可能性がある。そういうことでしょうか?

:ラジフェスには運営側として関わっていたんですが、少なくとも私は、毎年、客として行きたいと思うくらい、好きなイベントでした。

ラジオエキスポのチケットは高い?

:次のラジフェスにも期待しつつ、ラジオエキスポについて、もう少し聞かせてください。ラジフェスが無料であっただけに、その後継イベントのような格好になったラジオエキスポが有料であることには、賛否があるみたいですね。あと、チケット代()が高いのではないかという声もあります。

※編集部注:チケット代は1日目4,500円、2日目6,000円、2日通し券9,000円、こどもエキスポ1,500円

:もちろん、そういった声が出ていることは把握しています。ただ、有料にした時点で、チケットをいくらに設定しても高いという声は出るはずなんですよ。やっぱり、今まで(ラジフェスは)無料で見ることができていたんで、500円でも1,000円でも高いといいますか、「そもそも、お金を取るのか」という思いはおありかと思います。

ただ、タイムテーブルを見ていただければと思うのですが、出演者の中には、1組で7,000円、8,000円というイベントを開催している方もいます。そういう意味では適正といいますか、むしろ安めかなと思っています。

  • 「ラジオエキスポ」のタイムテーブル

    2月10日「エンタメEXPO」のタイムテーブル

  • 「ラジオエキスポ」のタイムテーブル

    2月11日「エンタメEXPO」のタイムテーブル

  • 「ラジオエキスポ」のタイムテーブル

    2月10日「ミュージックEXPO」のタイムテーブル

  • 「ラジオエキスポ」のタイムテーブル

    2月11日「ミュージックEXPO」のタイムテーブル

:フェスのチケットっておおむね、1万円を超えてくるじゃないですか。音楽フェスと同列に考えることは難しいとしても、同じように1日楽しめるフェスだと考えたら、ラジオエキスポは半額くらいなので。

:それと、有料イベントにした時点で、2018年のラジフェスに来ていただいた16万人を、そのまま呼べるとは思っていません。どのくらいになるのかは分かりませんが、例えばチケットが500円であったとしても、人数は減ります。

有料イベントとして、ゼロから考えたラジオエキスポとして、今回はこのくらいが妥当なのかなと考えて、金額を最終決定しました。

:そう考えると、2日で9,000円というのは、そこまで高くないのではないかと私も思います。

ただ、有料になったからか、ラジフェスとは日時が変わってしまったからか、あるいは場所が変わってしまったからなのか、何らかの理由で来られなくなってしまう人は、確実にいらっしゃるじゃないですか。この人たちに対して、何かメッセージはありますか?

:赤坂サカスでこういった大型のイベントを開催するのは、物理的に不可能になってしまったので、その点についてはごめんなさいとしかいいようがないんですけど、やっぱり、何か事故が起こってからでは遅いというところがあります。

ラジフェスは赤坂サカスだから続けられていたんですけど、外に出るとなかなか今までのようにはいかない。もちろん、TBSに来る、赤坂に来るということ自体を楽しみにされていた方もたくさんいらっしゃると思うので、その点では残念なのですが、今回はこれまでにない新しいイベントを作りますので、それを最大限に楽しんでいただければありがたいです。

:音楽など、有料だからこそできることも今回はやりますので。

:それと、「ラジフェスが終了したわけではない」ことと、TBSラジオの事業部には「ラジフェスを客として見たいくらい好きだった」人がいるという事実は、リスナーさんに伝わればいいですよね。

あと、下世話な話なんですが、ラジオエキスポのチケットはどのくらい売れているんですか?

:目標は高く持っているので、達成するにはまだまだ努力が必要ですが、少なくとも、リスナーの皆さんには訴求できていると思います。あとは、出演者のファンの皆さんが、どれだけ来てくれるかというところです。テレビでCMを流したり、チラシを配ったり、横浜エリアでポスターを貼ったりサイネージを掲出したりと、いろいろ宣伝をやっていきます。

:準備もそうでしょうけど、当日の運営も大変でしょうね。失礼ですが、いつも思うのは、これだけの放送局でありながら、TBSラジオさんって人が少ないじゃないですか。

:その点は、否めないですね(笑)。

:本当、人手は少ないんですけど、今回は有料興行にしたので、イベンターさんにも入ってもらいます。でも、各ステージは番組担当がやらなければ回らないですしね……。

:当然、ディレクターさんとか作家さんが、ステージにつくわけですよね。

:それと、TBSラジオで特番もあるんで、そちら側にも人がいなくてはなりません。

:大変そうですが、頑張ってください(笑)。

ラジオエキスポはレギュラー化するのか

:今回、イベントのタイトルが「ラジオエキスポ TBS万博2020」ですが、2020ということは、2021年以降の開催も計画中ですか?

:まだ決まってはいませんが、可能性は否定しません。今回のテーマとして「新しいラジオ体験」というのを打ち出していますが、「ラジオとリアルの接点」といいますか、そういう空間は残していきたい。ラジオは放送だけでも成立するメディアですが、こういう場はあった方がいいのではないかと思います。

:その通りだと思います。先日、「たまむすび」(月曜~金曜、13時から放送中)で「番組特製すごろく」の配布がありましたよね? 私も欲しかったので赤坂サカスに来たのですが、人があふれかえっていたので、あきらめて帰りました。

:2,000人くらいの来場を想定していたのですが、結果、3,500人がいらっしゃいました。

:TBS中で「サカスで何が起きているの?」っていう空気になりましたからね(笑)。

:その時にも思ったんですけど、ラジオのリスナーさんの中には、番組や放送局に対する熱量の高い人が多いといいますが、何かあったら駆けつけたいという欲求がすごいですよね? そういった思いにこたえるためにも、リアルイベントは必要だと思います。ラジオは基本、1人で聞くメディアだと思うんですけど、そういったイベントで時々、ほかのリスナーさんの存在を確認するのは、なんとなくうれしいことですし。

:それで、笑いどころが一緒だったりすると、うれしいですよね。

:今回のラジオエキスポは新しい試みということですが、お金の面でも、アイデンティティの面でも、TBSラジオにとって重要なコンテンツに育っていけばいいですね。

:そうですね。例えば「こどもエキスポ」なんかは、うまくいけば、これだけ切り離してイベントにしてもいいわけです。「ミュージックEXPO」だって、音楽フェスとして独立させてもいいし。

:今回、横浜ローカルの飲食店にご協力をお願いして「横浜フードEXPO」(フードエリア)を展開しますが、今後、食のフェスを開催するということも考えられると思います。

:ラジオエキスポで生まれたものは、今後の展開にも期待できます。

:展開させたいですね。せっかく、これだけのことを「よっこらしょ」と立ち上げたので、一過性では終わらせたくない。それに、このイベントの準備を通じてご縁をいただき、開催に向けてご尽力いただいた方々がたくさんいるので。

:種をたくさんまいた感じ。

:本当に、ラジオエキスポには考えうることを全て入れているんで。「エンタメのすべて」とうたっているのは、そういう意味なんですよ。今のTBSラジオから発信できるものは、全部入っているという感じです。

:ラジオエキスポを目撃しておけば、これからのTBSラジオを見ていく上でも、楽しみが増えそうですね。

新たなリスナーに出会えるか

:TBSラジオでは、三村社長もおっしゃっていますが、「ノンリスナーのリスナー化」とか、「まだ出会っていない人に出会う」といったようなことを目指していると思います。その文脈で、ラジオエキスポは語れますか。このイベントを開催することで、TBSラジオを聞く人は増やせるのでしょうか。

:ラジフェスをやっている時も、非リスナーの方にどれだけ来ていただけているかというのは課題でした。でもやっぱり、ラジフェスといっている以上、放送の延長のイベントなので、リスナーさんがいらっしゃるのは当たり前の話です。ただ、今回のラジオエキスポもそうですが、出演者は一般的にも有名な方ばかりなので、誰が見ても楽しいイベントにはなっていると思います。

それと、その文脈でいえば、子供たちに来てもらえるかという意味で、こどもエキスポはチャレンジです。こどもエキスポで楽しんでもらった後、実は、それがラジオのコンテンツだったと気づいてもらう感じにしたい。TBSラジオが持っているコンテンツで、子供たちを満足させたいんです。子供たちは完全に、非リスナーですからね。

:こどもエキスポが楽しい思い出になれば、その子たちが親に「ラジオが聞いてみたい」というかもしれませんし、大きくなってリスナーになるかもしれないですね。

:大人になって急に聞き始める人もいないわけじゃないですけど、ラジオ体験は若ければ若いほど、習慣となって残ります。そうすると、一度はラジオから離れた方でも、もう一度、聞き始めるということもある。子供たちに、習慣的な面白い体験として、いかにラジオを届けるかというのは、放送局として、今回のチャレンジかなと思います。 *

:ラジオという選択肢があると知って大人になるのと、知らないで大人になるのとでは、全く違いますね。

:今はスマホで聞ける「ラジコ」(radiko)があるので、実はみんな、ラジオを持ってはいるんですけどね。

:確かに。ただ、スマホで見たり聞いたりするものは山のようにあるので、ラジオという選択肢を持っていないスマホユーザーを振り向かせるのは、とても難しそうです。

:そういう意味でも、ラジオ局として、リアルイベントを持っていることは大事なんです。