キオクシア(旧 東芝メモリ)は1月24日、プライベートカンファレンス「KIOXIA SSD Forum 2020」を開催。同社が研究開発を進める最新のNAND型フラッシュメモリならびに、それを活用したSSD技術などの紹介を行った。

今回のカンファレンスのテーマは「Driving Transforomation」で、半導体メモリが進む社会のデジタル化(デジタルトランスフォーメーション)に対し、どういった可能性をもたらすのか、といった意味が込められている。

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    キオクシアの最新世代となる96層3次元フラッシュメモリウェハ

過去の記憶から未来予測へ変化するフラッシュメモリニーズ

同社 常務執行役員、SSD事業部長の横塚賢志氏は、「デジタルデータの活用によるビジネスモデル、社会、日常生活の変革を促すデジタルトランスフォーメーションが進んでいるが、そうしたデータを保存するためにはフラッシュメモリ技術、半導体ストレージ技術、それらをコントロールするSSD技術が大きく貢献している」と自社のビジネスである半導体メモリこそが、デジタルトランスフォーメーションの中核技術であるとしたほか、「これまでのストレージは過去を振り返り、今の生活を充実させるために使われてきた。今後は、AI(人工知能)や機械学習を活用して未来を予測し、未来に向けた選択をより良いものにしていくためにフラッシュメモリを活用するデジタルシステムへと進化していくことを描いている。そうした未来に向かうのであれば、データが持つ意義そのものが変化していく。それをキオクシアは自らの技術で加速させていく」と、今後のフラッシュメモリの方向性を示唆。

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    フラッシュメモリの進化により、さまざまなデバイスが生み出されることとなった (本レポートのスライドはすべてKIOXIA SSD Forum 2020にてキオクシアが使用したものを撮影したもの)

その実現のためにはより多くのデータを記憶することを可能とする「モアデータ(More Data)」と、未来予測を可能にする高度かつ高速なデータ分析を可能とする「モアパフォーマンス(More Performance)」、そしてそれらをつなぐネットワーク、これらの要件を満たすものが求められるようになってくるとした。

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  • デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代において必要となってくるデータを解析し、より良い未来を実現するためには、より多くのデータを記憶でき、高速に処理できるメモリ技術が必要となってくる

高密度化のカギを握る3D化技術

では具体的に、どうやってそうした要件に対応を図っていくのか。キオクシア SSD事業部 技師長の大島成夫氏は「最適な技術の選択が必要」と説明する。SSDが用いられる市場としては、PCやタブレットなどのエンドポイント、サーバ/ストレージ向けのオンプレミス、そしてクラウドの3種類に大きく分けられるが、「より高速なフラッシュインタフェース」、「より高い読出し書き込み性能」、「BiCS FLASHソリューションによる読出し性能の低レイテンシ化」、「高密度への挑戦」の4つの技術がカギを握るとしたほか、「もちろん低コスト化への挑戦もある」とした。

わかりやすいのは高密度化であろう。これまでNANDは、ロジックやDRAMなどと同じく、プロセスの微細化を進めることで密度の向上を図ってきた。しかし、セルサイズが小さくなれば、そこに入る電荷の数も減少。フラッシュメモリの仕組みそのものが成り立たなくなるというジレンマがあった。そこで登場したのがプロセスの微細化ではなく、上方向にメモリセルを積んでいく、いわゆる3D NAND化である。

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  • BiCS FLASHの基本構造とメモリセル構造

同社では15nmプロセス世代まで2Dでやってきたが、それ以降は3D化へと舵を切って、合わせてメモリセル方式も従来のフローティングゲート方式からチャージトラップ方式へと変更することで、それを実現させた。

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    96層BiCS FLASHの模型

現在は96層品の生産、さらに100層以上の実現を目指しているが、そうした高積層を実現するためのメモリホールのアスペクト比は1:50。これについて大島氏は、「高さ634m、底辺の直系68mの東京スカイツリーを縦に6個建設できる技術が必要」と表現する。

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    3次元構造での課題は高いアスペクト比のメモリホールをいかに埋めていくかということになる

積層技術の進化に合わせてダイサイズも現行のBiCS FLASH Gen4では前世代のBiCS FLASH Gen3と比べた場合、512Gビットで132mm2から86.1mm2へと35%のシュリンクを実現している。

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    BiCS FLASH Gen3とGen4のダイサイズや各種性能の比較