年始に今年の目標を立てた人、数週間が経過するが順調に進んでいるだろうか? 新年の目標より、挫折につながる習慣を絶とうと提案するのがForbesの記事「How Those Inner Fears Try To Sabotage Your New Year’s Resolutions」だ。キーワードは"Comfort Zone(コンフォートゾーン)"。

ForbesのContributorであるBrandeis University's International Business School(ブランダイス大学国際ビジネススクール)の教授Andy Molinsky(アンディ・モリンスキー)さんは、ハーバード大学で組織行動学の博士号、心理学の修士号を修めるプロフェッショナルで、ビジネス分野と密接に関わる心理的要素における執筆も多い。日本でもダイヤモンド社から「ひっこみ思案のあなたが生まれ変わる科学的方法 」を出版している。

同書のなかでも言及のある"Comfort zone"はストレスがなく落ち着いた心理状態を意味する。理想的な快適そのものの状態だが、鍛えなければ筋肉はつかないのと同様に仕事にストレスがあるのは当たり前。むしろ成長するには、Comfort zoneから出ることが必要であろうし、Comfort zoneが広げられれば理想的な状態も広がる。しかし、狭まり過ぎるとストレスに溢れた危険なゾーンに囲まれる。このゾーンの制御が要であるようだ。

「今年こそはTOEIC700点を目指す」「ダイエットに成功する」 --年の始まりは気分も新たになり、何かを始めたり、目標を立てるのにふさわしい時期。自己啓発、美容、会社やキャリア上の成功・・・目標は人それぞれだが、1カ月、2カ月、半年とすぎると緊張感がなくなり、やる気が薄れてくる。そして、最後には諦めてしまうという経験がある人もいらっしゃるだろう。

そうであれば、今年は目標を立てるのではなく、何かの実現の妨げとなるものをやめるように心がけてはどうか?というのが記事の提案だ。そして、1)代用で避ける、2)先のばし、3)自己正当化、の3つを妨げになるものの例として挙げている。

1)代用で避ける(Avoiding by substituting)というのはどういうことか。本来すべきことを回避すること--つまり、本当にすべきことは発言することなのに、メールで連絡するなどして済ませてしまうということだ。

自分のアイディアはもちろん、フィードバックを面と向かって言わない、顧客を訪問する代わりにメールを送る、ネットワーキングイベントなどに「参加」で申し込み、結局は行かない・・・などだ。心覚えがあるという方は多いのではないか。

記事によると、「慣れないことをするという恐怖心と向き合わずにメールで済ませてしまっていると、なかなか目標にたどり着かない」という。確かに、目標を達成したり、近づくためにいくべきイベント、起こすべきアクションがあるのに、メールでやってしまっては効力は下がるだろう。目標に近づくために必要と直感的に思ったのなら、メールでできないかなという"代わり"を考える余地を与えずに行動に移したい。

2)先のばしにする(Procrastinating) --これも思い当たる人が多いかもしれない。単に、どのみちやらなければならないことを後回しにする”ぐずぐず”だけでなく、新しいアイディアも、具体的なプランニングや実行を先のばしにしていると、他の人が始めてしまうかもしれない。

今年は、先のばしなしの年にしてはいかがだろう?面倒なプレゼン作成、プログラミングや語学などの学習、ランニングなど、やると決めたことは時間がきたらすぐに始める癖をつけたい。頭の中で後のばしにする言い訳を考えてしまっていると自覚した瞬間に始める、というのはいかがだろう? リマインダー、ToDoなどデジタルのツールの利用もよさそうだ。

3)自己正当化とは(Justifying)、1)と2)に通じるもので、やらないための言い訳を正当化することだ。

記事では、セールスの電話をかけるとなった時に、押し付けがましいと思われるのが嫌で、ソーシャルメディアやデジタル広告など、代用を探すという例を挙げている。この場合、本当は会話が弾まなかったり、あからさまに嫌がられたらどうしようと思っているのに、"デジタル広告はモダンなやり方だし、ちょうどいい"と言い聞かせてしまっているのだ。やらなければならないこと、本当はやったほうがいいことは、あなたが一番わかっているはず。頭の中でいろいろな言い訳が浮かび始めたら、長期的な目線に戻して自分のキャリアや成長を考えようとAndy Molinskyさんは述べている。

共通しているのは、自分の居心地の良いゾーンComfort zoneから出てしまうこと。止まっていては成長しない。出ることに慣れる、それが去年とは違う今年につながるための一歩なのかもしれない。