「パラアーチェリー」ってどんなスポーツ?

簡単に言うと…

① 基本ルールはほぼオリンピックと同じ

② クラスによって使用する弓が変わる

③ 障がいによっては、足や口、補助の道具を使って矢を射ることも可

④ 選手の緊張感を観客も共有

パラリンピックは、1948年に第二次世界大戦の負傷兵の治療と社会復帰を目的に行われた、アーチェリー大会が起源だと言われている。つまり、アーチェリーは、パラリンピックの中で最も古い競技というわけだ。パラアーチェリーは肢体(手や足、体幹)が不自由な選手を対象としているが、基本的なルールは、オリンピックとほぼ同じで、数十メートル先にある的を狙って弓で矢を放ち、当たった場所によって得点を競う。
手元の矢がわずか1ミリずれただけで、的に当たったときには数センチのずれになるという、非常に繊細で集中力を必要とする競技だ。選手が矢を放つときの息をのむような緊張感を観客も共有できるとあって、近年注目を集め始めている。

1972年のハイデルベルグパラリンピックでは、日本選手団25名中、11名がアーチェリー競技に参加しているほど、日本の障がい者スポーツの中でもアーチェリーは早くから盛んにおこなわれてきた。そして、1976年に日本国内に正式に連盟が設立。前回のパラリンピックでは上山友裕選手が7位に入賞し期待が高まっている。

ココに注目!観戦が面白くなるポイントは?

アメリカのマット・スタッツマン選手(写真はロンドン2012パラリンピック)ⓒGetty Images Sport① どうやって弓(ボウ)を射るの?

アーチェリーはボウで矢を射る競技だが、パラアーチェリーの選手の中には両手がない選手もいる。果たしてそれで、どうやって矢を射るのか? パラアーチェリーは、オリンピックとほぼ同じルールで行われる一方で、障がいに応じて、補助道具の使用や、口で弦を引くこと、足を使うことなどが認められている。

たとえば、両腕のないマット・スタッツマン選手(アメリカ)は、椅子に座り、左足は地面について身体を支え、右足でボウを持ち、肩口に装着した弦を引っ張るための器具を使い矢を射る。ちょっと想像してみるとわかるが、片足でボウを支え、狙いをさだめるには強靭な肉体が必要となる。

また、イランのザーラ・ネマティ選手は、2016年のリオ大会でオリンピックとパラリンピックの両方に出場し、東京ではパラリンピック3大会連続金メダルを狙っているというから驚きだ。

イランのザーラ・ネマティ選手(写真はロンドン2012パラリンピック)ⓒGetty Images Sport② 競技部門は大きく分けて3つ

パラアーチェリーの種目は全部で3つ。1つは、体幹が効かず四肢まひなどがある車いす利用者を対象とした「W1オープン」というクラスだが、残りの2つは、使用する弓によって分けられており、オリンピックでも使用される一般的なリカーブというボウを使う「リカーブオープン」、両端に滑車がついていて、リカーブの約半分の力で引くことができる、パラリンピック独自のコンパウンドというボウを使う「コンパウンドオープン」となっている。

1:「W1オープン」(リカーブ、コンパウンドどちらかの弓を使用)
2:「リカーブオープン」(W2、STが参加)
2:「コンパウンドオープン」(W2、STが参加)

「リカーブオープン」と「コンパウンドオープン」は、W2(下半身の障がいにより車いすを使用して競技)または、ST(立つか、いすに座って競技)クラスの選手が参加する競技で、それぞれの競技の弓を使って競い合う。
一方、「W1」はリカーブ、コンパウンドどちらの弓を使うかは限定されていない。
いずれの場合も、矢が当たった的の位置によって点数が決まり、その合計点で勝敗が決まる。

両手が使える場合も、車いすに座ったまま上半身の力だけでバランスをとり矢を射ることは想像以上に難しい。その困難を解消するために、各部門で各選手が編み出した工夫を見るのも、この競技を観戦する上での醍醐味となっている。

③ 会場が一体となるほど緊張感がクセになる?

パラリンピックでは、個人戦のほか、W1、リカーブ、コンパウンドのそれぞれで男女混合のチーム戦がある。個人戦の決勝トーナメントでは、1対1の対戦式となり緊張もひときわ高まるが、競技は屋外で行われるため、雨や風、またちょっとした雑念が結果に重大な影響を与える。そのため、選手にはどんな場合にも平常心を保てるメンタルの強さが求められる。

選手がボウを構えると、会場中の視線が矢の先端に集まり、独特の緊張感に包まれ、さらにその緊張が高まった瞬間、時速200キロ近い速さで矢が放たれる。
そして矢が的に命中した瞬間、解放感と共に、それまで空気の張り詰めていた会場から感嘆のため息や拍手が起きるのだ。そんな、クセになりそうな、日常では味わえない緊張感と解放感が味わえるのも、パラアーチェリーの魅力のひとつだ。

パラアーチェリーを観戦しに行こう!

(写真はロンドン2012パラリンピック)ⓒGetty Images Sport

各選手が自分の持つ能力を最大限に生かすために、自由にフォームを改良して得点を競い合うパラアーチェリー。試合の結果はもちろんのこと、どんな選手が、どんなフォームで競技をするのかも見どころなので、ぜひ試合を観に行ってみよう!

最新の国内大会スケジュールは、こちらでチェック! https://www.parasapo.tokyo/schedule

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
photo by Getty Images Sport

参考資料
かんたん! アーチェリーガイド
https://www.jsad.or.jp/about/referenceroom_data/competition-guide_16.pdf