レディオヘッドが公開したデジタルアーカイブサイト6つの見どころ

"音楽とテクノロジーの融合"という試みの最先端であり続けてきたレディオヘッドが、デジタルアーカイブサイトRadiohead Public Libraryを公開した。ボナルー・フェスティバルでのライブ映像、『キッドA』の断片映像、スタンリー・ドンウッドによるアートワークまで、バンドの歴史を包括するデータベースの見どころを紹介する。

音楽とテクノロジーの融合という試みの最前線に立ち続けてきたレディオヘッドが、膨大なコンテンツを時系列順にまとめた包括的アーカイブサイト、Radiohead Pubilc Libraryを公開した。

今週月曜日にローンチされた同サイトでは、バンドの全アルバムはもちろん、B面曲やアルバム未収録曲、舞台裏の写真の数々、テレビ出演時の映像、プロモーション用パフォーマンス、ウェブキャスト、フルレングスのライブ映像、各期のTシャツ(新たにリイシュー、現在注文可能)、スタンリー・ドンウッドによるアートワークなどが公開されている。

「インターネット上に散乱するレディオヘッドに関する情報の大半は断片的であり、不正確なものも少なくなかった」バンドが発表したステートメントにはそう記されている。「そういったものをまとめようとしたサイトの多くも、長くは続かなかった。その結果、Radioheadというワードを検索すると、正確なアートワークや追加情報が記されていない曲名やアルバム名、アルゴリズムによってシャッフルされた冒頭に広告が流れる低画質の映像等、いい加減なものばかりが表示されるようになってしまった。そういった状況を変えるためのもの、それがRadiohead Public Libraryだ」

強調すべきは「Public」という単語だ。同ライブラリーの利用は無料であり、ストリーミングサービスの有料会員でなくとも、あらゆる音源や映像の閲覧が可能となっている。バンドは過去数ヶ月の間に、ありとあらゆる作品をYouTubeにひっそりとアップしていたが、その背景にあったのはこのプロジェクトだった。

開設日となった1月20日から24日までの5日間、レディオヘッドの各ソーシャルメディアチャンネルを通じ、バンドのメンバー5人(トム・ヨーク、ジョニー・グリーンウッド、コリン・グリーンウッド、エド・オブライエン、フィリップ・セルウェイ)が司書として、それぞれのお気に入りのコンテンツを紹介する。またファンは、会員番号が記されたRadiohead Public Library会員証を作成することができる。

同ライブラリーのアーカイブ集の中から厳選された6つのコンテンツ、そして今後公開が期待されるものを以下で紹介する。

1. ボナルー・フェスティバルでのライブ映像
レディオヘッドは過去に2回、ボナルー・フェスティバルでヘッドライナーを務めている。2006年のパフォーマンスはバンド史上屈指の名演として知られており、ツインドラム編成で臨んだ2012年のパフォーマンスは『キング・オブ・リムス』ツアーにおける到達点となった。大抵のバンドなら、両公演の映像をIMAXで上映した後に、DVDやライブアルバムを発表するに違いない。10年以上前に、2006年のボナルー公演のライブアルバムが発表されるという噂が流れつつも実現しなかったが、Radiohead Public Libraryでは音質と画質ともに申し分ない両公演の映像が公開されている。同ライブラリーでは他にも、1997年のBelfort Festivalから2016年のOsheagaまで、プロによって撮影された様々なフェスティバルでのパフォーマンス映像を視聴することができる。


2. ウェブキャスト『Inside Out Night』
2002年12月、Radioheaed.comで配信された2時間超に及ぶこのウェブキャストのハイライトは、不気味なほどに上機嫌なヨークとメンバーたちがクリスマスソングの定番「ウィンター・ワンダーランド」を歌う場面だ。画質は極めてお粗末だったものの、これまでも同ウェブキャストの一部はYoutubeに上がっていたが、Radiohead Public Libraryでは137分に及ぶ全編が高画質(あくまで2002年時のウェブキャストとしてはだが)で公開されている。「ウィンター・ワンダーランド」の他にも、『Inside Out Night』ではバンドのメンバーたちによる90分間のDJセットや、リチャード・ニクソンやジョージ・W・ブッシュ、サダム・フセイン等のラバーマスクを被ったメンバーたち、そして奇妙な質問の数々にヨークが加工した声で答えるQ&Aなど、普段のレディオヘッドとは大きく異なる一面を目にすることができる。

3. トムとジョニーによるデュオ演奏
レディオヘッドは5人組としてロックの殿堂入りを果たしているが、その主要メンバーであるヨークとグリーンウッドの2人は、デュオとして度々演奏している。1994年の『MTVs Most Wanted』における「ユー」のアコースティック版から、2016年にポール・トーマス・アンダーソンのカリフォルニアにある自宅で撮影された『ア・ムーン・シェイプド・プール』収録曲のメロウなバージョンなど、その多くはアルバムのプロモーション用に行われたものだ。Radiohead Public Libraryでは2人によるデュオ演奏の全映像が公開されているほか、2003年6月に『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』が発売される1週間前にパリのLe Reserviorで行われた、2人による全12曲のアコースティックライブの映像も視聴可能となっている。

4. 『キッドA』の断片映像
『OKコンピューター』の次回作をファンが心待ちにしていた頃、レディオヘッドはウェブサイトで発売を控えていた『キッドA』の断片(Blipsと名付けられていた)の数々を無限にループする15秒間の動画とともに公開し、2000年10月に同作が発売されるまでファンの期待を煽り続けた。Radiohead Public Libraryでは、全Blipsをまとめた13分の動画が公開されている。ローリングストーン誌が2000年代のベストアルバムに選出した『キッドA』からはミュージックビデオが一切作られなかったため、この動画は同作における唯一の正式な映像資料となっている。またShynolaが手がけたBlipsの各映像を組み合わせると、アルバムの最終曲『モーション・ピクチャー・サウンドトラック』のムービーとなる仕組みになっており、同ライブラリーではその映像も公開されている。

5. スタンリー・ドンウッド博物館
『キッドA』発表後に生まれたバンドの大ファンの中には、長期にわたるバンドのコラボレーターであるスタンリー・ドンウッドによる、レディオヘッドのアートワークの全てを把握しきれていない人もいるだろう。『イン・レインボウズ』のデラックスエディション、『ザ・キング・オブ・リムス』の発表に合わせて発行された新聞The Universal Sigh、『キッドA』の初回プレスCDのトレイ裏に隠されていたブックレット等、各アルバムの通常盤では目にすることができなかった彼の作品は少なくない。彼が手がけたバンドのアートワークのほぼ全てを無料で閲覧できるという点において、Radiohead Public Libraryにはスタンリー・ドンウッド博物館という側面もある。


6.『ONNOTOK』の白いカセット
『OKコンピューター』の発売20周年を記念した再発盤、『OKNOTOK』のデラックスエディションに付属した80分のボーナス音源を収録した白いカセットの価値は、トム・ヨークがMDに保存していた当時の秘蔵音源の全てがネット上に流出したことで、その価値が半減してしまっていた。しかし、通常盤よりも100ドル以上高いデラックスエディションを買わなかった、あるいはMDに収録されていた未編集の14時間に及ぶ音源をダウンロードできる環境がないファンにとって、『OKコンピューター』の名曲群のスケッチや、未だ正式にリリースされていない「Attention」や「Are You Someone?」のデモを収録したこの白いカセットの中身が正式に公開されたことは、同作が誕生した背景を知る上で大きな意味を持っている。

今後公開が期待されるもの
Radiohead Public Libraryは極めてマイナーなコンテンツ(『ア・ムーン・シェイプド・プール』のリスニングパーティーが開かれたレコード店で使用されたプレイリスト、「Mr Hands」による『イン・レインボウズ』の開梱ビデオ、90年代半ばにファンクラブWasteの会員に送られたニュースレター等)まで網羅しているが、未だに公開されていないものも中には存在する。期間限定で販売されていた『OKコンピューター』期のデモ等を収録したMD音源は、期間限定という名目を守るためか、同ライブラリーでは公開されていない。また広く出回っている「Manic Hedgehog」のデモ音源など、今回ストリーミングが解禁された1992年作『Drill EP』以前の作品も未公開のままとなっている。(RPLが公開された月曜日には『Drill EP』の他、アルバム未収録の2005年作「I Want None of This」、そしてリミックスEP『TKOL RMX 8』のストリーミングも解禁された)

また各メンバーのソロ作品、特にヨークのソロ作やアトムズ・フォー・ピースの作品も、同ライブラリーには含まれていない。しかし最近、レアなヨークの曲がいくつかストリーミングサイトで再解禁されたことを考えると、そう遠くないうちにこの状況が変わる可能性がある。(ドンウッドが手がけたヨークのソロ作のアートワークの数々も、現時点では掲載されていない)

質・量共にNeil Young Archivesに匹敵するRadiohead Public Libraryは、今後過去の作品が振り返られる機会が訪れるたびに(余談だが、2020年は『キッドA』の発売20周年に当たる)、コンテンツを拡張させていくに違いない。ファンとしては、そこにやがてニューアルバムが加わることを願うばかりだ。