750馬力のモンスター級 スーパースポーツカーを維持するためにかかる費用は?

これは、記事『驚異的なスペック!世界77台限定 美しきスポーツカーのパワー源は?』の続きです。

生産が開始されたのは2010年で、最後の1台が納車されたのは2012年8月のことだった。77台が限定生産されたうち、右ハンドル仕様は9台だった。ただし、ボディカラーとトリムのバリエーションが驚くほど豊富なので、まったく同じ組み合わせのOne-77はこの世に2台と存在しないらしい。
 
いっぽうで設定されているオプションは、スイッチギアのスペシャルメタルだけに限られる。用意されているメタルはゴールド(4万ポンド)、ダーククローム(3万ポンド)、ルテニウム(1万5000ポンド)の3種のみ。車両本体価格(税抜き)は当初105万ポンドだったが、2011年に115万ポンドに引き上げられた。これにイギリスの付加価値税を加えると138万ポンドに相当する。
 
では、現在の価値はいかほどか。先ごろボナムスがモナコで開いたオークションにはスイス登録で走行距離850kmのシャシーナンバー25が出品されたが、このときの予想価格は140〜180万ポンド(約2億円~)。写真のOne-77 も同じくローマイレッジで、アストンマーティン・ワークスより売りに出されていた。ロンドンに本拠を構えるジョー・マカリはローマイレッジのOne-77を販売したが、このとき広告に掲載されていた価格は170万ポンド(約2億3970万円)だった(2016年の為替レートは147.6円、2017年は141.0円として計算)。どうやらOne-77に限っていえば、バーゲンはほとんど行われていないようだ。


 
これは驚くに値しないことだが、メンテナンスに関する要求は一般的なアストンよりもはるかに厳しい。まず、1年に1度もしくは走行5000マイル(約8000km)ごとに実施する定期点検をアストンマーティン・ワークスに依頼すると、その費用は1752ポンドに上る(イギリスの付加価値税込み。約24万7000円)。ただし、これはもっともベーシックなコースで、全体の中間ほどに位置するコースだと2947ポンド(約41万6000円)となる。大規模なものは5万マイル(約8万km)ごとに実施するもので、費用は5500ポンド(約77万6000円)。ここには大量の人手を要するスパークプラグ12本の交換作業が含まれている。それではパーツの価格はどれほどだろうか。リアタイヤに用いられるピレリPゼロ・コルサの価格は2本で1000ポンド(約14万円)は下らないし、フロントのブレーキパッド代もほとんど変わらない。


 
いわゆるラニングコストもOne-77オーナーにとっては悩みの種といえる。高速道路をおとなしく走っている場合を除けば、燃費が3.6km/リッターを越えることはまずないだろう。燃料タンクの容量は21ガロン(約95リッター)だが、それでも給油はこまめに行わなければならないはず。それでいて実用性も決して高くなく、ラゲッジルームはないも同然。幅が335mmもあるPゼロ・コルサは温度が低い状態が苦手で、しかもボディの全幅が広いから地方の曲がりくねった道はなるべく避けたほうが無難だ。それと低い位置にマウントされたリアディフューザーにも特別な注意が必要。なにしろ、ひとたびダメージを負わせると、パーツ全体を交換しなければいけないからだ。
 
そうはいっても、最高出力:750bhp、最高速度:220mph、車両価格:140万ポンドのモンスターを走らせるのだから、このくらいの負担は当然だろう。それでもOne-77をこよなく愛するオーナーたちは思う存分ドライブを楽しんでいるようだ。「ヨーロッパ各地をOne-77で旅しているお客様が何人もいらっしゃいます」アストンマーティン・ワークスでコマーシャルディレクターを務めるポール・スパイアーズはそう語る。「間もなく5万kmを迎える車両もあります。また、多くの距離を走る車両ほど調子はよくなる傾向が見られます。きっとOne-77には日ごろからの運動が必要なのでしょう」


 
アストンマーティン・ワークスが誰よりも深くOne-77について理解していることは間違いない。「30台以上のOne-77が世界中から集まってきて、ここでメンテナンスを受けています。また、私たちのスタッフが各地に飛んで出張サービスを行うこともあります」 "ワークス" にモータースポーツ畑の出身者が多いことも、One-77のオーナーたちが定期的にサーキットを訪れて走行するひとつのきっかけになっているようだ。

「サーキットで走らせても非常に楽しい車です。あるオーナーはポールリカールを文字どおり1日中走っていらっしゃいました。あのときは本当に大変な量のガソリンを給油されていましたね」とスパイアーズ。

多くのスーパースポーツカーが過給エンジンやハイブリッド・システムを採用するなか、One-77はパワフルで高回転を得意とする自然吸気エンジンの魅力を余すことなく体験できるモデルとして長く語り継がれることだろう。現在、アストンが開発している次世代のハイパーカーは、One-77とは別種の生き物となると見られる。それが、One-77よりも速く、スポーツドライビングにはある種のチャレンジが求められるモデルであることは間違いない。それでも、One-77のようにエキサイティングなスーパースポーツカーが今後、二度と現れないこともまた、火を見るよりも明らかなように思う。