人工妊娠中絶の種類とリスク、その後の妊娠への影響、不妊症との関係について解説します。

◆人工妊娠中絶手術とは ……母体保護法が適応される場合、21週6日まで
人工妊娠中絶は、何らかの理由で妊娠が継続できない場合に、手術によって妊娠を中断する方法です。日本では母体保護法という法律で人工妊娠中絶を行う適応条件が定められており、また、妊娠22週0日を過ぎた場合、いかなる理由があっても中絶はできません。人工妊娠中絶ができるリミットは21週6日までです。

中絶手術を行うためには、本人と胎児の父親となる相手のサインが入った同意書が必ず必要になります。ただし父親がすでに死亡している場合や行方不明などでサインができない場合は必ずしも同意書へのサインがなくても手術は可能です。

現時点での法律ではこのようになっていますが、例えばDVの結果妊娠した場合もDV加害者の同意が必要などといった矛盾が生じうるため、本人(女性)の同意だけでできるようにすべきだと指摘されています。

日本では確実な方法で避妊をしている人がまだ少ないため、平成29年度の報告によると年間で約16万4621件の中絶手術が行われています。よく取り沙汰されている年間自殺者数が約3万人ですから、中絶の数がいかに多いかお分かりいただけるかと思います。

◆人工妊娠中絶手術の種類……初期は掻爬術。中期は死産証明書も必要
◇初期中絶
11週6日までに行う中絶手術を「初期中絶」といいます。手術の方法は、静脈麻酔をかけて機械的に子宮の中から妊娠の組織を掻き出す掻爬術です。

出産をしたことのない人の場合、子宮の出口である子宮頚管が閉じているので、手術の前に子宮頚管をある程度拡げるための前処置が必要です。手術そのものは5分程度で終わるため、日帰りまたは1泊入院で手術を受けることができます。

◇中期中絶
12週0日を過ぎてから行う中絶手術を「中期中絶」といいます。初期中絶とは異なり、薬で陣痛を起こしてお産のように産みおろす方法です。

事前に子宮頚管をしっかり拡げておく必要があるので、初期中絶よりも前処置が大変になります。すぐに陣痛が来れば1日で終わりますが、陣痛がなかなか来ないと2~3日かかることもあります。

手術後も普通のお産と同じように子宮の戻り具合などをみる必要があるので、トータルで4~5日の入院になる場合があります。中絶後は胎児の火葬の手配が必要で、死産証明書を役所に提出しなければいけません。

◆中絶手術のリスク……子宮内感染、子宮穿孔、多量出欠など
手術に伴うリスクは次のようなものがあります。

◇初期中絶のリスク
・麻酔によるアレルギー
・子宮内への妊娠組織の遺残
・子宮内感染
・子宮穿孔(子宮に穴があくこと)

◇中期中絶のリスク
・子宮頚管裂傷
・子宮破裂(陣痛が強すぎた場合)
・子宮の収縮不全などによる多量出血
・子宮内感染

◆中絶手術の危険性……妊娠への影響・不妊症との関係
中絶手術を行ったからといって、将来妊娠しにくくなるわけではありません。安全にきちんとした手術を受ければ、ほとんどの場合その後の妊娠に影響は与えません。

ただ、手術の際に何らかのトラブルがあった場合は、それが原因で妊娠しにくくなることがあります。例えば、術後に子宮内感染を起こして子宮の壁同士がくっついてしまう「アッシャーマン症候群」になった場合、着床が難しくなるので不妊症につながります。

また、特にトラブルがなくても、中絶手術を何度も繰り返した場合、着床時にベッドになる子宮内膜が薄くなってしまい、着床障害の原因となります。

中絶手術をしなければいけないようなことになる前に、ピルや子宮内避妊具で確実な避妊を行うことが大切です。どうしても中絶しなければいけなくなってしまった時は、同じ失敗を何度も繰り返すことのないよう、今後の避妊方法についてしっかりと考えるようにしましょう。

◇清水 なほみプロフィール
女性医療ネットワーク発起人・NPO法人ティーンズサポート理事長。日本産婦人科学会専門医で、現在はポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長。女性医療の先駆者の下、最先端の性差医療を学び、「全ての女性に美と健康を!」をコンセプトに現場診療にあたる。ネット・雑誌・書籍等の媒体を通し幅広く健康啓発を行っている。

文=清水 なほみ(産婦人科医)