皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、3人のお子さんを抱える35歳の会社員女性。3度の産休で貯蓄が減り、夫は単身赴任の可能性があるとのこと。そんな現状で、住宅購入をしても大丈夫なのか……

◆住宅購入、夫単身赴任、それでも教育費は用意できますか?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、3人のお子さんを抱える35歳の会社員女性。

3度の産休で貯蓄が減り、夫は単身赴任の可能性があるとのこと。そんな現状で、住宅購入をしても大丈夫なのか……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◇相談者
雪ん子ママさん(仮名)
女性/会社員/35歳
関西/賃貸住宅

◇家族構成
夫( 会社員/34歳)、子ども3人(6歳・3歳・1歳)

◇相談内容
毎月数万円の赤字で、ボーナスから赤字分を補填しています。3度の産休育休の間に、これまでの貯蓄も取り崩してしまい、今は貯蓄が全くありません。

このような状況ですが、昨年私が育休より職場復帰したこともあり、子どもが3人になり一番上の子も小学生になるため、3500万円程度の一戸建てを購入したいと考えています。

しかし試算では月々の住居費が現在より3万円以上アップする上に、主人も数年以内には転勤になる可能性があり、単身赴任になった場合の生活費アップを考えると今の状況では家の購入は難しいと感じています。

家計をどのように改善すれば家を購入できますでしょうか。また家を購入し、主人が今後単身赴任になった場合でも、3人の教育資金や老後資金を準備することは可能でしょうか。

◇家計収支データ
相談者「雪ん子ママ」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足
(1)ボーナスの使い途について
自動車ローン(ボーナス払い)30万円、自動車保険年払い(2台分)13万円、年払い保険料(学資、生保)60万円、車検(2台分)30万円、自動車税(2台分)8万5000円、家具家電購入15万円、レジャー費10万円、残りは生活費の補填

(2)車について
相談者コメント「夫の会社に社用車がなく、自家用車を営業車として使っています。そのため、普通車(軽自動車はダメ)で自動車保険も車両保険まで入ることが義務付けられています。ただしガソリン代+α(+α=2~3万円は夫のこづかい)とETC代は全額支給されています」

(3)雑費の内訳
日用品3万5000円、医療費(コンタクト代含む)1万円、被服費2万5000円、美容院・化粧品代2万円、他1万円

(4)加入保険の内訳
[夫]
・終身保険(病気死亡保障500万円、65歳払込み終了)=毎月の保険料8895円
・収入保障保険(保険期間60歳まで、死亡保障・月10万円)=毎月の保険料3220円
・逓減定期保険(保険期間65歳まで、死亡保障・加入時3000万円)=毎月の保険料3062円
・がん保険(終身保障終身払い、診断一時金50万円、放射線・抗がん剤治療/月額10万円)=毎月の保険料2040円
・医療保険(入院1万円、がん一時金50万円)=毎月の保険料5458円

[妻]
・終身保険(病気死亡保障200万円、65歳払込み終了)=毎月の保険料3626円
・収入保障保険(保険期間58歳まで、死亡保障・月15万円)=年払い保険料3万150円
・がん保険(終身保障終身払い、診断一時金50万円、放射線・抗がん剤治療/月額10万円)=毎月の保険料1845円
・医療保険(入院5000円、がん入院1万円、がん一時金50万円)=毎月の保険料4342円
・個人年金保険(65歳から10年確定、年金額60万円)=毎月の保険料1万104円

[子ども]
・1番上の子/学資保険(18歳満期、12歳払込み終了、満期金300万円)=年払い保険料34万8139円
・2番目の子/学資保険(18歳満期、12歳払込み終了、満期金300万円)=年払い保険料24万8976円
・3番目の子/学資保険(17歳満期、15歳払込み終了、満期金300万円)=毎月の保険料1万6320円
・子ども共済=毎月の保険料1000円×3人分

(5)購入を予定している住宅と住宅ローンについて
借入額3500万円、返済期間35年、全期間固定1.5%、毎月の返済額10万7000円

相談者コメント「上の子どもが就学することと、私(妻)の実家が同じ町内にあるため、場所は変えたくありません。子ども部屋3部屋は確保したいと考えていますが、予算的に厳しければ面積を小さくしたり、中古で探すこともやむなしと考えています」

(6)単身赴任について
単身赴任の期間は未定。一度異動になれば、定年までは戻れない可能性もあり。単身赴任になった場合の生活費は、少なくとも5万円はアップする。単身赴任手当は1万円なので、持ち出し4万円以上になる予定。

(7)単身赴任後の生活について
相談者コメント「私の仕事はフルタイムですが、残業もなく、有休も取りやすい環境のため、単身赴任になっても無理ではないと考えています。また私の実家が同じ町内にあり、今は両親共にフルタイムで働いていますが、母は2年後には退職する予定のため、退職後は育児や家事を手伝ってもらえる環境になる予定です」

(8)定年と退職金について
・夫:定年60歳(再雇用制度有り・65歳まで)/退職金 1000万円未満の見込み
・妻:定年70歳(再雇用制度無し)/退職金 500万円程度の見込み

(9)子どもの進路について
中学は公立、高校も公立を希望しますが、進路により高校は私立の可能性もあり。

◇FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:生活コストが現状のままなら住宅購入はほぼ不可能
アドバイス2:忍耐をともなう家計管理で貯蓄ペースを生み出す
アドバイス3:リスクを考慮すれば住宅コストは下げるのが賢明

◆アドバイス1:生活コストが現状のままなら住宅購入はほぼ不可能
まず、試算の前提として、この時点で候補にあがっている住宅を購入し、ご主人が単身赴任になったとします。

住宅については、頭金なしで物件価格全額を借り入れるとして、諸費用はどうされる予定でしょうか。おそらく、100万~150万円の諸費用が別途発生するはず。貯蓄が現在120万円ですから、親御さんからの資金援助等がなければ、これも借り入れることになります。

したがって、いただいたデータでは、借入額3500万円で毎月の返済額は10万7000円(35年返済、全期間固定1.5%)となっていますが、借入額を100万円加算します。これで毎月の返済はおよそ11万円。現在の家賃より3万8000円、住宅コストがアップします。

さらにランニングコストとして、固定資産税が月にならして1万円。さらに将来の修繕費用も考慮しておきます。マンションであれば修繕積立金によって用意されますが、一戸建てですから、自身で計画的に準備しておく必要があります。これを月1万5000円とすれば、先の住宅ローンと合わせて、実質の住宅コストは月6万3000円上昇します。

さらにご主人が単身赴任となった場合、生活コストは4万円アップするとのことですから、全体で約10万円生活費が上がるということになります。

それは、支出が現状と変わらないのであれば、毎月10万円の赤字(貯蓄性のある保険の保険料も支出とみなす)を意味しますから、1年後に貯蓄も底をつきます。雪ん子ママさんがいわれるとおり、住宅購入は無理といわざるを得ません。

◆アドバイス2:忍耐をともなう家計管理で貯蓄ペースを生み出す
では、支出を見直せば、購入は可能でしょうか。ただし、用意すべき資金の優先順位で言えば、まず教育資金となりますので、先に教育資金の備えを考えます。

学資保険は3本加入。満期金の合計額は900万円。大学は私立文系ならかかる費用はざっと400万円、理系なら540万円ほど。平均して1人500万円とすれば、3人で1500万円。

大学の費用がかかる最後の年が下のお子さん21歳(大学3年)のときですから、学資保険以外に毎月3万円貯蓄できれば、20年間で720万円。結果、学資保険の満期金と合わせて1620万円となり、想定した大学資金は足りることになります。

そう考えると、先の生活費10万円アップに加え、月3万円の教育費の積立が必要となります。すなわち、毎月13万円、現状の家計から捻出しないといけないということです。

それでも、数字的には不可能ではありません。それだけ世帯年収が高いからです。年収にすれば1000万円近いのではないでしょうか。

しかし、同時にそれだけ使ってきた生活を続けているわけですから、減らすことは容易ではありません。脅かすわけではありませんが、少なくとも貯蓄習慣が身に付くまでは、忍耐の連続だと思われます。

具体的に考えてみます。まず、奨学金の返済があと2年8カ月で終わります。自動車ローンの完済時期はわかりませんが、一般には最長でも10年ですから、これもあと7~8年で終わるでしょうか。

ただし、児童手当も徐々に支給額が減り、14年後にはなくなります。それである程度相殺されるなら、少なくとも毎月の収支については、奨学金や自動車ローンの完済後も変わらないと考えていいでしょう。

そうなると、それ以外の生活コストをどれだけ削減できるかですが、まず固定支出となる保険の見直しは必須となります。ご夫婦ともに加入されている終身保険は払済保険に。それと、ご主人加入の収入保障保険は解約します。

持ち家となり、住宅ローンを組むことで団体信用生命保険にも加入しますから、死亡保障は逓減定期保険だけでも必要最小限は確保できています。あと、子ども共済も必要性は低いので、こちらも解約。これで、保険料が月1万8000円削減できます。

他の生活コストについては、基本的には優先順位の低い順に削ることになります。

おそらく雑費の10万円、趣味娯楽費の3万円、食費の8万円、このあたりに手を付けることになるはず。この3つの費目の合計が21万円ですから、半分に減らすことができれば10万円を貯蓄に回すことができます。しかし、実際は頑張っても7万円くらいでしょうか。

もちろん、それでも大変です。家計簿を付けて、支出のひとつひとつの必要性を考える。楽しむ部分を削るとストレスが溜まりますから、創意工夫をしてお金をかけず楽しめる方法を見つけ出す。そのような地道な日々の努力が必要でしょう。

◆ アドバイス3:リスクを考慮すれば住宅コストは下げるのが賢明
毎月の家計から捻出できるのは、月8万~9万円が限度であるなら、頼れるのはボーナスしかありません。理想は半分貯蓄。これで年間100万円が貯蓄に回りますから、月割にして毎月の貯蓄と合わせれば16万~17万円。

そもそも13万円貯蓄をしても、住宅ローンと教育費に消え、手持資金はまったく増えないことになります。これでは老後がままなりません。

上乗せとして月3万~4万円貯蓄できれば、ご主人定年までの26年間で1000万円前後は貯蓄できます。退職金がご主人を800万円程度として、雪ん子ママさんは500万円程度ですから、すべて合算して2300万円。このくらいは老後資金が用意できることになるわけです。

資金的には、定年後も夫婦とも働くことになるでしょうが、それでも老後資金のベースはできます。

ボーナスから半分貯蓄することについては、自動車ローンや学資保険の年払い分が終われば、半分貯蓄は比較的無理なく達成できるでしょう。それまでは大変ですが、そこを越えれば、住宅購入も見えてきます。

それでも、リスクはあります。夫婦とも収入がずっと維持されることが、この試算の前提となっています。したがって、健康を害して減収になれば、マネープランそのものが大きく変わります。

雪ん子ママさんはまだ若いですが、ご主人が単身赴任となれば、仕事に加えて、家事、子育てもこなさなくてはなりません。お母さんが手伝ってくれるとは言え、かなりの重労働です。家計管理ともに健康管理も大きなポイントとなります。

また資金的にもクルマの買い替えが定年までにあと数回発生します。支出としてはある程度まとまった額になるはず。お子さんの進路も、あくまで高校は公立を想定しています。

そう考えれば、やはり住宅コストをもう少し下げることで、こういったリスクを軽減したいところ。

例えば、中古物件にして物件価格を1000万円下げることができれば、毎月のローンは約8万円。35年間、毎月3万円、住宅コストを下げることができるわけです。ローンの完済がご主人69歳であることも考えれば、検討する価値は十二分にあります。

◆相談者「雪ん子ママ」さんから寄せられた感想
具体的に数字で示して頂き、現状で住宅を購入することは不可能であることや、教育資金もこのままでは不足するという現実を知りました。また家計の改善すべき点が多々あることもよくわかりました。

今まで無計画にお金を使い過ぎていました……。保険や家計管理を見直し、住宅購入という目標に向けて貯蓄を頑張りたいと思います。この度はありがとうございました。

教えてくれたのは……深野 康彦さん

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。

取材・文/清水京武

文=あるじゃん 編集部