NAGOYA, JAPAN - MARCH 02: Yoshitomo Tsutsugoh of Japan in action during a Japan training session  at the Nagoya Dome on March 2, 2018 in Nagoya, Aichi, Japan.  (Photo by Koji Watanabe - SAMURAI JAPAN/Getty Images)

ワールドシリーズ初制覇の期待

 筒香嘉智外野手が移籍することが決まったタンパベイ・レイズは1998年にMLBの球団数拡張に伴い誕生した。同じ年に誕生したアリゾナ・ダイヤモンドバックスと同様、MLB内では歴史の浅い新興チームの1つである。
 
 球団創設後、最初の10年はチーム成績が低迷を続けたが、チーム名を当初の「デビル・レイズ」から「レイズ」に変更した2008年に初めてプレーオフに進出すると、アメリカン・リーグも制し、ワールドシリーズまで駒を進める快進撃を見せた。その年から5年間は好調が続いたものの、2013年のワイルドカード進出を最後に、プレーオフからは姿を消していた。
 
 だが2019年シーズンは大方の予想に反して、レイズはシーズン後半に勝率を急激に上げ、6年ぶりのプレーオフ進出を果たしている。球団創設から22年目となる2020年シーズンは悲願のワールドシリーズ初制覇の期待がかかる。




先進的なチーム作りに定評

次々と生み出す新戦略
 新しいチームに相応しく、レイズは伝統にとらわれることなく、画期的な戦略を生み出すことに躊躇をしない。その中には現在のMLBのトレンドになっているものもある。
 
 セイバーメトリクスに基づく極端な守備シフトは今ではどのチームも採用しているが、もともとは2006年からレイズの監督だったジョー・マドン氏(現ロサンゼルス・エンゼルス監督)がデービッド・オルティスなど左の強打者への対策として始めたものである。
 
 さらに、リリーフ投手を1、2回の短いイニング限定で先発登板させ、本来の先発投手をロングリリーフとして継投する「オープナー」も2018年にレイズが始めたものだ。
 
少ない資金で効率的なチーム作り
 レイズは2018年、2019年の両シーズンにおいて、チームの年俸総額がメジャー全30球団の中で最下位だった。筒香の契約内容は2年総額1200万ドル(約13億1500万円)とされているが、この数字はチーム内では3位の高給取り選手だということになる。ボストン・レッドソックスやニューヨーク・ヤンキースといったトップ球団と比べると、レイズの年俸総額は3分の1程度でしかない。
 
 そのように少ない資金でありながら、独自のデータを駆使してトレードやFAで優れた選手たちを獲得し、チームをプレーオフ進出に導いたとして、ゼネラルマネージャー (GM)のエリック・ニアンダー氏は2019年シーズンのMLB最優秀エクゼクティブ賞に選ばれている。ニアンダー氏は現在36歳で、監督のケビン・キャッシュ氏も42歳である。レイズを引っ張るのはこのMLBきっての若いコンビだ。
 
二刀流選手の育成にも本気で取り組む
 レイズはブレンダン・マッケイ選手を投手と打者をこなす本格的な二刀流選手として育成してきた。マッケイは2017年にドラフト1巡目(全体4位)で入団し、2019年シーズンには念願のメジャーデビューを果たした。
 
 昨年は投手としての出場機会が多かったが、ニアンダー氏は今シーズンもマッケイを二刀流選手として起用し、打者としてのチャンスも増やすつもりだとウィンター・ミーティング期間中に名言している。打者としてのマッケイは左打ちの選球眼の良いパワーヒッターであり、守備ポジションは一塁か指名打者(DH)であるなど、筒香とは重なる部分も多い。
 
 マッケイの他に、レイズは投手と内野手をこなすタナー・ドッドソンという二刀流選手も傘下マイナー組織で育成中である。もう一人、ジェイク・クローネンワースという3人目の二刀流選手も抱えていたが、クローネンワースは昨年12月にトミー・ファム外野手とともにサンディエゴ・パドレスへトレード移籍した。




悩みの種は低迷する観客数

 レイズの悩みの種は本拠地トロピカーナ・フィールドの観客数が減り続けていることだ。6年ぶりのプレーオフ進出という快挙を成し遂げたにもかかわらず、2019年シーズンの平均観客数は1万4734人でメジャーワースト2位と低迷した。観客数の下落傾向はMLB全体にも言えることではあるが、レイズはその中にあっても、2012年から2017年までの6年連続でメジャー最下位の不名誉な記録までも作っている。
 
 ちなみに2018年と2019年の両シーズンにおいてレイズよりさらに少ない観客数でメジャー最下位だったのは同じフロリダ州にあるマイアミ・マーリンズだ。
 
 レイズはここでも独自の経済効率重視とも呼ぶべき方針を取っている。観客数を増やすより、1人当たりの単価を上げようとしているのだ。トロピカーナ・フィールドは2019年シーズンから最大観客席数を現在から5000席以上削減した。削減後の最大観客数は2万5000人ほどで、他の全てのメジャーリーグ使用球場から比べると、格段に少ない最小規模の球場となった。削減されるのは主に上階の低価格席で、高価格帯の席を逆に増やしている。
 
 この方針への評価はともかくとして、筒香はNPB時代よりはるかに少ない観客の前でのプレーを余儀なくされることになるだろう。




ダブル本拠地案は打開策となるか

 レイズは将来的に本拠地をタンパベイとカナダのモントリオールに分散する案を検討していることも明らかにしている。
 
 人工芝で密閉式ドームであるトロピカーナ・フィールドの評判は芳しくなく、レイズは地元セントピータースバーグ市との同球場リース契約が切れる2027年以降は新球場への移転を模索している。それをさらに進めて、シーズン前半をタンパベイ、後半を涼しいモントリオールへと本拠地を分ける案だ。この計画自体はMLB機構からの検討許可は下りているが、実現するには両都市からの合意を得る必要があり、現時点での可能性は不明だ。
 
 積極的に独自の試みに取り組んでいるレイズを選んだことは筒香にとってどのような結果を生むだろうか。レイズの春季キャンプは本拠地セントピータースバーグ市から南へ120キロほどの位置にあるポート・シャーロット市で2月12日(野手組集合は18日)から始まる。
 
 
角谷剛