「中古住宅」を検討中なら知っておくべき「安心R住宅」の理想と現実

安心して購入できる既存住宅(中古住宅)の流通促進に向けて実施された「安心R住宅」制度。2018年4月からスタートしてまもなく満2年を迎えようとしていますが、期待したほどには、普及が進んでいないようです。
しかし、これから中古住宅の取得を考えている人、反対に手持ちの物件の売却を考えている人にとっては、たいへんメリットが大きい制度ですから、ぜひとも知っておいていただきたいところです。

中古住宅のマイナスイメージを払拭する制度

安心R住宅制度というのは、中古住宅につきまといがちな「不安」「汚い」「わからない」といったマイナスイメージを払拭し、「住みたい」「買いたい」と感じる中古住宅を増やして、中古住宅市場の拡充を図ろうとするために創設された、国が推進する施策です。安心R住宅のRとは、リユース(再利用)、リフォーム(改装)、リノベーション(改修)の頭文字からとられています
この制度の肝は、一定の条件を満たす住宅に関して、国が作成した安心R住宅のロゴマークを広告などに掲載できるようになる点にあります。
つまり、このロゴマークは国のお墨付きともいえるわけで、これがあれば消費者としては安心して中古住宅を購入できるようになります。売主も、お墨付きによって売却価格を高く設定できる、より短期間で買主を見つけることができるといったメリットがあります。
もちろん、国のお墨付きを利用できるのですから、それにふさわしい条件を備えている必要があります。

安心R住宅に必要な三つの条件と登録団体への加入

安心R住宅の基本的条件は次の三点です。

1.基礎的な品質があり「安心」

新耐震基準に合致し、かつインスペクション(建物状況調査等)の結果、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に適合する住宅であること

2.リフォーム工事が実施されていて「きれい」

リフォームが実施されてきれいな住宅になっているか、リフォーム工事に関する費用情報を含めた提案書があること

3.情報が開示されていて「わかりやすい」

広告において点検記録などの保管状況が示され、必要な場合には詳細情報が開示されること

この1~3に合致した住宅であることと同時に、それを扱う会社が、国が審査・登録した業界団体に所属していなければなりません。

建築後20年、25年が経過しても一定の価値を維持

こうした条件を満たす住宅であれば、中古住宅で多少老朽化が進んでいるにしても、新築に近い状態にリフォームされ、地震などに対する備えが十分であることが明らかになって、安心して、かつ快適な生活を送ることができるはずです。

その結果、資産価値の向上も期待できます。

当たり前のことですが、中古住宅は築年数が長くなるほど、資産価値が低下します。図表1にあるのは、首都圏の中古住宅の成約価格の築年数別の変化ですが、マンションでみると、築5年以内の築浅物件であれば、5,411万円と新築マンションとほとんど変わらない価値を維持していますが、築年数が長くなると、次第に価値は低下します。築20年超になると3,000万円を切って2,528万円まで下がり、築26年超では2,000万円を切ります。築深物件は平均すると、築浅物件の3分の1程度まで価値が下がるわけです。

一戸建ては、土地が付いていることもあって、土地値で歩留まりがかかるため、マンションほどではありませんが、それでも資産価値の低下は避けられません。

図表1 首都圏の中古住宅の成約価格の築年数別の変化   (単位:万円)

 

買い換えによるステップアップが難しくなってしまう

資産価値が下がるといっても、住んでいるぶんにはさほど影響はありませんが、買い換えなどでステップアップしていくためには、大きな阻害要因になります。
ライフスタイルなどに合わせて、より広い住まいに、より便利な住まいに買い換えを行うためには、手持ち物件が一定価格で売れることが条件になります。

安心R住宅制度が創設された背景には、そうした事情もあります。この安心R住宅では、図表2にあるように、リフォームやインスペクションの実施などによって、中古住宅としての資産価値を高め、これまでのような築年数による価値の低下に歯止めをかける効果が期待されているのです。
資産性が評価されない従来の中古住宅は、図表2の黒い線のように急速に資産価値が下がりますが、安心R住宅なら、赤い線にあるように、良質性が評価されて20年後、25年後の資産価値を高めることができるというわけです。

図表2 安心R住宅による資産価値の向上の考え方

半年で700件前後では選択肢が少なすぎる!

しかし、それはあくまでも安心R住宅の理想形です。現実にはなかなかそう簡単ではないようです。安心R住宅制度、18年4月にスタートして以来の実績をみると、図表3のようになっています。

18年4月から9月の半年間の実績が482件に対して、18年10月から19年3月の半年では784件に増加したものの、19年4月~19年9月の半年は687件に減少しました。なかなか期待した通りには増えていないのが現実です。

この安心R住宅のロゴマークを利用できる業界団体は、当初は大手住宅メーカー10社による優良ストック住宅推進協議会だけだったのが、現在では9団体に増えているのですが、その効果はさほど上がっていません。むしろ団体数が増えても、実績は後退しているのです。

中古住宅の取得を考える立場からすれば、半年間の実績が700件前後では、そのなかから自分たちの条件に合った物件を見つけることは簡単ではありません。

だから売れにくい→物件が増えない→なお売れにくくなる、そんな悪循環に陥っているのではないでしょうか。

図表3 安心R住宅の実施状況

6割以上が安心R住宅を「知らない」というのが実態

まずは、この物件数を増やすことが最優先課題でしょう。そのためには、もっと積極的なPR活動を展開、認知度を高めることが不可欠です。
少しデータは古くなりますが、全国宅地建物取引業協会連合会と全国宅地建物取引業保証協会が、2018年9月から11月に実施した『住居の居住志向及び購買等に関する意識調査』によると、安心R住宅について、「知っている」とする人はわずか6.4%で、「聞いたことはあるが内容は知らない」が17.3%、「聞いたことはないが興味はある」が10.8%で、「聞いたことがない」が65.5%という結果でした。
これでは、とても安心R住宅の広がりは期待できません。行政、業界団体がリードしながら、不動産業界が一体となって普及に務めていく必要があるでしょう。
さきに触れたように、安心R住宅制度は中古住宅の資産価値や不動産取引における中古住宅の地位を高めることにつながります。それは、住む人にとっても、これから購入を考える人にとっても大きなインセンティブになるはずです。せっかく創設された制度なのですから、有効に機能することを期待したいものです。

執筆者:山下 和之