2019年のカメラ業界を振り返ってどう感じているか、2020年のカメラ業界に何を期待するのか、どのような変化を見せてくれそうだと思っているか、業界通のカメラマンにまとめていただきました。今回は、カメラだけでなくドローンにも精通している写真家の大浦タケシさんです。

個性的なカメラや交換レンズがお目見えした1年

デジカメウォッチャーとしての個人的な主観ですが、2019年はメーカー各社の個性が特に際立った年のように思えます。独自のスタイルを追い求めたものや、得意とする分野を極めたものなど、例年になく多彩といえたでしょう。

ソニーは、スペック的に“究極のミラーレス”ともいうべき「α7R IV」を、富士フイルムはフィルム時代のカメラを彷彿させるミラーレス「X-Pro3」を、そしてシグマは静止画撮影には割り切った内容のフルサイズミラーレスカメラ「fp」をリリースするなど、各社それぞれ“とがった”カメラを相次いでリリースしました。

  • 富士フイルムのAPS-Cミラーレス「X-Pro3」

交換レンズについても、話題が事欠かなかった1年のように思えます。キヤノンは、得意とする大三元レンズ「RF15-35mm F2.8 L IS USM」「RF24-70mm F2.8 L IS USM」「RF70-200mm F2.8 L IS USM」をミラーレスでいち早くそろえ、独自の機構を搭載した大口径の中望遠レンズ「RF85mmF1.2 L USM DS」も攻めてきたと感じました。かたやニコンは、伝家の宝刀ともいえる“ノクトニッコール”の名を冠した「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」を登場させ、大きな話題を呼びました。

空飛ぶカメラとして存在感を増しているドローンは、機体重量199gでまさかの日本仕様に仕上げたDJI「Mavic Mini」に驚かされました。本格的な作りと安定したフライトは、これまでのトイドローンの概念を大きく覆す仕上がりになっています。

  • まさかの日本仕様に仕上げてきたDJIの小型軽量ドローン「Mavic Mini」

新しい製品が出てくると、今度はどのような手で楽しませてくれるのか毎回気になりますが、2019年はそれに十分応えられるだけの製品が出てきたと考えています。マスコミなどで騒がれているとおり、カメラ業界はこの一年沈滞ムードが漂っていました。実際に、それが販売台数などの数字になって結果として現れています。

しかしながら、いずれのメーカーも製品開発には依然積極的に取り組んでおり、先に名前を挙げたような魅力的なカメラが出たのは、ひとえに日本企業の底力といってよいでしょう(言うまでもなく、DJIは中国企業ですが)。「日本の企業はイノベーションがない」と言われることがありますが、ことカメラ業界に限れば、それは当てはまらないと思えてなりません。その努力は2020年に製品となって世に現れ、やがてはよい結果となって返ってくるものと確信しています。

ミラーレスは単焦点レンズの登場に期待

それでは、外れてしまうとちょっと怖いのですが、2020年の予想と展望を少しだけ述べたいと思います。

まずは一眼レフカメラです。新年早々、キヤノンがデジタル一眼レフのフラグシップモデル「EOS-1D X Mark III」を発表し、ニコンも追うように「D6」を正式に発表するでしょう。これらのカメラは、いうまでもなくオリンピック・パラリンピックを見据えたもの。昨今の状況を考慮すると、最後のフラグシップデジタル一眼レフになる可能性もあり、その集大成としてこれまで以上に力の入った仕上がりになると期待しています。

デジタル一眼レフは、そのほかにもいろいろ出てくる可能性があります。時代はミラーレス全盛ですが、デジタル一眼レフは古くからの根強い愛用者が一定数おり、その人たちをフォローする意味からも、ミドルレンジクラスを中心に新製品の登場が予想され、目が離せないものとなることでしょう。

  • 新年早々発表されたニコンの高性能フルサイズ一眼レフ「D780」

ミラーレスですが、現行モデルのリニューアルも含め、タイミング的に2020年は忙しくなるように思います。特に富士フイルム、オリンパス、パナソニックはモデルチェンジを控えているモデルがいくつかあるので、確実に何か大きな動きがありそうです。また、これまでフルサイズのミラーレスを出していないペンタックスも、何らかの動きがあるとスゴく面白くなってくるはず。キヤノンとニコンも、ひょっとしたらミラーレスのハイエンドがお目見えするかも……と淡い期待を抱かせます。

ミラーレス用の交換レンズも、キヤノンとニコンを中心に積極的に投入してくることでしょう。まったくの個人的な要望となりますが、キヤノンとニコンのフルサイズミラーレス用として、ボディの大きさに見合ったコンパクトで高画質の交換レンズ、特に単焦点レンズの登場は強く願わずにはいられません。いずれにしても、2月末のCP+を楽しみに待ちたいと思います。

現状ではDJI一択となるドローンに関しては、高性能モデル「Phantom」シリーズの新しいモデルに期待がかかるところです。日本では、よりコンパクトな「Mavic 2」シリーズが人気ですが、飛行の安定性などはPhantomには及びません。レンズ交換式カメラの搭載を待ち望む意見は多いのですが、個人的にはレンズ固定式でよいので、4/3インチセンサーのカメラを懸架するPhantomの登場をあえて望みたいと思います。

  • DJIの高性能ドローン「Phantom」シリーズ

私は経済評論家でも占い師でもないので、現実的には今回まとめた展望は外れるかもしれませんが(むしろ外れることが多い?)、少なくともいち写真愛好家として、2020年はカメラメーカーには元気に振る舞ってほしいと願っています。

著者プロフィール
大浦タケシ

大浦タケシ

宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。ドローンにも精通している。日本写真家協会(JPS)会員。