相談者は、第2子と住宅購入を希望している、31歳の会社員で主婦の方。昨年から正社員として働き始め、貯蓄ができる家計になったものの、いろいろ返済もあり、教育資金や住宅資金、老後資金が準備できるか不安とのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◆夫に借金があり、もう少しお金を貯めたら一括返済すべきか悩んでいます
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回の相談者は、第2子と住宅購入を希望している、31歳の会社員で主婦の方。昨年から正社員として働き始め、貯蓄ができる家計になったものの、いろいろ返済もあり、教育資金や住宅資金、老後資金が準備できるか不安とのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◇相談者
ともりさん(仮名)
女性/会社員/31歳
東京都/賃貸住宅

◇家族構成
夫(会社員・41歳)、子ども(保育園・4歳)

◇相談内容
去年から私が正社員として働き出し、やっと貯金ができるようになったが、年齢に対して貯金が少ないことが不安です。

また、夫に借金があり(詳しい金額不明100万円以下)、もう少しお金を貯めたら一括返済すべきか悩んでいます。自分にも奨学金が残っており、こちらは2029年完済予定です。

私としては中古マンションの購入と2人目の子どもを希望していますが、上記の理由からお金が足りないという不安があります。どちらかは諦めるべきなのか、いくら必要なのかがわからないです。自分たちの老後の準備(夫名義でiDeCoを始めようか検討中)を考えると、きびしいのかなとも思います。

ともあれ、お金の長期的な計画の立て方も、今後の方向性もわかりません。保険も共済しか入っていないので、もっと手厚い保障のある生命保険に加入するべきでしょうか?

家計についてわからないことばかりなので、ご教示いただければと思い今回相談させていただきました。何卒よろしくお願いいたします。

◇家計収支データ
相談者「ともり」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足
(1)奨学金について
・借入総額:500万円
・返済完了する年:2029年
・毎月の返済額:2万2000円

(2)ボーナスの使いみち
・夫のボーナス(昨年例)
家族のレジャー費/10万円、家電の買い替え、他買い物/10万円、家賃更新料の積み立て/10万円、学資保険の年払い/8万円

昨年までは私にボーナスがないので主人のボーナス分のみになります。

・妻のボーナス(今年から)
全額貯蓄の予定。

(3)加入保険について
・夫/共済(病気死亡保障400万円、入院5000円、三大疾病特約付き)=毎月の保険料3000円
・妻/共済(病気死亡10万円、入院1万円)=毎月の保険料2000円
・子ども/学資保険(17歳満期、満期金100万円)=保険料8万円※年払い

(4)子どもの進路について
できれば高校も公立へ進学してほしい。大学は私立でも。ただし、大学の費用を用意できるか不安。

(5)購入を希望されている中古住宅について
相談者コメント「物件価格としては2500万円程度の中古マンションを希望。ただし、通勤を考えると、現在の住まいから大きく離れない場所が望ましいので、この価格ではきびしいのではと考えています」

◇FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:ライフイベント実現のために貯蓄意識をより高める
アドバイス2:キャッシングの返済は一括も可能、iDeCoはまだ先の話
アドバイス3:物件価格は2500万円が上限

◆アドバイス1:ライフイベント実現のために貯蓄意識をより高める
ともりさんが希望されている大きなライフイベント、第2子と住宅購入、ともに実現することはマネープランとして可能かどうか。その試算の前に、少し家計を見直して、目標とする貯蓄ペースを考えてみましょう。

現在、毎月の家計からの貯蓄は毎月10万円。それを差し引いても家計収支ではまだ2万円の黒字です。それも自然に貯まっているのであれば、問題はありません。ただ、貯蓄はやはり毎月10万円であれば、2万円は何かに支出されていることになります。

支出先は「外食」が考えられるとのことですが、それを削って貯蓄に回すことが可能かどうか。また、例えば通信費、趣味娯楽費、雑費あたりから5000円でも節約できるかどうか。

ともに可能なら、毎月の貯蓄額は12万5000円。年間150万円ですから、それだけで30万円アップします。さらに、ともりさんのポーナスも貯蓄に回るということなので、年間190万円の貯蓄ペースになるということです。

家計自体、今でもよく管理されていると思います。さらなる節約、家計の見直しはハードルが高いかもしれませんが、大きなライフイベント実現のために、無理のない範囲でより貯蓄意識は高めていきたいところです。

◆アドバイス2:キャッシングの返済は一括も可能、iDeCoはまだ先の話
一つ目のご希望、マンション購入ですが、住宅資金を貯める時間が必要なので、その時期を5年後とします。新たに貯めることができるのは、年間190万円×5年=950万円。今ある貯蓄と合わせて1050万円。ここから諸経費150万円、頭金500万円を捻出します。

物件価格を想定されている2500万円とすると、借入金は2000万円。20年返済、金利は全期間固定の1.5%とします。返済額は毎月9万6500円(ボーナス払いなし)。マンションであれば管理費、修繕積立金等が発生します。これに固定資産税も加えると毎月の住宅コストは12万5000~13万円といったところ。

では、毎月これだけのコストを負担できるでしょうか。

単純計算で、現在の家計に対して、住宅コストが5万5000円程度上がることになります。年間で66万円ですから、貯蓄ペースが190万円から124万円に。それでも定年までの14年間で、新たに1736万円貯まることになります。

また、途中でご主人のキャッシング返済、ともりさんの奨学金返済が完済となりますし、学資保険の支払いも13年後にはなくなります。一方で、児童手当の支給は15歳まで。

それらを相殺していくと、住宅以外の生活コストが変わらなければ、定年までにさらに650万円ほど貯蓄できますので、ざっと2400万円は貯まることになるわけです。これに、住宅購入時に残った手持資金300万円を加算すると、2700万円となります。

ただし、ここから教育費を差し引かなくてはなりません。大学を私立文系として400万円、高校はできれば公立希望とのことですが、そこはまだ不透明。とりあえず私立進学にも備えて高校費用に300万円。現在計上している教育費1万5000円は、中学までの家計から捻出する学費と、成長に合わせて増える生活費としてこのまま大学卒業まで加算していきます。

したがって、700万円を貯蓄から捻出しなくてはなりません。学資保険の満期金が100万円ありますので、実際は600万円を差し引き、定年時に残る資金は2100万円。これにご夫婦の退職金を加算した額が、準備できる老後資金の目安となります。

あと、話が前後しますが、ご主人のキャッシングについて。一括返済すべきかどうか悩まれていましたが、190万円かそれに近い貯蓄ペースが保たれるなら、残高は不明ですが、一括返済してもその後のマネープランにおいて問題はないと考えます。

それと、老後のためにiDeCoへの加入を検討中とのことですが、資金づくりの優先順位は教育資金、住宅資金が明らかに先。今は少なくとも加入は考えてなくていいでしょう。

次に、第2子ができた場合です。前提として、育児休暇が終われば、当初時短勤務もあるでしょうが、職場復帰して同様の収入を得ることができるとします。

お子さんがもう1人増えることによるコストですが、進路等で一概には言えませんが、収入としては確実に児童手当を200万円受け取ります。それを差し引いて、概算ですが、子育て費用としてかかる費用は1000万円ほどとしましょう。

また、育休と時短勤務で、その間、フルタイムよりも300万円程度減収になると考えると、実質1300万円、先の老後資金から差し引くことになりますから、800万円+退職金が老後資金となります。

大事な点は、その額の老後資金で足りるかどうかということ。ただし、それについて不確定要素が多く、判断はできません。

ただし、老後の働き方次第では、資金的に大きく困ることはないでしょう。つまりは結論として、マンションを購入して、第2子ができても、資金的には大丈夫ということです。

定年以降で大きく家計負担となるのは、住宅ローンの支払い。完済がご主人66歳のとき。定年後も毎月13万円近い住宅コストが発生します。

ただし、ご主人が定年を迎えたとき、ともりさんはまだ50歳。ご主人にアルバイト程度の収入があれば、老後資金を取り崩すことなく、ともりさんの収入で支払っていけるのでは。しかも、夫婦とも厚生年金加入であることは、老後において大きな強みでもあります。

そう考えると、希望されるライフプラン実現のポイントは見えてきます。

まず、ともりさんは正社員を定年まで継続する。そして、ご主人も定年後、収入は高くなくていいので、できるだけ長く働く。逆に言えば、これがきびしくなると、老後そのもののリスクが高まってしまいます。

◆アドバイス3:物件価格は2500万円が上限
もうひとつ気をつけたいのが、購入されるマンションの価格。通勤の便を考えると、2500万円の物件は価格的に無理かもしれないとのこと。

ただし、例えば3000万円の物件なら老後資金が単純に500万円減るわけです。その分、老後リスクが高まります。やはり2500万円程度に抑えておきたいところです。

そうなると、多少通勤を犠牲にしても、違う地域で探すといったことも選択肢に入ってくるはず。まだ時間はあります。じっくり検討してみてください。

ところが、世帯収入から判断して、販売業者は3500万円程度の物件を勧めてくることが考えられます。すると借入金は3000万円。それでも30年返済、ボーナス併用ならば、毎月7万円の支払いとボーナス月20万円の加算でローンが組めます(金利は先の試算と同じ固定1.5%)。

「毎月の支払いは家賃並みです」と言われると、そう負担に感じないかもしれません。しかし、完済は76歳のとき。しかも、定年以降、ボーナスがないのにボーナス月の支払いが16年も続きます。決して目先の数字にとらわれず、ローンは慎重に組んでください。

最後に保険について。割安な保険商品に加入されているのはとてもいいのですが、現状、持ち家ではなく、4歳のお子さんのいる世帯としては、夫婦とも死亡保障が足りません。

まず、ご主人は共済を解約して、ともりさん同様の医療共済か、単体の医療保険に加入します。そして、夫婦とも新たに定期保険で死亡保障1500万円ずつ確保します。とりあえず10年定期でいいでしょう。保険料は合わせて4000円台半ばといったところです。

◆相談者「ともり」さんから寄せられた感想
この度は丁寧にご教示いただきありがとうございます! とても勉強になりました。先生からのお話を元に家計の長期計画を立ててみようと思います。

お金に対する不安からあれもこれも始めようとしていましたが、まずはしっかり貯蓄に励みます! 本当にありがとうございました。

教えてくれたのは……深野 康彦さん
 
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文:清水京武

文=あるじゃん 編集部