2020年の年頭にあたり、日立製作所の執行役社長兼CEOを務める東原敏昭氏 は、以下の年頭所感(抜粋)を発表した。

あけましておめでとうございます。

2021 中期経営計画の中盤に当たる 2020 年が始まりました。社会イノベーション事業のグローバ ルリーダーをめざす日立の挑戦は、これからが正念場となる重要な年です。2020 年は、5G や Virtual Reality の社会実装、東京でのオリンピック・パラリンピックの開催など、私たちを取り巻く環 境にも大きな変化が起きると思います。日立がお客さまと協創しながら、社会価値・環境価値・経済 価値の向上を図り、持続可能な社会を実現していくためには、“One Hitachi”、全社員一丸となり、 私たちの変革を加速していく必要があります

年頭に当たり、私が考えていることをお話しします。

今年 2020 年は、私たち日立がグローバルリーダーになるために大きな変革を迎える年です。 2021 中期経営計画の中間年であり、皆さんには、ぜひグローバルリーダーになる姿をイメージして、 2021 年度に自分たちがめざすゴールを明確にしてほしいと思います。そして、その実現に向けたロ ードマップをより具体的に描き、実行することに全力を尽くしてください。

エネルギー分野では、ABB 社のパワーグリッド事業が、いよいよ日立グループの一員となります。 私は、グローバルでトップレベルの技術力や幅広い顧客基盤を有する ABB 社のパワーグリッド事業 と日立の有するデジタル技術が一体となることで、世界最高水準のサービスを提供できると確信して います。また、オートモティブ分野では、ホンダが出資する自動車部品会社3社との合弁会社を設立 することで、電気自動車に関する多くのグローバル No. 1 プロダクトを提供することが可能になります。 このように、2020 年は、組織構造が大きく変化するなかで、グローバル化に向けた私たちの変革が 始まる年、つまり、次の時代に向けた新しい日立をつくり上げていく年なのです。

この変革を成し遂げ、グローバルリーダーになるためには、もう一度自分たちの強みを再認識する ことが重要になります。私はこれまで何度も繰り返し伝えてきましたが、日立の強みは、100 年以上に わたる豊富な現場での経験から培ってきた OT、50 年以上の経験を持つ IT、そして世界で戦うこと のできる強いプロダクトを 1 社で有することです。このような企業は世界でも類をみません。この強み を生かすことで、例えば Lumada 関連事業において、これまで IT セクターが主導してきた分野だけ ではなく、OT との融合で新しいビジネスモデルを構築し、お客さまや社会に新たな価値を生み出す ことができると考えています。今年は、OT×IT をさらに活性化させると同時に、グローバル No. 1 の プロダクトをつくることにも注力していきます。そして、これらを掛け合わせることで、日立の社会イノベ ーション事業を一層拡大・強化し、グローバルリーダーへの変革を加速する年にしたいと考えていま す。

OT×IT×プロダクトの強みを最大限に生かし、お客さまと共に新たな価値を生み出すためには “One Hitachi”の考えが欠かせません。自らの事業範囲にとどまっていては、OT×IT×プロダクト の強みは発揮できませんし、新たなソリューションの提案や協創の加速も実現できません。世界各地 で起きている変化を先取りし、お客さまやビジネスパートナーと Win-Win のビジネスモデルを構築 するためにも、“One Hitachi”の意識を常に持って行動してほしいと思います。

最後にお伝えしたいことは、日立は常に社会から信頼される企業であるべきということです。社会 に貢献できる企業であるためには、まず社会から信頼されること。これが企業にとって非常に重要な 点であることは皆さんも認識していると思います。日立の持つ高品質な製品やサービスは何にも代え がたいものであり、創業以来 110 年積み上げてきた大切な財産です。コストやお客さまの納期に応 えることも重要ですが、日立グループにおいては、製品やシステムに対する品質の信頼が何よりも重 要で、私たちの仕事の優先順位は、「S(Safety:安全)>>Q(Quality:品質)>D(Delivery:納 期)>C(Cost:コスト)」であり、安全と品質が最も優先されるべきです。企業として、「基本と正道」「損得 より善悪」の姿勢・意識を再度徹底してください。

これから始まるさまざまな変化は、私自身、初めて経験する大きなものになると感じています。それ は、日立が社会イノベーション事業のグローバルリーダーとして、社会価値・環境価値・経済価値を 同時に向上させ、お客さまの企業価値や人々のQoL向上に貢献していく企業へと変革していくため の重要なプロセスです。変革を進めるには、皆さん一人ひとりがさまざまな課題を“自分ごと”として捉 え、自ら判断し行動することが重要です。この壮大な変化をぜひ一緒に楽しみ、そして一緒に社会を 輝かせようではありませんか。今年も頑張りましょう。