きょう28日に放送されるフジテレビの深夜番組『オタクのおたく』(25:25~26:25 ※関東ローカル)。世界中の“オタク”の家(お宅)をレポートし、お笑い芸人の宮川大輔、アイドルグループ・Kis-My-Ft2の宮田俊哉、山崎夕貴アナウンサーが見守るというスタジオは、一見バラエティ番組の収録だが、企画したのは情報番組『とくダネ!』のスタッフだ。

実は3年前まで『ネプリーグ』の演出を担当していたフジテレビ情報制作局情報制作センターの吉田渉氏。バラエティの体裁でありながら、情報番組のノウハウが詰め込まれている新感覚番組の裏側を聞いた――。

※山崎アナの「崎」は、正しくは「立つ崎」

  • 『オタクのおたく』に出演する山崎夕貴アナウンサー(左)と宮川大輔 (C)フジテレビ

    『オタクのおたく』に出演する山崎夕貴アナウンサー(左)と宮川大輔 (C)フジテレビ

■『とくダネ!』のノウハウ生かす

『とくダネ!』に異動してからも、バラエティの放送作家と企画会議をしているという吉田氏。今回の企画は、インスタグラムなどで自分の家の中で撮影した1ショット写真を投稿している人が多いことに着目し、「その部屋はどういう感じなんだろう、その人はどういう人間なんだろう…というのが企画にならないかと考えました」(吉田氏)と、今回チーフ作家の北本かつら氏と立案した。

登場するのは、「バービー人形」「スーパーマン」「スニーカー」といったものから、「ファンシー絵みやげ」という実にマニアックなものまで。他の番組でも見たことのないオタクたちで、「日本のテレビに出ていない人を紹介したくて、インスタを検索したり、海外の現地で記事になっている人を探したりして100人くらいをピックアップしました」。

このリサーチにおいては、『とくダネ!』のノウハウが生かされているそう。「チーフプロデューサーの方針で“独自色を出す”ということを日々ものすごく意識しているので、そうした中で検索の仕方や嗅覚が養われていると思います」という。

そこから、オタクをさらに絞り込んでいくのだが、ここで“ふるい”にかけるのが、『トリビアの泉』などで知られる放送作家の酒井健作氏だ。「ビックリマンシール」の熱烈なコレクターであり、自他ともに認めるオタク気質である酒井氏が「これはウソだね」「この人は本物じゃない」と審美眼を発揮して、他では見られないラインアップが完成した。

酒井氏とは入社以来、10年の付き合いだという吉田氏は「健作さんの意見はとても重要で、オタクが認めるオタクじゃないといけないんだという基準を作ったんです」と信頼を寄せ、クオリティが担保されている。

また、この番組はSkypeを使って、スタジオメンバーが現地のオタクに直接質問をぶつけるのも特色の1つ。「これは情報番組に行かなかったら完全に思いつかなかった手法です。『とくダネ!』では、『海外取材はできないけどSkypeだったらいけます』ということがよくあるので、実は最初の企画書では、“現地に行かなくても海外レポートができる番組”というのを狙っていたくらいです」と、ここでも『とくダネ!』のノウハウが生かされていた。

  • 『オタクのおたく』企画・演出の吉田渉氏

■打ち合わせから盛り上がったキスマイ宮田

スタジオメンバーの宮川については「深夜でオタクの人を取り上げると、ジャンルが深くなってしまうので、それをポップにして見やすい形にするためにお願いしました。『イッテQ』で世界を回っていらっしゃるし、リアクションもいろいろしてくれると思いました」と起用。一方、オタクの気持ちが分かる人代表として、コミケにも参加するほどの「アニメオタク」である宮田に白羽の矢を立てた。

「1人目に候補にあがりました。打ち合わせで初めてお会いしたんですけど、こちらの質問に対してすごい笑顔で応えてくれて、ご自身のお気に入りのキャラクターや収納のこだわりまで、1時間半くらいずっと盛り上がりました(笑)」と狙いは的中。収録中も、激しく共感したり悔しがったりとリアクションして、汗が止まらなくなってしまい、急きょスタジオ空調の温度を下げるほどだった。

ちなみに、進行は山崎アナ、ナレーションは伊藤利尋アナ。深夜の単発番組で、フジのエースアナウンサーが起用できたのは、2人が『とくダネ!』に登板する以前より、山崎アナとは新人アナの冠番組『ヤマサキパン』でチーフADを担当し、伊藤アナとは天の声を務めていた『ネプリーグ』でAD時代から一緒に仕事をしてきた仲だったからだ。

「収録まではオタクの人たちが引いて見られてしまうという不安もありました」というが、理想どおりのキャスティングと、VTR編集や進行の工夫によって「すごい化学反応がありました。予想をだいぶ超えましたね」と手応えを語っている。

  • (C)フジテレビ

■面白いものを“0から1”出したい

日々ニュースに追われるレギュラーの『とくダネ!』の合間を縫って、「バービー人形オタクのおたく」の取材には、自らシンガポールへ足を運んだ吉田氏。彼の印象については「予想以上にものすごい社交的な人で、車での移動中は助手席に座らせてもらったんですけど、ずっと話しかけてもらって(笑)。サービス精神もすごくて、僕らが日本人だということで、その日は日本の着物姿のバービー人形を持ち歩いて、触らせてもくれるんです」と話す。

ほかにも、さまざまなオタクが登場するが、彼らの共通点を聞くと、「1つのことに対してまっすぐで、本当に楽しそうな顔をしているんです」とのこと。「以前、アイドルの密着を1~2カ月したことがあって、その時にファンの人たちを取材したら、疲れた感じのサラリーマンのおじさんが、めっちゃ笑顔で踊っていたんです。それがいいなあと思っていた感覚が、まさに今回の番組にもあるので、オタクが収集しているものに興味がない人も、全く“オタク性”のない人も、1つのことに突き詰めて熱中できる憧れみたいなところで楽しめる番組になっていると思います」と胸を張った。

今回の『オタクのおたく』以前も、『とくダネ!』に異動してから、ウガンダの観光大使に任命されたピコ太郎の珍道中を追った『ピコ太郎INウガンダ~OFFLINE~』(17年11月14日放送)、世の中の常識について徹底討論する『これってマストですか?』(19年1月19日放送)など、単発の番組を制作してきた吉田氏。

忙しい中でも、新たな番組を立ち上げることの原動力を聞くと、「情報番組をやっているからかもしれないです。日々、ニュースをどういう切り口で伝えるかというのを考えているのですが、根っこにはバラエティのように面白いものを“0から1”出したいという思いがあるので」と回答。「それが、バラエティから情報番組に来た意味だとも思うので、いつまでも単発を趣味みたいにやっているのではダメですから、何とかレギュラーにして“新しい情報番組”というのを出していきたいですね」と構想を語ってくれた。

●吉田 渉
1984年生まれ、北海道出身。明治大学卒業後、09年フジテレビジョンに入社。『キャンパスナイトフジ』『ネプリーグ』『バイキング』などを担当後、17年に情報制作局情報制作センターに異動し、『とくダネ!』のディレクターに。現在は同番組で火曜日担当のプログラムディレクター。