皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、退職してセミリタイアを希望する40代の男性会社員。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◆金融資産8000万円でセミリタイアは可能でしょうか?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回の相談者は、退職してセミリタイアを希望する40代の男性会社員。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。


◇相談者
バッジョさん(仮名)
男性/会社員/42歳
大阪府/賃貸住宅

◇家族構成
一人暮らし

◇相談内容
42才、男性独身、年収約850万円、金融資産8000万円です。

現在の会社は新卒(大学院修士)から約18年勤務しておりますが、入社当時から自分には合ってないと常に感じておりました(研究開発職)。年齢的にも責任が重い業務となり、現在は精神的に非常に厳しい状況で1日でも早く辞めたいと思っております。

家賃補助が会社から4万5000円、もし結婚すれば6万5000円がでます(あと14年間)ので、福利厚生、年収とも申し分ないのですが、合わない仕事を毎日遅くまでするのは限界がきました。更に最近転勤になり人間関係も悪い職場になりました。

幸い、株式投資で運良くゲーム会社株で4000万円ほど儲かり、金融資産は8000万円ほどあります(退職金前払いを利用した確定拠出年金評価額900万含む)ので、セミリタイア可能ではと考えています。

例えば、アルバイトまたは派遣社員で気楽な仕事に就き、年収100~150万円程度でも生活できるのではないかとも思っています。

ちなみに、日本年金機構のねんきん定期便では、老齢基礎年金36万円、老齢厚生年金65万円で計101万円となってます。

そこで、質問です。株式投資は趣味程度にする(今後、増減無しとする)、支出を月25万円とすれば、65才まで年収100万円稼げば生活できるでしょうか?

現在の仕事をあと何年間続ければ(年収は変化無しとする)、年収100万円程度のセミリタイアに入れるでしょうか? また、年金等を考慮すれば正社員をあと何年間続けたほうが良いとかあるでしょうか?

今後、結婚の可能性はありますが、少なくても経済的負担になる方とは結婚しないです(笑)。

◇家計収支データ
「バッジョ」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足
(1)リタイア後の家賃
9万円の家賃が発生する

(2)ボーナスの使いみちについて
年貯蓄80万円、旅行20万円、買い物40万円

(3)加入している保険について
・本人/医療保険(終身保障終身払い、名義/本人、入院1万円、がん特約、通院特約付き)=保険料6000円

(4)退職金について
退職金制度はなし。現在、退職金前払い制度で確定拠出年金を運用している。

◇FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1:月25万円なら年収100万円では足りない
アドバイス2:生活費が増えることを想定し、収入アップを目指す
アドバイス3:早期に退職し、心身を休めることが大切

◆アドバイス1:月25万円なら年収100万円では足りない
ご相談文を拝見して思うことは、合わないと思う仕事に就いて、よく18年間も頑張って勤務されたということ。大変だったと思います。では希望どおり、早期退職は可能でしょうか。資産をしてみましょう。

現時点で退職し、すぐに年収100万円程度のアルバイトを始めたとします。生活費を月25万円とすれば、公的年金が支給される65歳までの22年間で6600万円。

対して、年収は65歳までに計2200万円ですから、この間、貯蓄から取り崩すのは4400万円。したがって65歳の時点で3600万円が手元に残ります。

65歳以降は公的年金が支給されますが、おそらく額面で月12万円程度(老齢基礎年金を満額まで増えると想定)。つまり、貯蓄を取り崩す額は年間に160万円ほどとなり、87歳で用意した老後資金は底をつきます。

長生きリスクはもちろんのこと、まとまった大きな支出(病気入院や介護費用など)が発生すれば、資金不足となる時期は当然前倒しとなります。さらに、80歳以降、手持ち資金が目に見えて減っていくことは精神的にもつらいでしょう。結果、年収100万程度では不足と言わざるを得ません。

◆アドバイス2:生活費が増えることを想定し、収入アップを目指す
予定しているリタイア後の生活費を下げることは、有効な手段ですが、そう簡単ではないかもしれません。

まず、意識的に生活費を落とし、それを維持する家計管理が必要です。さらに、アルバイト生活となればボーナスがなくなりますから、そこから捻出していた支出は、結果的に月の生活費に上乗せされます。

加えて、国民年金を含む社会保険料や税金を、月25万円の生活費に含めているかどうか。含めていないなら、生活コストに上乗せしなくてはいけません。仮に平均月3万円支出が増えれば(実質の生活費は月28万円)、計算上、79歳で手持ち資金はゼロになります。

そうなると、退職後の収入アップがもっとも確実な対応策となります。生活費を月25万円として、かつ社会保険料や税金を別とするなら、年収150万円で65歳まで働いても、上乗せできるのは1100万円ほど。金額としては心許ないでしょう。

いくつかのリスクを考慮するなら年収220万~230万円程度はほしいところです。

◆アドバイス3:早期に退職し、心身を休めることが大切
もうひとつの対処策として、リタイア時期を延ばすという方法もあります。相談にも「いつまで現在の仕事を続けるべきか」とありますが、マネープランから言えばより長く続ける方が望ましいのは間違いありません。

しかし、健康を第一に考えれば、早々に辞めた方がいいですし、退職後は数カ月はゆっくり休むことを勧めます。

老後資金が足りないという状況で矛盾しているようですが、今、優先すべきは、働くことではなく、休むことです。バッジョさんは心身ともに限界に近づいているのではないでしょうか。

したがって、まずはひと休みして、18年間の疲れを取る。そしてリフレッシュした後に、リスタートすればいいでしょう。

焦る必要はありません。アルバイトで月18万円前後の収入を得るのは難しいですが、バッジョさんは、働いて収入を得る=人的資本がしっかりと備わっています。派遣社員はもとより、正社員で働くこともそう難しくはないはずです。

正社員であれば、厚生年金の受取額も増え、さらに資金的な余裕も生まれます。そして、元気に65歳まで働くことが大切です。

あとは投資ですが、徐々に利益確定をして、投資額を減らしていくべきです。今の投資商品の総額は、あくまで評価額であり、含み益に過ぎません。売却してはじめて資産として確定するわけです。

今後は「投資はしない」とのことですが、その方向でいいと思います。少なくとも、自分に収入がない(あるいは少ない)時期に、「お金に働いてもらおう」といったことは、考えるべきではありません。

教えてくれたのは……深野 康彦さん  

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武

文=あるじゃん 編集部