情報収集・体験・相談をフルカバーするテレワーク専門施設

東京テレワーク推進センターは、2017年に東京都と国がテレワーク推進の拠点として設置した施設だ。同センターは、優秀な人材の確保や生産性向上を実現するためのテレワーク導入を支援することを目的として、テレワークに役立つ機器やツールの体験、導入事例を含めた情報収集、テレワークを実現するツールを組み合わせた利用、制度の整備、社員教育、助成金活用などの相談などに対応している。

「年間3000名を超える来場があり、大企業と中小企業が半分ずつといった割合になっています。40種以上のツールを比較・体験したり、400以上のパンフレットや事例に関する情報を入手したりすることが可能な場です。パンフレットは要望に合ったものをコンシェルジュが選んでお渡しており、就業規則の改定や助成金活用などの相談に対応できる社労士も常駐しています」と語るのは、東京テレワーク推進センター 事業責任者の湯田健一郎氏だ。

  • 東京テレワーク推進センター 事業責任者 湯田健一郎氏

テレワークに関する情報は、インターネットや展示会を通じて容易に集めることが可能になってきているが、東京テレワーク推進センターは公的な施設であるため、特定のツールの紹介に偏ることなく、フラットな形で情報を提供している。業界別の事例紹介も多彩で、効率よく情報収集が行えるのも魅力だ。

「年間70超のセミナーを開催し、予約制の体験ツアーも1日4回行っています。自社の複数の部署の人と一緒に来場し、共に情報を収集したり、テレワークを体験したりして、社内の推進体制に弾みをつける方も多いです」と湯田氏。

担当者が情報収集をして社内に展開するのではなく、一緒に体験しながら情報を得ることで、理解が進みやすくなる部分もあるだろう。セミナーも分野別や業界別に開催されているため、本当に聞きたい情報にアクセスしやすくなる。

センターは東京都の企業だけでなく、都外の企業・団体も利用できる。東京都の助成金活用などは都内に事業所がある法人が対象となるが、国の支援策や助成金の活用についての相談も行えるため、幅広い企業ニーズへの対応が可能な場だ。

見逃しては損! さまざまな情報を入手できるセミナーとツアー

「相談として多いのは、導入ステップ、労務管理、マネジメントやチームワークにまつわるものですね。セミナーも労務管理に関するものは人気が高く、毎回募集人数よりも多くの参加者ですぐに埋まってしまう状態です」と、湯田氏は企業のニーズを語る。

テレワークがどういうものかわからないという企業は減っているようだが、ある程度知識があるからこその誤解や思い込みがツアーへの参加で払拭されることは多いという。

「セミナーやツアーに参加された方からよく寄せられる感想は、目からうろこが落ちたというものです。これは、技術の進化やコストダウンに関する最新の情報を把握できていなかったために、思っていたよりも簡単にテレワークを導入できそうだと感じた例ですね。また、『テレワーク=在宅勤務』という思い込みも多いです。実際は、サテライトオフィス勤務や、移動中にスマートフォンを利用してメールに対応したり、遠隔会議に参加したりするモバイル勤務もテレワークに入るわけです。それを伝えると、建築・建設業界や医療・福祉業界など、在宅勤務が難しいと思われがちな業種・業界でもテレワークが有効であることを理解いただけます」(湯田氏)

リモートデスクトップ機能を活用して建築業界で進む図面などのデータをタブレットから見られるようにすることで出社や対面での受け渡しという手間を減らす手法、医療業界における在宅診療、訪問介護での情報共有を移動中にモバイル端末から行うやり方、いずれもテレワークの一環だ。オフィスワークの一部を自宅でもできるようにすることがテレワークと考えていた場合は、視野が広がり驚くことになる。

「建設業界では現場に事務所が設置されており、そこをサテライトオフィスとして活用するという例もあります。オフィスワークでも以前はテレワークに向く業務を洗い出し、一部の業務に適用するというやり方でしたが、今は日常業務をテレワークで行おうという潮流に変化しています」と湯田氏。イメージ先行で難しいと思い込んでいる場合や、時代の変化に情報収集が追いついていない場合に、セミナーやツアーを体験することで一気にやれそうだと感じるケースは多いようだ。

  • 環境構築用のツール、コミュニケーション用のツール、労務管理ツールなど、さまざまな用途のツールが一堂に会しているので、比較検討が容易だ