皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、老後に悩む求職中の50代、女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◆老後に向けて必要な収入と資産運用を教えてください
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回の相談者は、老後に悩む求職中の50代、女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◇相談者
ちゃっぴーさん(仮名)
女性/無職(求職中)/51歳
神奈川県/実家

◇家族構成
実母(80歳/年金生活)、子ども(25歳/会社員・すでに独立別居)

◇相談内容
営業職である前職を退職。現在、求職中です。老後の資金を確保しつつ、これまでと同様の生活を送るために最低限必要となる年収をご指導下さい。

また、金利0.01%の定期預金で運用している資金のより良い運用方法も合わせてご指導いただきたく存じます。

平素、マネープランクリニックを興味深く拝読させていただいております。以前より相談申しあげたく思っておりましたが、今回退職をし、再就職先を選択するにあたり、今後の金銭面での指針をいただきたく応募いたしました。

◇家計収支データ
「ちゃっぴー」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足
(1)加入保険の内訳
・本人/定期保険(保険期間56歳まで、死亡保障300万円)=保険料1088円
・本人/介護保険(56歳満期時までに要介護認定2の状態が180日以上継続した場合60万円の終身年金支払い)=保険料2892円
・本人/医療保険(入院5000円、他)=保険料2853円
・本人/医療保険(生活習慣病に特化、入院5000円、一時金200万円)=保険料4035円
(※)5年前にお付き合いで加入。解約を検討するも、2年前に病気をし、保険金(約250万円)を受け取った経験があるためお守り代わりとして継続中。病気は治癒。

(2)雑費の内訳
新聞代・オンデマンド等情報費/1万円、交通費/2万円、化粧品等/3万円、服飾品等/3万円、サプリメント/5000円、その他/1万円

(3)公的年金の受給額
年間130万円(ただし前職と同水準の給与を定年まで継続した場合)

(4)実家について
建物は実母名義、土地は兄名義。建物は相談者が相続予定(築年数31年、木造)。実母の年金額は300万円弱。

◇FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1:手取りで年収300万円なら60歳リタイアでも安心
アドバイス2:死亡保障は不要、介護も貯蓄でまかなえる
アドバイス3:株式は値上がり益より配当や優待

◆アドバイス1:手取りで年収300万円なら60歳リタイアでも安心
ともあれ、予想される老後資金を、60歳でリタイアするという想定で試算してみましょう。

まずは老後の生活費ですが、税金や社会保険料として年金の1割程度、さらにいずれは水道光熱費も発生する(現在は親御さんが負担)でしょうが、そこは雑費等で調整するとして、現在と同じ生活費が続くとします。

60歳からの5年間は公的年金の支給がありませんので、生活費は全額貯蓄から捻出することになります。年間の生活費は305万円ですから、5年間で取り崩す額は1525万円。

65歳以降は130万円の老齢年金を受給できますから、年間の赤字は175万円に減ります。90歳まで生きたとすると、25年間に4375万円。トータルで生活費として5900万円が必要という計算になります。

現在貯蓄が、保険の満期金も加算して7400万円。さらに、評価額850万円の投資商品も手元にあります。この評価額が変動しないとすると、現在とほぼ同程度の生活が送れて、さらに余裕資金(余る資金)として2300万円ほど確保できることになります。

ご実家のリフォームや、将来、土地を買い取るようなことがあっても対処できるのではないでしょうか。

それを踏まえて、今後どのくらいの収入が必要かと言えば、「現在の生活を続けて赤字にならない程度」がひとつの目安となります。具体的には手取りで300万円。これをクリアすれば、今ある貯蓄を取り崩さずに済むからです。

ただし、この収入にこだわるあまり、無収入の期間が長引くのも避けたいところです。仮に、再就職先が目安となる収入を下回ったとしても、先の試算は定年と同時にリタイアした場合。60歳以降も働くことで、目減りした分を取り戻すことも可能です。

手取りで年収250万円なら50万円下回りますから、9年間で450万円。これを60歳から老齢年金が支給されるまでの5年間で穴埋めするなら、手取りで年収90万円ということなります。

ともあれ、今後どの程度の収入になるにせよ、65歳まで働けばさらに老後は資金的に余裕が生まれるといったことは、認識しておくといいと思います。

◆アドバイス2:死亡保障は不要、介護も貯蓄でまかなえる
家計で見直すところはさほどありません。雑費10万円の内訳を見ると、化粧品や服飾品で月6万円となっています。収支のバランスなどを考えれば、一般的には過大ですが、ご相談者の場合、これも元気に働く上での必要経費といえます。

実際、頑張ってここまで資産を増やしてきたのですから、状況に応じて家計管理はできる人だと思います。今後、これら支出が大きな家計負担にならない限り、あえて削る必要もないでしょう。

ただし、保険に関しては、死亡保障300万円の定期保険と介護保険は、ともに掛け金は少額ですが、それでも必要性を感じません。

死亡保障は、遺族が困らないようにお金を遺すのが目的です。相談者の場合、お子さんはすでに独立していますので、保険金を手にしなくても生活には困らないでしょう。よく言う「お葬式代」だとしても、すでに貯蓄があるのですから、そこから出せばいいはずです。

介護保険についても同様。将来、要介護になったとしても、よほどコストがかかる状態でなければ、公的な介護保険と貯蓄でその費用はおそらくまかなえます。

また、加入されている保険は「56歳までに要介護認定2になった場合」とありますが、むしろ介護が心配なのは70歳以降。その点からも不要だと思います。

さらに言えば、医療保障も必要はありません。健康保険と貯蓄でかかる医療費はカバーできると考えられます。しかし、過去に医療保険に入っていたことで助かったという経験があり、保険に加入していることで安心が得られるなら、無理に解約せず継続してもいいでしょう。

◆アドバイス3:株式は値上がり益より配当や優待
資産運用については、あと9年で定年を迎える年齢ですから、時期としては徐々に投資比率を下げ、元本保証の貯蓄商品を中心に組み立てることになります。

ただ、ご相談者の資産配分は、すでに投資比率が低いですから、慌てて現金化していくことはありません。今後、株式に関しては値上がり益を狙うよりも配当や株主優待で楽しむといった方向がいいのではないでしょうか。

また、投資信託については個人型DC(確定拠出年金)に切り替えても(新たに積立てで買っていく)いいと思います。

掛け金は月2万3000円が上限ですが、掛け金全額が所得控除の対象となり、確実に所得税や住民税が節税できます。これは投資で利益を得たのと、結果的に同じこと。検討してみてはどうでしょう。

DCは、金融機関に申し込みますが、各金融機関で手数料や投資商品の品揃えが異なります。事前に調べるとより効率的です。それと、DCには貯蓄型の商品もあります。

金利が高いわけではありませんが、同様に節税効果は得られます。あえてリスクを取らず、定期預金などを選択してもいいと思います。

貯蓄商品ですが、定期で6000万円はかなりまとまった額です。現在、金利0.01%とのことですが、地方銀行や信用金庫のネット定期では、0.3~0.4%の金利を出しているところも少なくありません。

小分けにして複数の金融機関に預けなくてはならない(預金額の上限がある商品が多い)可能性もあり、その点は面倒ですが、利息だけで年間20万円前後(税引き前)が得られるとなれば大きいはず。手間をかける価値はあるはずです。

◆「ちゃっぴー」さんから寄せられた感想
丁寧にアドバイスをいただきありがとうございました。50歳という節目を過ぎ、健康第一で生活をするようになりました。

金銭面も同じですね。攻めではなく守る姿勢で資産と向きあっていくことを教えていただき、早速保険を見直しました。来年には、確定拠出年金も始めたいと思います。

また、お陰様で、アドバイスをいただいた手取りに近い仕事に就くことができました。年収が大幅に減少することに大きな不安がありましたが、アドバイスをいただくことにより、心穏やかに就業する心構えができました。より長く安定収入を得ることができるよう仕事に勤しんでまいります。ありがとうございました。

教えてくれたのは……深野 康彦さん

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武

文=あるじゃん 編集部