2019年10月25日、静岡県を放送地域とするテレビ朝日系列局 静岡朝日テレビが、サイバー・コミュニケーションズ(CCI)社と提携し、OTT(Over The Top:テレビ受像機を使用したコンテンツ配信)を経由して同社の番組コンテンツを視聴できるアプリ『SunSetTV』をリリースした。

デジタル時代に求められるローカルコンテンツとは?【静岡朝日テレビ×CCI】インタビュー(前編)

今回は、株式会社静岡朝日テレビ 総合編成局メディア戦略部長の松村真里氏、ブロードキャスティング・ディビジョン エグゼクティブ・スタッフ放送局グループマネージャーの國分寿隆氏インタビューの後編をお届けする。

写真:左から國分寿隆氏、松村真里氏

YouTube配信チャンネルからスタートした『SunSetTV』が、OTTをはじめとしたテレビデバイス向けコンテンツの広告媒体としての価値について探る。

■「“テレビ”離れへの疑問」から始まったOTT展開

(※)“テレビ”…放送、インターネット配信で届けるテレビコンテンツを総称して“テレ
ビ”と表現。

──もともとYouTubeチャンネルでの番組配信からスタートした 『SunSetTV』ですが、どのような経緯でOTT展開に踏み切ったのでしょうか。

松村氏:『SunSetTV』スタートから3年経った2018年4月、番組配信プラットフォームをこれまで使用してきたYouTubeから独自プラットフォームへと切り替えました。『静岡朝日テレビのファンを獲得する』というテーマでスタートした『SunSetTV』でしたが、いよいよマネタイズに乗り出すこととなり、まずは広告付きの無料動画配信を独自に展開しようということでブライトコーブ社の動画ホスティングプラットフォームを用いたCMS(Contents Management System:コンテンツ管理システム)を導入したのです。CCI社との連携はこのCMS導入時点から進めていたものですが、このたびOTT展開についてもお誘いをいただき、新たな広告販売やマネタイズの一環として『SunSetTV』をコネクティッドTVアプリとしても展開することにしました。

國分氏:2年ほど前から、ネット結線されたTVデバイスを通じた視聴が今後メジャーになっていくという予感がありました。インターネット経由でコンテンツにアクセスするのが当たり前の若い世代は、テレビも『ネットに繋いで見るのが当たり前』になってきているのではないか。『若者の“テレビ離れ』というが、テレビデバイスを通じたコンテンツ視聴から本当に離れているのか──。これまで各社のさまざまな媒体を通じた広告配信やオペレーション、セールスをサポートしてきたCCIとしては、OTTでの視聴が増えてくる可能性も見据え、良きタイミングで満を持して対応したく、それに向けた実験を共同で行ってくれる放送局を探していました。そんな折、『SunSetTV』の動画CMS導入を通じて静岡朝日テレビとの接点ができ、お互いの想定ターゲット層も重なっていたことから『トライアルとして(OTT展開を)やってみませんか』とお声がけをしました。

『SunSetTV』のコネクティッドTVアプリはAndroid TV(バージョン5.0以降)とApple TV(第4世代以降)向けにリリース。短期間でのリリースを念頭におき、バックエンドのシステムは既存の動画CMSを改修する形で対応したという。

■広告主の反響は?

── OTT版『SunSetTV』における両社の作業領域は?

國分氏:静岡朝日テレビがコンテンツの提供・管理と広告在庫の提供、CCIはアプリケーション開発のディレクションや広告販売を担当、という形で分担しています。

── 広告主からはどんな反響がありますか?

國分氏:地方の総合広告代理店から『一度詳細を聞きたい』『地方ではどんな(販売)展開ができるか』という問い合わせをいつくかいただいております。CCIの営業担当者が出向して相談に乗っているほか、プログラマティック(入札型)広告の出稿元から『SunSetTVへの出稿は可能か』という問い合わせも来ています。

■OTT展開に期待することは?

広告主サイドからも新たな広告商品として注目を集めている『SunSetTV』。今回のOTT展開に寄せる期待を両社に聞いた。

松村氏:今回、OTT展開を通じて最新の知見にふれ、ローカル局としてのデジタル媒体との向き合い方を探るきっかけを得られればと考えています。いまはまだ手探りの状態ですが、ゆくゆくはその他のローカル局間でノウハウの共有を行えるような形へと持っていきたいです。

國分氏:これまでインターネット動画コンテンツはPC、スマホ、タブレットでの視聴がメインでしたが、『大きな画面で好きなときに好きなコンテンツを見たい』というニーズは今後ますます増えていくでしょう。いまやテレビのインターネット結線率は3割を越え、動画配信コンテンツにおける広告閲覧環境もテレビデバイスからが10%を超える水準へと成長しています。こうして整いつつある環境においてしっかりマネタイズの機会を設け、放送局の良質な在庫を広告主や代理店に買っていただく市場を作っていきたい。そして得られた利益を放送局に還元して、よりよいコンテンツ作りへとあててもらえたらという期待を持っています。

現在のOTT版『SunSetTV』は静岡朝日テレビとCCIの共同実証実験として、2019年10月25日(金)から12月31日(火)までの期間限定で運営される。
ローカル局としては初のOTT進出によってどんな視聴データが蓄積され、どんな広告市場が生まれることになるのか。今後の推移に注目したい。