国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は12月10日、12月11日により東京ビッグサイトにて「SEMICON Japan 2019」が開催されるのに先んじて、2019年の半導体製造装置市場の最終予測として、前年比10.5%減の576億ドルに留まるも、2020年以降は同5.5%増と回復に転じ、2021年には過去最高となる668億ドルに到達するとの見通しを明らかにした。

半導体市場の本格回復は2020年下期

SEMI,DirectorのClark Tseng氏は2019年について、米中貿易戦争の長期化や、市場の不安定さに起因する在庫の積み増しが続いてきたことを指摘。中でも中国経済の減速は、米国の追加関税措置が実行されれば、さらなる減速となる可能性があるとの見方を示したほか、在庫状況についてはロジック関連はさばけてきたものの、メモリ、特にDRAMが積み増された状況が2020年上半期中は続くとの見方を示した。

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    SEMI,DirectorのClark Tseng氏

また、「ハイエンドスマートフォン(スマホ)の注目製品が市場を牽引するなど、良い方向の動きもあったが、PCはCPU不足により2020年までは厳しい状況が続く。期待の自動車も世界的な情勢不安から弱含みの動きとなっている」と各アプリケーション市場の動きを分析。PCの動きが鈍いこともあり、「メモリ、特にDRAMは、サーバDRAMの在庫は正常に戻ったものの、全体的に2019年第4四半期も平均販売価格の下落が続いており、市場としては2020年上期中は弱含みの状態が続く。ただ、NANDは2019年第3四半期より正常化に向けた動きが進んでおり、2020年第1四半期には設備投資も再開されることが期待され、DRAMよりも早く回復するとみている」と、メモリの中でもDRAMとNANDでは動きに違いが出てきているとする。

そのため半導体市場全体としては、非メモリ分野は2020年の早い時期から回復が進むが、メモリ分野の回復が2020年下期になると見られることから、本格的な回復は2020年の後半になると予測している。

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    エレクトロニクスならびにIC市場の推移 (資料提供:SEMI)

装置も材料もデバイスもマイナス続きの2019年

SEMIの統計によると、2019年第3四半期までのデータだが、半導体製造装置は前年比15%減、シリコンが同6%減、半導体デバイスが同8%減と、メモリバブルに沸いた2018年からいずれもがマイナス成長に陥っている。

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    2019年第3四半期までの製造装置、シリコン、デバイスそれぞれの市場推移 (資料提供:SEMI)

ただし、8月までのデータながら、製造装置の地域別市場では、欧州が前年度比46%減、日本が同31%減、韓国が同46%減、中国が同6%減、その他地域が同39%減と壊滅的なマイナス成長が多い中、北米が同47%増、台湾が同50%増と、IntelやTSMCが早い段階で大型設備投資を決定した地域は軒並み大幅なプラス成長を遂げている。

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    半導体製造装置の地域別売り上げ(前年比) (資料提供:SEMI)

「ファウンドリならびにロジック分野への設備投資は最先端プロセスの引き合いが高く、2019年通年でも成長する見通し。特にTSMCが7nm以降でのEUV活用や、5nmの本格立ち上げに向けた大型投資を継続して行っていくことが期待されているほか、中国における28nmプロセスや200mmウェハ向け設備投資が5GやHPC向け需要の高まりで拡大することが期待できる」(同)としており、2019年の地域別ファブキャパシティは台湾、韓国、日本、中国、米国、欧州、東南アジアといった順になるほか、2020年は中国での投資が拡大するため、中国が3位に入ってくると予測している。

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  • 半導体の設備投資としては、低迷するメモリとは逆にロジックの需要が急増。ファウンドリ最大手のTSMCが積極的な設備投資を進める計画を立てている一方、メモリ市場はNANDがDRAMに先んじて投資が回復するが、在庫が残っているDRAMは2020年の下期に入らないと投資が回復しないと予想されている (資料提供:SEMI)

半導体設備投資を牽引する台湾

装置市場としては、EUVへの積極投資が進んでいることもあり露光装置関連の装置別シェアは22~23%と高めとなっているほか、NANDの3D化も各社が積極的に進めていることもあり、エッチング装置関連ならびにCVD装置のシェアが高い。

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    ロジックの投資が進むため、露光装置関連の比率が上昇。また、NANDの3D化の投資は進んでいるため、その実現に必要なエッチングやCVDも堅調に推移している (資料提供:SEMI)

同氏も「装置市場としては、台湾が積極的に設備投資を行い、けん引役となっている。この流れは2021年第1四半期まで続く見通しとなっており、少なくとも2020年はトップ地域として君臨する見込み。市場2位は中国で、2番手のポジションにあった韓国は3位に後退。北米でIntelが積極的に14nmならびに10nmの設備投資を進めているが、台湾、中国、韓国の3国・地域が製造装置市場のけん引役をしばらくは担う見通しで、中でも中国は2021年に台湾を抜き去り、地域別トップとなる予想」と、アジア地域が半導体の設備投資を牽引する存在となっていることを強調する。

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  • TSMCが積極的に先端プロセスに対する投資を進めており、2019年、2020年は台湾が地域別ではトップとなるが、2021年には中国が台湾を抜き、地域別トップに躍り出るとSEMIでは予測している (資料提供:SEMI)

ただし中国市場については、米中の貿易戦争がまだ続いていることや、米国政府によるHuaweiの販売規制などが続いており、サプライチェーンに変化をもたらす可能性があることにも指摘。「中国は、部品などの調達先を米国からアジア諸国へと切り替える動きを見せているほか、長期的には自国での自給自足体制の構築を目指しており、おそらくすべての分野で、そうした体制が構築されるものと思われる」と、中国が自給自足の体制構築を積極的に進めており、製造技術としては40nm程度まで、ならびに200mmウェハ程度までのサイズを中心に徐々にその比率を高めていくのではないかとの見通しを示した。

なお、SEMIでは、2021年の半導体製造装置市場の過去最高見通しについて、「台湾が高価なEUVを活用する最先端プロセスに対する設備投資を想定以上に積極的に進めていくほか、メモリ市場の回復による韓国での設備投資回復、そして中国での積極的な生産規模の拡大と重なるため」とするほか、アプリケーションとしても5Gの本格的な立ち上がり、それをベースとしたIoTやAIの活用も進むことが期待されることから、半導体産業の未来は明るいとしている。