皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、失業中の夫を抱え、マンション購入を希望する38歳の会社員女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◆夫が病気を抱え、子供も小さい中で、マンション購入をどう目指せば……
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回の相談者は、失業中の夫を抱え、マンション購入を希望する38歳の会社員女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◇相談者
ゆうまさん(仮名)
女性/会社員/38歳
関東地方/賃貸住宅

◇家族構成
夫(無職/37歳)、子ども2人(2歳、0歳)

◇相談内容
主人は現在、精神疾患で失業中です。傷病手当ても終わり、収入がありません。妻である私は、育休中で育休手当てをもらい、来年に復職予定です。

住居は、親が購入したマンションに住んでおり、子どもが大きくなると手狭になるので、ゆくゆくは出ていかなくてはなりません。

主人には貯金がなく、肝臓に持病もあるため保険にも入れません。今の貯金は私が貯めてきた貯金のみで、これからマンションを購入するための貯金もなかなかできません。しかも40近いので、頭金がかなりないとマンション購入も難しいと思っています。

夫が病気を抱え、子どもも小さい中で、マンション購入を目指し、どのように貯蓄すればよいか教えてください。主人の無収入の手立ては何かあるでしょうか。

◇家計収支データ
相談者「ゆうま」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足
(1)妻の職場復帰について
復帰後は給与(手取額)23万円、ボーナス(年間手取額)75万円

(2)想定される年間のボーナスの使いみち
旅行・娯楽費10万円、毎月の生活費の補てん30万円、貯蓄10万円、残り予備費

(3)現在の住まいについて
家賃=8万5000円は親に支払っている。マンションは築年数35年、1LDK、50平米

(4)住宅購入について
現在住んでいる近隣のマンションを希望。新築で4500万~6000万円(2LDK~3LDK)。中古でもいいが、価格があまり下がっていないとのこと。

(5)加入保険について
[夫]
加入保険なし

[妻]
1. 終身医療保険(入院5000円 10年支払い、100万は積立)=毎月の保険料1万9313円
2. がん保険(月額給付20万、治療給付月額20万)=毎月の保険料2430円
3. 終身保険(死亡・高度障害500万、60歳まで払い込み)=毎月の保険料1万2210円
4. ドル建て終身保険(死亡3万ドル、学資保険代わり)=130万円一括払い済み
5. 終身保険(15年支払い、学資保険代わり)=毎月の保険料3万5480円

(6)夫の仕事について
相談者コメント「1年後に再就職予定。ただし、長続きするかどうか不明のため、収入としてあてにできない。

そもそもの職種は建築関係で身体的に負担がかかる職種。時間短縮や職種を変えてもいいのですが、本人が正社員で現在の職種にこだわっているため、復帰をして体を壊して、を繰り返している」

(7)夫の体調について
ここ2年間通院を続けている。費用は自立支援給付を受け、そこから捻出。自宅では家事育児を少々する程度。

◇FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:現状では、無理のない借入は1000万円程度
アドバイス2:夫が継続的に収入を得る働き方を模索する
アドバイス3:妻が倒れたら、それが最大の家計リスク

◆アドバイス1:現状では、無理のない借入は1000万円程度
ご相談であるマンション購入が可能かどうか。ともあれ試算をしてみましょう。

リスクのない住宅購入のポイントとしては、返済可能額から借入額を割り出すこと。

そのためには、購入後のランニングコストも考慮しなくてはいけません。固定資産税に加え、マンションの場合は管理費や修繕積立金などが毎月発生します。

そして、住宅ローンにこれらを加算した金額=住宅コストを、無理なく家計から負担できることが重要となります。

では、世帯として負担できる住宅コストはどのくらいでしようか。

まず、購入によって不要となる家賃の月8万5000円がベースとなります。これにどの程度、資金を上積みできるかですが、収入は職場復帰後となりますから、手取りで23万円にアップします。

しかし、それでも家計はマイナス(貯蓄性のある保険の保険料も支出として換算)。さらに、新居では水道光熱費が新たに発生します。

児童手当を加えても、ゆうまさん自身が想定されているように、ボーナスで生活費を補てんする形になるはず。したがって、ボーナスからの貯蓄は頑張って20万円程度でしょうか。

そう考えると、住宅コストにかけられる額は、少なくとも月6万円に抑えたい。上積みはできず、さらに家賃より落とさざるを得ないということです。

一方、先に触れたランニングコストは地域や物件によって異なりますが、ファミリー物件であれば、目安として2万~3万円。結果、住宅ローンの支払いは月4万円(ボーナス払いなし)を上限と考えます。

購入時期を2年後、ゆうまさんが40歳になった時期とします。そうなると、住宅ローンの返済期間は長くて25年。それ以上はリスクが高く、おすすめできません。

変動金利ではなく全期間固定、金利を1.5%とすると、借り入れ可能額は1000万円まで。これに頭金を足せば、それが購入可能な物件価格となるわけです。

つまりは、希望されている「都内で現在の住まいの近隣。相場は新築4500万~6000万円」という物件には、資金的に無理だということがわかります。

◆アドバイス2:夫が継続的に収入を得る働き方を模索する
ただし、これは「ご主人が無収入」を設定したシミュレーションです。では、ご主人の収入を想定した場合はどうでしょうか。

1年後、正社員で再就職を考えているとのこと。仮にそれが実現すれば、世帯収入は倍程度にはなるので、希望する物件も購入できるかもしれません。

とはいえ、これまで就職しては体を壊すことを繰り返している。その意味で、今度の就職も「夫の収入はあてにしないほうがよい」と考えるべきでしょう。

そうなると望ましいのは、身体に負担がかからない程度の働き方で、かつ継続的に収入を得られるかどうか。

例えば、アルバイトで月7万~8万円でも収入を得ることができれば、住宅ローンの支払いを月8万程度には引き上げられます。

それで借入可能額は2000万円。頭金+住宅購入時の諸経費(100万~150万円)を初期費用として、貯蓄の半分をそれに充てるとすると、実際に頭金として捻出できるのは500万~600万円。購入可能な物件価格は2500万円前後ということになります。

これでも希望物件には届きませんが、多少現実的にはなったと思います。

しかし、これはご主人の収入(月7万~8万円)をアテにした試算です。ご主人にもこだわりやプライドがあるでしょう。それを理解した上で、それでもご主人を説得することが、やはり必要だと思います。

専門医とも十分相談した上で、健康を維持しつつ継続的に収入を得る方法を見つけることが、今後のマネープランの大きなポイントだといえます。

◆アドバイス3:妻が倒れたら、それが最大の家計リスク
実はもう1つ、大事なポイントがあります。それは、ゆうまさん自身が頑張り過ぎないことです。

経済的に家計を支え、ご主人は精神疾患を患い、結果的に家事やお子さん2人の子育てもこなす。相当なオーバーワークです。そしてもし、ゆうまさんが倒れたら、家族にとってそれは最大のリスクとなります。

したがって、自分の健康に絶えず気を配る必要があります。疲れたら休む。できるだけストレスもためない。買い物でもいいし、外食や旅行など、家族で楽しむことも大事。そのための支出は必要経費と考えるべきです。

また教育資金については、加入されている保険の詳細がわかりませんが、掛け金から判断して学資保険代わりという終身保険が、元本(支払った保険料の総額)だけで640万円ほど。ドル建て終身が130万円ですから、計770万円。私立文系なら、お子さん2人、大学(私立文系)にかかる費用はほぼ用意できることになります。

ただし、それ以外の保険は本当に必要でしょうか。

まず、死亡保障500万円の終身保険。払済保険にされて、割安な定期保険で死亡保障は確保してください。死亡保障2000万円、保険期間15年で、女性38歳なら毎月の保険料は3000円程度です。

それと、終身の医療保険。100万円が10年後に戻ってくるという保障内容なのでしょうか。仮に学資保険代わりでも、保険料から考えて合理的とは思えません。

掛け捨ての医療保険(終身保障終身払い)で入院5000円なら、保険料は月2000円前後です。加入して間がないなら、見直しを検討してもいいと思います。

ともあれ、ご主人が無理なく、順調に持続して働くことができるかどうか。それによって、住宅ローンの借入額、あるいは購入そのものが可能かどうかという点も大きく変わってきます。

まずはその見極めができるまで、少なくとも今後2、3年は、話し合いと働く環境づくりが必要でしょう。決して慌てる必要はありません。

◆相談者「ゆうま」さんから寄せられた感想
ありがとうございました。アドバイスをいただいた通り、今は主人の体調を回復させ、働き続けられるような環境を作りたいと思います。

両方の収入を確保した後、収入に見合った住宅の購入を考えたいと思います。また、保険の見直しも検討をします。買い物や外食なども極力控えていましたが、必要経費という言葉をいただけたので少し気が楽になりました。

教えてくれたのは……深野 康彦さん  

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙など、お金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文:清水京武

文=あるじゃん 編集部