史上最高の「クリスマス・アルバム」トップ25

ビング・クロスビーにボブ・ディラン、さらにはモータウンやデス・ロウをはじめとするレコードレーベルなど。ホリデーシーズンにぴったりの名盤をローリングストーン誌がランキング形式で紹介する。

ビング・クロスビーのクリスマス・ソング、「ホワイト・クリスマス」がレコード史上もっとも売れたシングルとして書籍『ギネス世界記録』に掲載されているのは、意外でもなんでもないことだ。クリスマス・ミュージックには、宗教さえも超えてしまう普遍性がある。その理由は、ユダヤ教徒の家庭に生まれたものの、クリスマス・ソングを愛するあまり2009年にクリスマス・アルバムまでリリースしたボブ・ディランに尋ねてほしい。ギャングスタ・ラップからジャズ、レゲエ、インディーポップ、さらには熱唱系からロックまで……エルヴィス・プレスリーの「ブルー・クリスマス」や「サンタが街にやってくる」などのお馴染みの名曲を打ち負かしたい、というアーティストの衝動に限界なんて存在しない。ここでは、ローリングストーン誌が選んだ史上最高のクリスマス・アルバム トップ25を紹介しよう。

25位 ウィーザー『Christmas with Weezer』(2008年)

何百年という伝統を誇るクリスマス・ミュージックにずっと欠けていたものがひとつあるとしたら、それはアイロニーだ。そんなアイロニーをたっぷり盛り込んだ6曲を収録しているのがEP盤『Christmas with Weezer』。笑えることに、ウィーザーはバンドが得意とするフラットなパワーポップスタイルをぶち込むのに、クリスマス・ソングのなかでもとくに宗教色が強いものをあえてセレクトした。讃美歌「神の御子は今宵しも」で「いそぎゆきて拝まずや」と真面目くさって歌うリヴァース・クオモはかなり不気味で、乳飲み子イエスの誕生を祝うというよりは、ストーカーに近いものを感じる。ポップなメタルバージョンの「クリスマスおめでとう」にいたっては、イギリスの作家チャールズ・ディケンズの世界から飛び出してきた非行少年が「いますぐイチジク入りのプディングをくれないと、このしょぼいヴィクトリア朝の孤児院を燃やしてしまうぞ!」と脅しているようにも聴こえる。



24位 『Christmas Joy in Latvia – Latvian Christmas Cantatas』(2012年)

本物の伝統的なクリスマス・ミュージックを探しているなら、74歳のアンドレイス・ヤンソンスが指揮をとるニューヨーク・ラトヴィア・コンサート合唱団による、荘厳で美しいクリスマス・キャロルが収録された『Christmas Joy in Latvia – Latvian Christmas Cantatas』に勝るものはない。古いものと新しいもの、さらにはキリスト教とそれ以外の宗教をとりまぜたバルト諸国ならではのクリーンなスタイルによるカンタータ(声楽曲)は、さまざまな記憶に彩られたアメリカの移民体験を力強く彷彿させる。「On Christmas Eve」が昔ながらのブロードウェイミュージカルを連想させる一方、「My Lovely Flax Field」はより異国情緒あふれる、遠い過去とのつながりを感じさせる。クリスマス・ミュージックはもはや宗教的な意味を持たなくなったと思っているなら、「The Word Was Made Flesh」を聴けばいい。スピリチュアルな感覚が戻ってくるだろう。



23位 ジェイコブ・ミラー『Natty Christmas』(1978年)

1978年にリリースされた、明るいながらもアイロニーを感じさせるアルバム『Natty Christmas』の「クリスマスおめでとう」のカバーで「最高のクリスマスとダンスホールでの新年をお届けしよう」とジェイコブ・ミラーは歌う。それは、インナー・サークルのフロントマンが27歳で早すぎる死を遂げるわずか2年前のことだった。ミラーと相棒のDJ Ray Iは本当に楽しそうに「シルバー・ベルズ」を歌い(なんと9分という超大作)、「ひいらぎかざろう」はラバダバスタイルのレゲエバージョンに仕上がっている。そしてここで質問。「All I Want For Ismas」で繰り返し登場するアイテムがあるけど、それはいったい何かな(ヒント:マリファナ)?



22位 スフィアン・スティーヴンスの『Songs for Christmas』(2006年)

『Songs for Christmas』に収録されているラブソング「Come On! Lets Boogie to the Elf Dance!」を聴くもよし、これをサンタのトナカイがクリスマス・イブ恒例のトイレ休憩をする裏庭に積もった雪に埋めるもよし。いずれにしても、ブルックリンを拠点に活動しているインディーポップのソングライター、スフィアン・スティーヴンスの5曲入りEP盤『Songs for Christmas』は、クリスマス・ソングを再評価させてくれる有数の独創的なアルバムのひとつだ。定番曲へのアプローチは極めてキュートだし(バンジョー版「アメイジング・グレイス」をチェック)、オリジナル曲は定番曲の新しい聴き方を提案してくれる。(「ひどい1年だったかもしれないけど/ハッピーでいよう/パパの昇進とか/プレゼントもあるんだから」と歌う「Its Christmas Lets Be Glad」は、皮肉たっぷりの乾杯の音頭みたいだ)。悲しそうに帰るサンタの小人たちに対してもスティーヴンスは親切心を忘れない。




21位 ボブ・ディラン『クリスマス・イン・ザ・ハート』(2009年)

『クリスマス・イン・ザ・ハート』というタイトルは、まったく予想外かつ奇妙なこのアルバムにぴったりだ。というのも、マイクに向かうディランの声はクリスマスとはかけ離れているから。でも実際には、このしわがれたバリトン声が34作目のスタジオアルバムである同作に従来の価値観を覆す魅力を与えているのだ。クリスマス・ミュージックほど歌唱力がモノを言う音楽はないけど、「The First Noel」のようなクリスマス・キャロルや「Christmas Island」のような戦後のポップチューンをストレートかつ誠実に歌うことで、ディランは新しい聴き方を提案している。ロス・ロボスのデイヴィッド・イダルゴやギタリストのフィル・アップチャーチらミュージシャンに支えられながら、ディランは本物のノスタルジーと淡い繊細さを込め、昔のアメリカ音楽に敬意を示しながらも自らの物語の一部として解釈している。



20位 『New Wave Xmas: Just Cant Get Enough』(1996年)

レコードレーベル、ライノ・エンタテインメントによる1980年代のニュー・ウェーヴ コンピレーションアルバム。『New Wave Xmas: Just Cant Get Enough』は、UKの変わり種クリスマス・シングルとキャンパスラジオから流れてきそうな新曲のどちらかに分類できる楽曲をバランスよく配した、楽しくて一風変わったオルタナティヴポップ満載のアルバムだ。まさに、冬休み前の最後のイベントにぴったりの1枚。同作には、ザ・ポーグス&カースティ・マッコールの「ニューヨークの夢」とプリテンダーズの「2000 Miles」といった雪景色を想起させるロマンチックな悲しい名曲が2つ収録されている。さらには、マシュー・スウィートとバズ・オブ・デライトの「Christmas」や、クリス・ステイミー・グループの「Christmas Time」のような華やかでキュートな楽曲、ガールフレンドを狙うサンタへの嫉妬を歌ったゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツの「Santas Beard」などのコメディふうの楽曲もある。デヴィッド・ボウイとビング・クロスビーが異色の共演を果たした伝説的な「Peace On Earth/Little Drummer Boy」を聴きながら、ふたりの色褪せない魅力を体感してほしい。あと、キャプテン・センシブルのマイナーな1984年のUKヒット曲「One Christmas Catalogue」を聴きながらの寝落ちには要注意。シンセロックを連想させる壮大な名曲で、良くも悪くもクリスマスを通じて年月の流れを感じさせてくれるあらゆる方法が描かれている。

19位 シーロー・グリーン『Cee Los Magic Moment』(2012年)

音楽オーディション番組『ザ・ヴォイス』が火付け役となってアメリカが愛するファンクレジェンドとなった、笑顔が目印のシーロー・グリーン。そんな彼の愛すべき『Cee Los Magic Moment』は、難しいことを考えずに楽しめるアルバムだ。同作でシーローは、本来はキリスト教の教会一致運動的意味を持つ楽曲を変えている。クリスティーナ・アギレラがジャジーな「Baby, Its Cold Outside」でスウィングするなか、「ベイビー外は危険だ/タクシーだって駐まってくれない」というフレーズでシーローは都会的なリアリズムを醸し出している。ザ・マペッツと共演した「All I Need Is Love」には、ヒップホップ・ソウルふうにしたセサミストリートの名曲「Manamana」が挿入されているし、超スタイリッシュな「Merry, Christmas Baby」では、ロッド・スチュアートとルイジアナ州ニューオーリンズ出身のトロンボーン奏者、トローンボーン・ショーティとの共演を果たした。「Mary, Did You Know?」では神聖なBメロのソロをいとも簡単にこなし、宗教曲ではないが、ジョニ・ミッチェルのお馴染みの名曲「River」のさらに感動的なバージョンも披露している。シーローとサンタの共通点は、大きなお腹だけじゃない。シーローは、みんなに何か素敵なプレゼントを用意しているんだ。



18位 シー&ヒム『A She & Him Christmas』(2011年)

ちょっとダークなピクシーガールズドリームのないクリスマスなんて想像できない。ズーイー・デシャネルとM・ウォードは、クリスマスの楽しいムードに妖精の要素をちょうどいい具合に振りかけてくれる。シー&ヒムのほかの作品同様、『A She & Him Christmas』にはストレートなエレガンスがある。ウォードの豊かなギター、ピアノ、あるいはウクレレのサウンドと、デシャネルのレトロでメランコリックな歌声(伝説的スタジオドラマーのジム・ケルトナーがサポートで2曲参加している)。ビーチ・ボーイズの「クリスマス・デイ」のカバーは鐘の響きのように澄んでいて、新雪を照らす陽射しのようだ。「ブルー・クリスマス」を歌うデシャネルはカントリーモード全開だし、「Ill Be Home For Christmas」の歌声は、長引く季節性情動障害に悩む、アンドリューズ・シスターズ(訳注:1930年代から1960年代に活躍したアメリカの3人姉妹によるコーラスグループ)を想起させる。もちろん、いい意味で。



17位 『Christmas on Death Row』(1996年)

シュグ・ナイト時代のデス・ロウ・レコードの影響力がピークに達していた頃にレーベルのメンバーが集まって制作したコンピレーションアルバム(レコーディングの前年にレーベルを去ったドクター・ドレーは不参加)。意外にも『Christmas on Death Row』では、ギャングスタ・ラップ特有の腹黒さは控えめで、よりスピリチュアルな高揚感を感じさせるストレートな作品だ(ささやくように歌うDanny Boyの「Peaceful Christmas」をチェック)。6 Feet DeepやGuessなどのグループは、定番クリスマス・ソングのR&Bバージョンを真面目にカバーしている。とは言っても、ザ・ドッグ・パウンドの「I Wish」は2パックふうの軽快なメッセージソングだし、スヌープ・ドッグが参加している唯一の楽曲で「クリスマスの初めの日、地元のダチが袋いっぱいの瞬間接着剤をくれた/ゆっくり吸えよって」というフレーズがある「Santa Claus Goes Straight to the Ghetto」は、歴史に名を残す名曲だ。



16位 カーペンターズ『クリスマス・コレクション』(1984年)

1978年発売のカーペンターズ初のクリスマス・アルバム、『クリスマス・ポートレイト』は百万部以上の売り上げを達成した。それ以来、クリスマスプレゼントは新車のボルボ! みたいな光景が当たり前の富裕層が暮らす郊外では、アン・マレーの『Anne Murrays Christmas Album』と互角に闘ってきた。1984年版の『クリスマス・コレクション』は2枚組に拡大され、何となく恐ろしい陽気さとともに過度の感傷主義が吹雪のように襲ってくる。クリスマスはカレン・カーペンターが歌にするためにあるように聴こえてくるのだ。カレンのしっとりとした歌声は、トナカイが描かれたセーターみたいに「Sleigh Ride」と「What Are You Doing New Years Eve」に合う。リチャードのソフトロック寄りの音楽制作方法と粘っこいオーケストラアレンジも悪くない。1940年代の浮かれ騒ぎを誇張した、暖房が効きすぎの70年代のリビングルームを彷彿とさせる。




15位 ジョニー・キャッシュ『Christmas With Johnny Cash』(2003年)

ジョニー・キャッシュはキャリアを通じてクリスマス・アルバムのレコーディングに取り組み続けた。2003年にキャッシュが他界すると、ソニー・ミュージックエンタテイメント(SME)の子会社のひとつであるレガシー・レコーディングは、1962年から1980年にかけての至極の作品を厳選して発売。キャッシュは「神の神子は今宵しも」や「天には栄え」などの楽曲には深みを与える一方、贖罪的なパワーを持つ楽曲には無骨な誠実さを添えている。キャッシュの最高傑作はどれも胸が張り裂けるようなストレートな歌詞/詩であり、愛、コミュニティ、チャリティにまつわる教訓を与えてくれる。甘やかされたアメリカ国民は、ひとり残らず「Christmas as We Knew It」を聴いてほしい。アメリカ南部のアーカンソー州の田舎に暮らすキャッシュの貧しい家族が手に入れられるものではなく、与えられるものに感謝している歌なのだ。



14位 『A Very Special Christmas』(1987年)

レコード業界の巨匠、ジミー・アイオヴィンの呼びかけによって実現した、1987年のスペシャルオリンピックス(訳注:知的障害のある人々にスポーツのトレーニングをする機会と競技会を提供する国際的活動)のために制作されたコンピレーションアルバム。R&Bのスウィング感が見事なU2の「Christmas Baby, Please Come Home」のカバー、ブルース・スプリングスティーンのならではのリラックス感あふれるしゃがれ声が魅力のライヴ版「Merry Christmas Baby」、プリテンダーズによる感動的な「Have Yourself a Merry Little Christmas」のカバー、ジョン・メレンキャンプによるロックな「I Saw Mommy Kissing Santa Claus」など、1980年代屈指のクリスマス・ソングを集めたアイオヴィンの影響力をここで改めて語る必要はないだろう。『A Very Special Christmas』のハイライトは、Run-DMCの名曲「Christmas in Hollis」だ。シンガーソングライターのクラレンス・カーターの「Back Door Santa」をサンプリングし、さらには誰もが見習いたいくらいかっこいい「マイクを持つ俺の名前はD.M.C./雪だるまみたいいイケてて、クールだ」という声明文がフィーチャーされている。



13位 フランク・シナトラ『A Jolly Christmas From Frank Sinatra』(1957年)

エルヴィス・プレスリーの大ヒットクリスマス・アルバムと同じ1957年に発売されたフランク・シナトラ初のクリスマス・アルバムは、プレスリーの控えめながらも過激な勢いをはらんだアルバムと比較すると、保守的でパーソナルな作品だ。アイゼンハワー大統領時代のアメリカの真髄がきれいにラッピングされ、赤と白のリボンをかけられているような作品なのだ。同作は、シナトラの全盛期にレコーディングされた4作目のアルバムで、シルクハットのつばに全世界をのせながらも楽々と歌っているように聴こえる。時々アレンジやバックコーラスが気になるけど、「クリスマスをわが家で」や「Have Yourself A Merry Little Christmas」などのノスタルジックな楽曲を歌うシナトラは、クリスマスの魔法をかけているようだ。



12位 ザ・ベンチャーズ『ザ・ベンチャーズ・クリスマス・アルバム』(1965年)

サーフ・ミュージックとロックを組み合わせたクリスマス・ソングをジングル・ベルやそのほかの装飾物で唐突にバージョンアップさせた『ザ・ベンチャーズ・クリスマス・アルバム』は、言うならばビーチでの列車事故のような作品。でも、実際にはかなりいいアルバムだ。ザ・ベンチャーズは、クレバーで豊かなロックンロールを通じて誰もが予想できる安心のプレイリストをつくってくれた。ホットな「赤鼻のトナカイ」のカバーにはじまり、ビートルズのことをほのめかした「I Feel Fine」、テキーラのワンショットが効いた「フロスティ・ザ・スノウマン」、オリジナルバージョンの「Walk Dont Run」、さらには「Sleigh Bells」へと続く。ザ・ベンチャーズが開発したスタイルと無造作な威厳は永遠だ。悲しげに叫ぶ「Sleigh Bells」には、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのような祝福された美しさがある。



11位 ウィリー・ネルソン『Pretty Paper』(1979年)

まだウィリー・ネルソンがシンガーソングライター志望だった1963年、ネルソンは優しくもアイロニーに満ちた「Pretty Paper」を作曲し、ロイ・オービソンによって大ヒットした。それから16年後、ネルソン本人による「Pretty Paper」は、ネルソン初の伝統的なクリスマス・ミュージック・アルバムの前身となった。名曲をカバーした1978年の名盤『スターダスト』同様、『Pretty Paper』を支えているのはネルソンのゆったりとした声とさらに心地よさと洗練さを増した優しいギターワークだ。親戚が帰ったあと、やっとお気に入りの椅子に座ってオールド・オーバーホルトのウイスキーをちびちびやりながら無音でアメフトの試合を観る時にかけたい1枚だ。アルバムの最後を飾るインストゥルメンタル版「Christmas Blues」を聴きながら寝落ちしても、大晦日まで眠り続けることができればラッキーだ。




10位 エラ・フィッツジェラルド『スウィンギング・クリスマス』(1960)

アルバム『スウィンギング・クリスマス』の最初を飾る「ジングル・ベル」がかかるやいなや、ジャズのファーストレディことエラ・フィッツジェラルドは、ソリを引く馬がかわいそうになるくらい次々と雪山を越えていくような身軽さでスウィングする。リスナーまで爽快な気分にしてくれるこの名盤は、1960年の夏に作曲家フランク・デ・ヴォール(代表作のひとつにドラマ『ゆかいなブレディー家』のテーマがある)が指揮するオーケストラとともにレコーディングされた。「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow」や「Winter Wonderland」などでは、クリスマスという弓を星空に向かって放つように母音を伸ばして歌い、最高に気分がいい時は歌詞に「!」がつくところを勢いよく発音している。



9位 『Soul Christmas』(1968年)

アトランティック・レコード所属のR&B界の一流アーティストが集結した1968年発売の名盤。ロックの偉大なクリスマス・アルバムが新しい方向性で遊びながらも伝統に忠実であり続けるなか、『Soul Christmas』は遊びと伝統のバランスを完璧に体現している。オーティス・レディングの疲労感漂うスローな「ホワイト・クリスマス」と、自信たっぷりの南部ふう「Merry Christmas Baby」が収録されているかと思うと、カーラ・トーマスはお馴染みのヒット曲「Gee Whiz」を暖炉がぴったりの印象的な「Gee Whiz, Its Christmas」にアレンジしている。そして忘れてはいけないのが「俺はサンタじゃない/だってサンタは1年に1回しか来ないから/ディア、俺は君が呼べばいつでもプレゼントを持って駆けつけるよ」とクラレンス・カーターが歌う名曲「Back Door Santa」だ。



8位 ビング・クロスビー『ホワイト・クリスマス』(1986年)

クリスマスにイエス・キリストが欠かせないのと同じように、クリスマス・ミュージックといえばビング・クロスビーだ。1941年発売のアイルランド系アメリカ人のクロスビーによる、ユダヤ人作曲家アーヴィング・バーリンの夢見心地なバラード「ホワイト・クリスマス」のカバーは5000万枚ほどの売上を記録し、スティッフ・リトル・フィンガーズからニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックにいたるまで、すべてのアーティストがカバーするほどだ。リリースからおよそ70年が経ったいまも、ヴォーカリストとしてのクロスビーのスタイルは、エレガントなリラックス感と独特なセンチメンタリティのお手本であり続けている。1945年に発売されたクロスビーのアルバム『Merry Christmas』は1940〜50年代にかけてのレパートリーを拡大した結果、1986年に『ホワイト・クリスマス』として再発売されたのだ。同作には賛美歌「Faith of Our Fathers」のようにアイルランド系カトリックらしい楽曲や、軽快な「Christmas in Killarney」もあれば、ハワイアンな「Mele Kalikimaka」(アンドリューズ・シスターズと楽しそうに共演している3曲のひとつ)も収録されている。でも当然ながら、最高傑作はクロスビーがしっとりとしたソロヴォーカルで見事に自分のものにしている「Silver Bells」、もしくは「クリスマスをわが家で」だ。これこそが優れた歌唱力というもの。気に入らないなら、ほかをあたってほしい。



7位 ビーチ・ボーイズ『クリスマス・アルバム』(1964年)

初期のビーチ・ボーイズには、足の健康に関する認知度を上げるためのイベント、ナショナル・ポディアトリスト・レコグニション・デーくらいマイナーなイベントもパーティに変えてしまう力がある。要するに、間違いなくクリスマスを盛り上げてくれるのだ。1964年の『クリスマス・アルバム』には、セーター姿のメンバーの笑顔があふれている。同作に収録されている6つのオリジナル曲のなかでも最高なのは、ダークなのに笑える「Santas Beard」だ。マイク・ラヴが5歳の弟を連れてサンタに会いにいくのだが、その子がコットン製のサンタの白いヒゲを引っ張り、サンタの正体を知ってがっかりする、という内容だ。そのほかには、明るい「Little Saint Nick」、リライトバージョンの「Little Deuce Coupe」、ジャジーな「フロスティ・ザ・スノウマン」」など、実験的で遊び心ある楽曲が収録されている。オーケストラバージョンの「ホワイト・クリスマス」と「ブルー・クリスマス」ではブライアン・ウィルソンが感動的なヴォーカルを披露しており、名盤『ペット・サウンズ』の到来を予感させる。



6位 ルイ・アームストロング&フレンズ『The Best of Christmas Collection』(2003年)

想像する限り最高のクリスマス・パーティの主催者であるルイ・アームストロングがメル・トーメ、ダイナ・ワシントン、デューク・エリントン、レナ・ホーンら友人たちとレコーディングした楽曲の最新コンピレーションアルバムは、リラックス感漂う陽気さに満ちている。クリスマス・イブに長旅のあとでイルミネーションが輝く実家に帰ってくるように、どの曲もどこかで聴いたことのある懐かしいものばかりだ。招かれた友人たちのなかでも最高の栄誉にあずかるのは、スタイリッシュな「The Christmas Song」を歌うメル・トーメ。でも「Cool Yule」、「Christmas in New Orleans」、「Zat You, Santa Claus?」などでは、主役はサッチモだ。アルバムのハイライトはアームストロングが「みんな午前3時を過ぎても起きてるつもりだ/ライトをつけたクリスマスツリーみたいに」とうなるように歌う陽気な「Christmas Night in Harlem」。歌い終わったあとは、パーティの主役にふさわしく、ウィンクしながらとびきりの笑顔を向けてくれる。

5位 『A Motown Christmas』(1973年)

「ほんとにママがサンタにキスしてるのを見たんだ/パパに言いつけちゃうぞ!」1970年代の可愛すぎるマイケル・ジャクソンが信じようとしない兄弟たちに向かって言うこのセリフは、クリスマス・ポップミュージック史上もっともキュートな瞬間を描いている。1973年の『A Motown Christmas』のほかの収録曲だってかなり最高だ。モータウンはミラクルズ、スプリームス、ジャクソンズ、テンプテーションズ、マーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダーらの名曲を厳選し、ミラクルズのグルーヴィーな「ジングル・ベル」、ワンダーの美しい「What Christmas Means to Me」、さらには教育的見地からも優れたスプリームスの「Childrens Christmas Song」(日曜日の合唱の先生に扮したダイアナ・ロスが子供合唱団を指揮している)など、数多くのハイライトが満載だ。1999年にSpotifyから再発売されたバージョンは、ベトナム戦争時代の哀しみを描いたカントリーふうの、マーヴィン・ゲイの「I Want to Come Home for Christmas」で終わっており、モータウンの人種差別撤廃精神に見事に体現している。




4位『A Charlie Brown Christmas』(1965年)

クールでリラックス感あふれるウエスト・コースト・ジャズ——カリフォルニアの贅沢で気ままな生活の広告塔として誕生した音楽だ。そんな音楽が、雪が降るなか親友のライナスに向かってクリスマスのせいで気が滅入ると文句を言っている、実存主義的な問題で頭がいっぱいのチャーリー・ブラウンと関連づけられるなんて、結構皮肉だ。『A Charlie Brown Christmas』に収録されている「Skating」や「Christmas Is Coming」などでは、ビンス・ガラルディ・トリオが明るい予感と冬らしい内省の完璧なパランスを体現している。アメリカ音楽のなかでももっとも視覚的な作品のひとつだ。『ピーナッツ』の生みの親チャールズ・M・シュルツは「キャラクターたちが歩いたり、ちょっと飛び跳ねたりするのが音で表現されている」とコメントした。



3位 ジェームス・ブラウン『ファンキー・クリスマス』(1995年)

2006年12月25日にこの世を去ったジェームス・ブラウンは、創作欲がピークを迎えていた時期にクリスマスをテーマにしたアルバムを3枚レコーディングした。ひとつは1966年の『James Brown Sings Christmas Songs』、もうひとつは1968年の『A Soulful Christmas』、3作目が1970年の『Hey America Its Christmas』だ。各アルバムから厳選された名曲が『ファンキー・クリスマス』という素晴らしい作品に納められている。1960年代、ブラウンは自らのファンクの改革者としてのイメージを通じてロックを再解釈しようとしていた。だから、陽気なホリデーシーズンにいくらかのソウルパワーを込めたとしても不思議ではない。「Merry Christmas Baby」や「Please Come Home for Christmas」などのR&Bバラードもあれば、「Go Power at Christmas Time」や「Soulful Christmas」などのグルーヴ感満載の楽曲、「Santa Claus Goes to the Ghetto」や「Lets Unite the Whole World at Christmas」のように社会的意識を歌ったリアルな楽曲もある。サンタと同じように、ミスター・ダイナマイトも世界中の少年少女のために空になることのないプレゼントの袋を用意していたのだ。タイトルが印象的な1970年発売の『Hey America Its Christmas』では、「白でも黒でも青でも緑でも/見たことのない人でも/一緒になろう!」と力強く訴えかけている。



2位 エルヴィス・プレスリー『エルヴィス・クリスマス・アルバム』(1957年)

エルヴィス・プレスリーが1950年代のアメリカにおいていかに革新的だったか知りたいと思わないか? 「ホワイト・クリスマス」の作曲家アーヴィング・バーリンは、1957年に発表されたエルヴィスのバージョンを聴いて憤慨したあまり、ラジオでの放送を禁止しようとした。でも、バーリンごめん。ラジオ放送で禁止されるどころか、『エルヴィス・クリスマス・アルバム』は1カ月にわたってビルボードチャート1位に君臨し続け、さまざまなバージョンとともに2000万枚近い売上を記録した。「Santa Bring My Baby Back to Me」に代表されるように、同作は軽快なロックと「ああベツレヘムよ」などの昔ながらの人気作品に敬意を示したバージョンの見事な融合であり、エルヴィスのルーツであるカントリーやゴスペルにも触れている(「Take My Hand, Precious Lord」)。もちろん、名曲は「クリスマス・ブルー」だ。でも、エルヴィスは無垢なイメージのどの曲にもちょっとした含みを持たせつつ、バッドボーイとしてのイメージをわずかながらも浄化し、栗を焼くようにみんなのハートを温められることを証明している。



1位 フィル・スペクター『クリスマス・ギフト・フォー・ユー・フロム・フィル・スペクター』(1963年)

音楽史上最高のクリスマス・レコードであることは言うまでもないけど、『クリスマス・ギフト・フォー・ユー・フロム・フィル・スペクター』は正真正銘のポップ・ミュージックの名盤でもある(ローリングストーン誌は、グレイテスト・アルバム500で同作を142位にランクインさせている)。スペクターが開発した”ウォール・オブ・サウンド(音の壁)”という音楽制作方法がドラマに壮大さを加える一方、フィルズ・レコードのクルーは烈火のようなロックでホリデーシーズンのヒット曲パレードに華やぎを添えている。「サンタが街にやってくる」でクリスタルズが煙突の下でパーティに興じるなか、ロニー・スペクターは「フロスティ・ザ・スノウマン」を熱気で溶かして表庭の水たまりにしてしまう。クラシックなブリル・ビルディングのオリジナル曲「Christmas Baby, Please Come Home」でダーレン・ラヴは全身全霊で壮大かつ悲しいロマンチックバラードを歌い上げては、冬のおとぎの国をティーンの不毛地帯に変えている。ブライアン・ウィルソンがいちばんのお気に入りのアルバムだと言ったのにもうなずける。