経営危機に陥ったシトロエンから生まれた起死回生のヒット作 シトロエン BX 1

窮状から生まれた傑作

 近代シトロエン最大のヒット作となったBXについて語るには、時計の針をデビュー8年前、1974年まで戻さねばなるまい。この時期、経営危機に陥ったシトロエンは、同じフランスのプジョー傘下に収まり「PSAグループ」を結成するに至った。一方、70年に発表されたシトロエンの中核レンジGS系は、たとえ長寿が社是とされてきた同社にあっても、80年代を見据えては旧態化が否めず、しかもライバルに比べて非力と評されたことで、上級かつ代替わりの対象となる新型車の開発が急務となっていた。

 そこで登場したのがBXである。既にプジョー傘下のもと発売されていた小型車、LNやヴィザ(ともにプジョー104ベース)と同じく、プジョー305のコンポーネンツを多用していたが、LN/ヴィザと最も違うのは金属バネの代わりにシトロエン伝統のハイドロニューマチックを採用したこと。

 サスペンションは305と基本を同じにしたもので、前:マクファーソンストラット/後:トレーリングアームの4輪独立懸架。ストラットとハイドロニューマチックの組み合わせはシトロエンでも初となった。

 そして、フロントに横置きされ前輪を駆動するエンジンも、プジョー由来のものとされた。当初は1.4Lおよび1.6Lの直列4気筒のキャブレター付きガソリンエンジンが用意されたが、84年には1.9L版が登場。さらにその後、時流に合わせた燃料噴射化も行われたうえに、87年には最高性能版としてDOHC16バルブ版も追加された。また日本への導入はなかったが、欧州ではディーゼルも設定され、販売の主流となっていた。

 またボディバリエーションは、デビュー当初こそ5ドアハッチバックのみだったが、85年に「ブレーク」と呼ばれるワゴンが加わることになる。そしてデザインワークは、イタリアのカロッツェリア、ベルトーネ社に委託された。指揮を執ったのは、当時ベルトーネに在籍していたスーパーカーデザインの大家、マルチェッロ・ガンディーニその人であった。ランボルギーニ・ミウラやカウンタック、あるいはランチアHFストラトスを手掛けたことでも知られる彼にとって、BXはベルトーネ時代最後の作品となった。

 82年パリ・サロンにて発表されたBXは、その商品力の高さから世界中で大ヒット。84年から正規導入された日本でも、マツダ系ユーノス店が販売網に加わったこともあり、シトロエン史上最高の商業的成功を収めた。そしてその人気を保ったまま、事実上の後継車となったエグザンティアにあとを譲るかたちで、93年に惜しまれつつ生産を終えたのである。

ライト

フロント

トップ

エンブレム

エンブレム

ピラー

トランクルーム

ホイール

アート的なレンズカットのヘッドライトやシャープな造形のノーズなど、マルチェッロ・ガンディーニが得意とした様式美を実用車に持ち込んだディテールは極めて魅力的。特にこの前期モデルでは、美しさがダイレクトに伝わってくる。またCピラーに設けられたウインドーやサンルーフなど、ボディとコントラストをなすガラス使いも秀逸。


掲載:ハチマルヒーロー 2015年2月号 Vol.28(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)