いよいよクライマックスに突入してきたNHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)。1964年開催の東京オリンピックに貢献した東京都知事・東龍太郎役を演じている松重豊を直撃。大河ドラマは、時代劇『毛利元就』(97)、『北条時宗』(01)、『八重の桜』(13)に出演経験がある松重は、今回の『いだてん』の魅力をどう捉えたのか?

阿部サダヲ演じる田畑政治の盟友であった東だが、田畑の失脚により、後ろめたさも感じているようだ。そんな中、田畑を慕う岩田幸彰(松坂桃李)、松澤一鶴(皆川猿時)、森西栄一(角田晃広)たちは、田畑とともに“裏のオリンピック組織委員会”を発足。今後の展開も気になるところだ。

いだてん

『いだてん~東京オリムピック噺~』東京都知事・東龍太郎役を演じている松重豊

――松重さんは、かなりキャラクターが濃い主人公・田畑政治の魅力をどう捉えましたか?

あの時代、すなわち戦後の日本を動かしてきた人たちは、ある意味、策士的なところがあり、どこか魅力がありますよね。まーちゃん(田畑政治)にいたってもそうで、日本社会をかき回してくれるような強い存在だったんだろうなと。

――政治的な駆け引きも非常におもしろいです。田畑は川島との闘いに敗れましたが、それでも彼を慕う人たちは、田畑についていこうとします。川島に背くわけにはいかない東も辛い立場に置かれますね。

東は政治的な圧力で板挟みになっています。東としては、まーちゃんの言う理想論よりも、現実的なことを考えようという気持ちがあったと思いますし、そこらへんの温度差を感じるのは仕方がなかったのかなと。『いだてん』では、政治的状況がリアルに描かれていて、いろいろな罠があるんだなと感じましたし、人間ドラマとしてリアルだなと思いました。

ただ、まーちゃんとすれ違いになっても、結果的には現実が彼の言ったとおりになっていくし、東も「まーちゃんの言うとおりだったな」と、あとになって思うんです。ただあの頃は、川島さんとの関係性もあり、いろんな思惑があったので、その調整ができなかったのかなと。

――『いだてん』に出演されてみて、改めて感じた大河ドラマの魅力を教えてください。

大河ドラマというと、入り時間が早くて、かつらをつけて、衣装を着て、肉体的にもある程度負荷を持って臨むというイメージでした。やはり歴史上の人物になることなので。でも、今回はそれがなくて、宮藤(官九郎)さんの脚本が、ホームドラマのような会話のテンポ感があるし、コメディの要素もあったので面白かったです。脚本をもらった段階で声を上げて笑ったのも、今までの大河ではなかったことですし。そういう意味では、すごく肩の力を抜いて取り組めました。

――松重さんにとって、大河ドラマはどういう位置づけのものでしょうか?

なんだろう。朝ドラとも違うし、やはり歴史のある景色をずっと見せていくもので。それが明治維新なのか、関ケ原なのか、という違いはありますが。ただ、『いだてん』の時代は、第二次世界大戦を経て、オリンピックを開くことになりましたし、戦争を背負っているというか。そして50数年経ってから、また東京でやることになり、歴史は今につながっているんだなと感じました。そこの立脚点をしっかりともって、大河ドラマならではのお芝居をしたいと思って演じてきました。ただ、今回は、本当に楽しかったです。やはり宮藤さんの脚本の面白さですね。

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■プロフィール
松重豊(まつしげ・ゆたか)
1963年生まれ、福岡県出身の俳優。蜷川スタジオを経て、1992年、黒沢清監督『地獄の警備員』で映画デビュー。以降、舞台、ドラマ、映画と幅広く活躍。『しゃべれども しゃべれども』(07)で第62回毎日映画コンクール男優助演賞、『ディア・ドクター』(09)で第31回ヨコハマ映画祭助演男優賞を受賞。テレビドラマでは、「孤独のグルメ」シリーズ(12~、テレビ東京)、「アンナチュラル」(18、TBS)、「パーフェクトワールド」(19、フジテレビ)、連続ドラマW「悪党~加害者追跡調査~」(19、WOWOW)などに出演

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