住まい選びに選択肢、他業種から参入した「無印良品」が売れる理由

他業種から参入するには多くのハードルが存在すると言われる住宅業界。ところが2004年から戸建て住宅を販売する無印良品は、生活雑貨をメインに販売する他業種からの参入にもかかわらず、住宅業界において着実にその存在感を増しています。住まいを選ぶ側にとっては、選択肢が一つ増えたともいえる状況です。そこで、数々のハードルを超えて無印良品の家が売れる理由について、住宅産業にまつわるさまざまなテーマを調査、分析、研究する専門調査会社株式会社 住宅産業研究所 TACT編集部 布施 哲朗さんに伺いました。

雑貨と共通するシンプルで普遍的な空気感で無印良品ファンをキャッチ

無印良品といえば、シンプルで飽きのこない衣料や生活雑貨を手がけ、今やライフスタイルを象徴するブランドとして定着しています。この「無印良品」を手掛ける良品計画は、2004年から戸建て住宅を販売しています。手がけるのは、「木の家」「窓の家」「縦の家」、そして2019年9月に発売開始となった「陽の家」の4つのシリーズです。

「木の家」は、大きな吹き抜けでゆるやかにつながった、一つの空間を共有する家。二階建ての住まいのどこにいても家族の気配が感じられます。「窓の家」は、好きな位置に好きな大きさの窓を開けられる家。壁と窓が一体化し、絵画のように切り取った風景が暮らしを彩ります。「縦の家」は、都市部の小さな敷地を活かす工夫が凝らされた家。6つの部屋を組み合わせて、空間を縦に広げます。最新の「陽の家」は、最近注目を集めている平家の木造住宅。大きな開口部が庭との一体感を演出します。

このように無印良品が販売する家は、シリーズごとにそれぞれコンセプトは違うものの、どれもが無印良品の衣類や雑貨類と同じ空気感を放っているのが特徴です。どのシリーズも無彩色やナチュラルカラーをベースに、デザインはあくまでもシンプルを貫きながら、住まいとしての機能性には十分な配慮が行き届いています。無印良品の雑貨に宿る、20年経っても30年経っても古びることがない普遍性を持っているのです。

布施さんは、無印良品の家が住宅業界で生き残っている理由について、「無印良品には、家具や雑貨を揃えているファンが確実にいます。そういう人たちは、無印良品が家を売るとなったら一度は見てみようとなりますし、見ればほぼ100%気にいります。同じコンセプトで作っているんですから当然ですね。そういうファン層が購入しているんだと思います」と言います。つまり、1980年に誕生して以来、ライフスタイルブランドとして厚い信頼を得ている無印良品が、住まい作りにもそのコンセプトを貫き通したことが成功の秘訣の1つというわけです。

無印良品製品が似合う空間づくりを実現したパートナーの存在

布施さんは、無印良品が住宅業界で存在感を示しているもう一つの理由として「パートナー選びの成功」を挙げます。

無印良品の家の最大の特徴は、スケルトンインフィルという考え方にあります。これは、スケルトン、つまり柱や梁、床などの構造躯体と、インフィル、つまり住まいの間取りや内装を分けて考えるもの。無印良品の家はスケルトン部分を規格品で造り、インフィル部分は住む人が暮らしに合わせて選べるようになっています。

このスケルトンインフィルを実現させているのが、SE構法です。これは、日本の在来工法では実現できなかった木造住宅に大空間を造る構法の一つ。無印良品の家を提供する株式会社MUJI HOUSEに、無印良品とともに出資しているハウスメーカー株式会社エヌ・シー・エヌが独自で開発した構法です。エヌ・シー・エヌの協力によって無印良品の家はすべてSE構法を採用し、フレキシブルな大空間のあるスケルトン(構造躯体)を持つことができるようになったのです。

また、無印良品の家がファンの気持ちを捉える理由に、デザインがあります。このデザインのクオリティを維持しているのがプロダクトハウスという考え方です。

プロダクトハウスとは、設計やデザインなどがあらかじめ決められている企画型住宅のこと。一般的な注文住宅は間取りやデザインを自由に設計できるのに対し、外観のデザインや内装のコンセプト、設備などもすべて決まっているので、全国どこで建てても同じ品質の家が購入できます。土地の広さや向きなどに合わせて建物を規格品から選び、間取りについては、壁で仕切るなどある程度は自由に選択できるようになっています。基本的には同じ仕様で造られた規格品なので、自分たちが選んだ大きさの住まいならいくらと価格もすぐにわかります。

なぜ無印良品がプロダクトハウスを展開しているかと言えば、雑貨と同じコンセプトで住まいを造るためと言えます。4つのシリーズは、それぞれ有名建築家やデザイナーとコラボレートしていますが、すべてSE構法を採用。外観などのスケルトン部分は「無印良品の家」として普遍的で完成されたデザインが施されているのです。

無印良品の家は、外観から内装については完成されたデザインで仕上げ、インフィル部分は住む人の自由にできることが特徴です。大空間を仕切る際には、壁を建てることもできますが、無印良品の製品、例えば収納用品を使って仕切ることも選択肢の一つに入っています。デザインや機能性は無印良品クオリティを保ちつつ、自分たちの暮らしに合わせたカスタマイズが可能というわけです。

布施さん曰く、「株式会社エヌ・シー・エヌと組んでSE構法を採用できたことも無印良品の家が売れている理由の1つといえます。無印良品らしい普遍的なデザインが合う空間が確保できたのですから」とのこと。他業種から住宅業界に参入して成功するには、パートナーの存在も大切なようです。

他業種とハウスメーカーのコラボが増える? 今後の住宅業界に予想される変化

他業種から住宅業界へ参入した成功例として布施さんがあげるのは、「パナソニックホームズとトヨタホームズが一番わかりやすいと思います。パナソニックホームズは、家電業界から住宅へ参入した企業。トヨタホームズはトヨタ自動車の中に住宅事業を作って、そこから独立した形となりました。他業種から参入したケースでまず大きいのがこの2社ですね」ということです。

とはいえ、この2社はもともとが大企業だけあって住宅を建てるためのノウハウを仕入れたり、ノウハウを持っている人材を採用したりすることは事業を立ち上げた時点で想定内のことでしょう。結果として住宅産業で成功することもさほど難しいことではなかったと言えます。

そういう点では、無印良品が地道とはいえ着実に売り上げを伸ばしているのは、ブランドイメージをしっかり守った住宅造りを貫いたことと、それを実現するためのパートナー選びができたこととはいえ、珍しい例と言えそうです。そこで、そういった例についても布施さんに訊ねてみました。

「住まいは、前提としてノウハウがないと造れないものです。ですから、まったくの異業種から参入して成功するのは難しいと思います。むしろ住宅メーカーがインテリア事業を始めたりする方が現実的。木造住宅を作るメーカーであれば、木材はあるし、木の扱い方もわかるから家具が造れる。そうしたら例えば、2000万円の住宅を建てると、200万円分の家具をサービスしますよというようなことができます。これは実質的には1800万円の家と200万円分の家具ということなんですけど、売り方としてはサービスという形をとる。住宅メーカーもただ待っていてはお客さんは来ないので、こういう集客の仕方は出てくると思います」と言います。

もう一つ可能性があるのが、コラボレーションです。「インテリアショップであったり、アパレルショップであったりが暮らしのイメージや内装を提案して、ハウスメーカーが商品化していく。こういうところは増えつつあります」ということです。

実際に、アパレル業界からはユナイテッドアローズが2018年から不動産業と中古マンションのリノベーションを扱うグローバルベイス株式会社が展開する「MyRENO マイリノ」と協業をスタート。「マイリノ」は物件探しから契約、設計、施工を行い、ユナイテッドアローズが内装のデザインやコンセプトに合わせた家具製作までを担っています。無印良品とはまた違ったテイストのスタイルの住まいがオーダーできるというわけです。他にも株式会社ニトリホールディングスが中古物件の買取再販の大手である株式会社カチタスと組んで、カチタスがリフォームした住宅にニトリの家具をコーディネートし、まとめて売却するといったサービスも始まっています。内装のデザインや家具の統一感にこだわるのであれば、こういったコラボレーションを利用するのもおすすめです。

家を建てるには、ハウスメーカー選びも重要なポイントです。特にこれからの住まいは、一度建てたものは長く使おうという傾向にあり、何世代かに渡って受け継いでいくことも考えられます。次の代にも伝えたくなるような家選びをするためにも我が家にあったハウスメーカーやコラボレーションのスタイルを選びたいものです。

執筆者:ARUHIマガジン編集部