ユアン・マクレガー、映画で演じたキャラクター・ランキング

最新主演作『ドクター・スリープ』(『シャイニング』の続編)で、ユアン・マクレガーは大人になったダニー・トランスを演じている。いかれたカウボーイからイギー・ポップのようなグラム・ロッカー、ジェダイ・マスターからジーザスまで、幅広い役柄を演じてきたスコットランドの映画スター、ユアン・マクレガー。歴史に残る名演技から、いまいち作品まで出演作をランキング。

四半世紀の間に、ユアン・マクレガーは正真正銘の映画スターになったが、彼の世代だけでなく他の世代の中でも一番過小評価された俳優であることを自分の実力で証明している。マクレガーの演技の幅は広いが、彼の一貫した芸は抑制にある。マクレガーは変幻自在に役を演じることもなければ、大げさに演技をすることもない。好奇心に満ちた視線や穏やかな話し方、そして並外れたあらゆる表現方法で自分の映るわずかなフレームを利用しているだけだ。基本的には常に自分自身として存在している。それが真の映画スターの証だ。それでも、長年にわたって、マクレガーは、問題の多いヘロイン常習者からスキャンダルを追いかけるジャーナリスト、いかれたカウボーイからイギー・ポップをベースにしたグラム・ロッカー、ジェダイ・マスターからイエスまであらゆる役を演じてきた。すごい経歴である。

最新主演作『ドクター・スリープ』(『シャイニング』の続編)では、マクレガーは大人になったダニー・トランスを演じている。その公開を祝って、これまで彼が出演してきた映画での演技すべてを、最低なものから最高なものまでランキングにしてみた(いつものように、これは映画自体ではなく、演技のランキングだ。だから、『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』が上位にランクされていることで我々を怒鳴りつけないでほしい)。


56位 『氷の接吻』(1999)

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この最下位の演技を見てほしい。マクレガーが演じる諜報員は連続殺人犯であり、アマチュアの占星術師でもある美しい女性(アシュレイ・ジャッド)のとりこになり、全国各地へと彼女の後を追いかける。そしてその各地で、彼女は次々に男とベッドを共にしては殺人を犯していく。面白いことに、彼女が犠牲者の命を奪うたびに、マクレガーは本当に唖然としているように見えることだ。一方で、数年前に行方不明になった7歳の娘の幻覚に取りつかれている。ばかげていて、ひねり過ぎのヒッチコックまがいのプロットは、キャストがバカバカしく演じていたら、うまくいったかもしれない。だが、悲しいことに彼らはそれを真面目に演じている。そして、マクレガーは、かなり極端なことが要求された役に対して、彼お決まりの落ち込んでいるお人よしの演技に変化をつけたことから、この作品の中で一番感情移入ができない役になっていた。本作でマクレガーは完全に自分を見失っているかのようだ。

55位 『ホンモノの気持ち』(2018)

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何度も繰り返されてきたような退屈な内容のこのSF映画で、マクレガーが演じる役は、本物の感情を感じることができる人造人間を設計した優秀な科学者だ。その目的は、恋愛交際を大量生産すること。彼の美しい同僚(レア・セドゥ)は彼に想いを寄せる。ただ残念なことに、彼女もレプリカントだった。この2人はほぼずっと画面に映っているが、するべき役割が驚くほどにほとんど与えられていない。特に何も手に入れることがなく、伝えるべき興味深いことや感情移入することも何もない。はっきり言って、マクレガーはもがいているだけで映画が終わっている。これは、素晴らしい俳優を可能な限り最悪の方法で誤用してしまった教科書的な例だ。

54位 『彼が二度愛したS』(2008)

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この作品もまたくだらないエロチックスリラーもどきの映画で、いい人を演じるユアンが怪しげなキャラクターに引っかかってしまう(まさに、アクセントはニュージャージーのものであるかようだ)。彼は企業の会計士で、ヒュー・ジャックマン演じる口先巧みな弁護士と出会い、企業のお偉方がセックスを目的に匿名で出会いの場に集まる秘密のネットワークを紹介される。そこでもちろん、我らのユアンは謎のデート相手(ミシェル・ウィリアムズ)に恋をしてしまうが、もちろん彼女は行方不明になり、ジャックマンも本人が言ったとおりの人間ではなかった。本作品は『ファイト・クラブ』と『アイズ ワイド シャット』を足したようなものだが、馬鹿げたものになっている。そして、いつもは抑制された演技をするマクレガーは、とんでもなく大げさに意気地なしの役を演じた。

53位 『ブルー・ジュース』(1995)

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英国コーンウォールに住むサーファー(ショーン・パートウィー)は、大人へと成長する中で、溺愛する自由奔放なガールフレンドのキャサリン・ゼタ=ジョーンズに身を捧げるか、もしくは”ビッグ・ウェーブ”に乗るために今以上にサーフィンに時間をかけるべきか悩んでいる(キャサリン・ゼタ=ジョーンズを選ぶのが当然なはずだが)。この主人公の友人として厄介なことを引き起こすどうしようもない若者を演じるマクレガーは、たくさんの活力以外のことはほとんど何もその役にはもたらしていない。彼の演じる男はワイルドだが、ほとんど混乱の種をまいているだけだ。ただし、脇役として自らの人生の酷さを嘆くシーンは素晴らしい。この役は野暮ったくかつ単純すぎる映画の野暮ったく単純すぎる。同時期に作られたドラッグで腐った怠け者たちの群像コメディドラマ『トレインスポッティング』でのマクレガーの役とは全く異なったものだ(このリストの上位を参照)。

52位 『荒野はつらいよ ~アリゾナより愛をこめて~』(2014)


マクレガーにとってありがたいことに、TVドラマ『ファミリー・ガイ』のセス・マクファーレンが監督した場違いすぎるこの西部劇コメディに登場するのは約2秒。セリフはたったの1行だけだ。彼は、映画全編にわたって登場する大勢の有名人のカメオのひとりとして、群衆の中のあるカウボーイを演じている。スコットランド訛りに気づくかもしれないが、口ひげとカウボーイの身なりだけではかろうじて本人だと気づけるぐらいであるため、セレブのカメオ出演の本質を妨げている(ちなみに、「俺にはわからない…彼が笑っていたかどうか」というセリフは良かった)。このリンク先の1分24秒経過したところの映像を見てほしい。そして、彼が自分の品格を損なわずにこの映画からどのようにして逃れたのかということに驚いてほしい。

51位 『Scenes of a Sexual Nature』(2006)

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短いエピソードから構成されるこの群像劇コメディは、ロンドンのハムステッドヒースでとある午後を過ごしている様々なカップルの会話から成り立っている。その会話はいささかセクシャルなものだ。マクレガーが演じるのはゲイの財務アドバイザー。ダグラス・ホッジ演じるレストランの評論家のパートナーとは公園の男性専用エリアでくつろぐのを好んでいる。だが、そのパートナーは近くの林の中でだれかれ構わずにセックスに勤しんでしまっている。優しくて遊びほうけている男と真面目な知識人の間の対比が説得力を持って生み出されている。だが、マクレガーはこの映画では演技をしているというより、セリフを読んでいるだけのように見える。彼はちゃんと話し合ったわけではなかったようだ。

50位 『Being Human』(1994)

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マクレガーはいくつかのエピソードから成るこのコメディドラマでは小さな役を演じた。ロビン・ウィリアムズは、人間の歴史の中で5つの異なる時代で生きた臆病で優柔不断な5人の男を演じた。この映画は失敗したが、その評価以上に優れている作品だ。この作品を何世紀にもわたって描く個人的でヒューマニズム的な大作にしようとするビル・フォーサイス監督の情熱が十分に映画の中に見られ、実に感動的な場面がある。残念ながら、そのどのシーンにもユアン・マクレガーは関わっていないが、登場しているシーンでは適度にやつれた姿をしていることから、マクレガー本人とは気づきにくい(ここから出演シーンをチェックしてみてほしい)。

49位 『ナイトウォッチ』(1997)

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マクレガーはこの作品で爽やかな顔をして似合わないロースクールの生徒の役を大げさに演じている。夜間警備員の仕事をしている死体安置所では、精神異常者が死体とセックスをしようとしている。全体的に古めかしいグロテスクなものとユーモアのないゾックとするものを交互に繰り出す中、マクレガーは説得力を持って役を演じている。だが、映画の中の他のキャラクター、特にジョシュ・ブローリン演じる冗談好きでケンカ早い親友と、死体安置所に現れる変質者の謎を調査するニック・ノルティ演じる不気味な探偵の2人との関係性の中でだけで、マクレガーは存在しているかのように見える。この映画は見るな。

48位 『8月の家族たち』(2013)
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ここで簡単な質問。この映画にユアン・マクレガーが出ていたのを覚えているだろうか? トレイシー・レッツの絶賛された感動的な舞台をジョン・ウェルズ監督が映画化したこの作品はスターが競演しているが、そのほとんどのキャストは自分を見失っている。というのも、その場には大きなプレッシャーがかかるからだ。そのプレッシャーの正体は、薬物を常用する母親を演じるメリル・ストリープと、その母親の残酷さに屈することを拒む強情な長女を演じるジュリア・ロバーツの2人の対立だ。マクレガーの演じる役はロバーツの夫で詩人だが、妻に戸惑い、気持ちが離れていて、ほとんど物語の背景に溶け込んでしまっている。共演者を輝かせる仕事をするマクレガーの傾向はおなじみのことであり、本来は歓迎されるものでもあるが、この映画に限ってはマイナスに作用している。

47位 『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間』(2015)

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有名な話だが、ドン・チードルは、マイルス・デイヴィスに関する野心的な映画の資金を得るために、白人の共演者を出演させる必要があった。そこで、ユアン・マクレガーが、チードル演じるデイヴィスに対してインタビューを試みようとするローリングストーン誌のジャーナリストを演じることになる。この時点で、この作品は正確には伝記映画ではなく、神話であり、1人の男であり、ミュージシャンでもあるマイルズについてのエッセイ映画であって、色々なジャンルが混ざり、ファンタジーの要素が強い作品だと気づくことだろう。そういった作品には驚異的な演技の振り幅がまさに必要であり、マクレガーには間違いなくそれがある。そして、チードルとの共演シーンではバディもののコメディに見られる爆発力があるがゆえに、彼らには警察バディもののコメディを実際にやってほしいと思う。しかし、この魅力的で変わった映画を見たら、マクレガーが映画の中でしていることに対して不思議に思わずにはいられない。チードルがスクリーンの中の人間を全員吹き飛ばしていることでよりそう思わざるを得ない。

46位 『アイランド』(2005)

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ユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソン主演の『2300年未来への旅』風なディストピアンSFアクション映画をどのように作ると失敗作になるのだろう? 驚くことではないが、マイケル・ベイ監督がその道を見つけた。そして、驚くべきことに、その理由は、彼がよく使う大げさにものを見せるスタイルをこの作品では抑えて、真剣に仰々しくも眠たくなるような物語を伝えたからだ。マクレガーが演じる役は、無菌状態で隔離されたコロニーに住むあまり賢くない男。好奇心を抱いてコロニーから逃亡し、自分は初めからずっとクローンであることを最終的に知ることになるが、マクレガーの演技は、公平に言っても、無表情で愚かなものだ(だからこそ、映画の冒頭でのシーンがかなりうまくいっている)。

45位 『砂漠でサーモン・フィッシング』(2011)

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この映画は恋愛的な要素も含みつつも現実逃避に関するドラマである。裕福な王族が砂漠で鮭釣りを現実のものにするのを手伝おうとする釣りの専門家(マクレガー)と政府のコンサルタント(エミリー・ブラント)の2人が主人公だ。マクレガーの自然な控えめな演技と人の良さげなカリスマ性に役がうまくはまっているはずだ、そう思うだろう? 特に、ブラントの激しくイラついていて、恋愛感情で揺れ動いる役を相手にしているときに、そう思わないだろうか。唯一の問題は、マクレガーの役が少し皮肉っぽい性格にするように求められたことだ。つまり、怒りっぽくも冗談が好きで、物事を否定的に見る男だ。その目と心は知らない土地への旅を通して開いていくことになる。そして、我々は彼が気難しく疑い深い人だと決して思わない。彼はややソフトな口調で、穏やかだからだ。だからこそ、彼の変化は分かりきったものであり、かつ説得力のないものだと感じるのかもしれない。

44位 『ステイ』(2005)

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マーク・フォースター監督による本作は洗脳まがいのことを試みた不思議なスリラーものだ。マクレガーの演じる精神科医は、ライアン・ゴスリング演じる問題のある患者が自殺するのを止めようとする。もしくは、その精神科医自身が自殺をしようとしているのかもしれない。『ふくろうの河』でのテーマを再度新たに表現した本作品は、寒々しさが伝わる構図や物悲しい雰囲気によって飾り立てられつつも、俳優に興味深い課題を提示している。物語を意外な展開に持っていくことなく、隠された物語を進めていることをほのめかしながら、物語の上っ面から見えてくる表面的な感情をどのように表現するのか? これには、キャラクターたちの間に距離感を保ち続けられる演技力が必要となる。マクレガーと共演者のゴスリングやナオミ・ワッツはそれを試してみたが、結局、脚本とストーリーがあまりにも堅苦しく胡散臭すぎて、俳優たちの試みはうまくいっていない。

43位 『Emma エマ』(1996)

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「僕はあの作品ではひどいものだった」と、マクレガーはニューヨーク・タイムズ紙に、ジェイン・オースティンの傑作を映画化したグウィネス・パルトロウ主演作に出演したことについて語った。「僕は話した言葉を一言も信じられなかった」。「ひどい」という言葉は彼の演技に対してあまりにも強いかもしれないが、パルトロウ演じる頑固で繊細な仲人に対するカッコいい求婚者の一人として、比較的印象に残るものではない。マクレガーはハンサムで爽やかであるが、共演者とはあまり息を合わせようとはしていない。もちろん、それがポイントなのだろう。お互いに運命づけられていないということだ。彼はセットの中でさまよい歩いているように見える。当時のマクレガーの出演した映画の数を考えると、それは真実からそれほど遠くないことかもしれない。

42位 『インポッシブル』(2012)

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スペイン人の監督J•A•バヨナの注目に値するテクニックが見られるこのスリラーは、2004年のインド洋の津波に遭遇したとある観光客の家族が、23万人の命が失われた中で(そのほとんどが観光客ではない)生き延びていくのがストーリーとなり、主にナオミ・ワッツの見事なまでの苦しむ演技を披露する場となった。マクレガーは彼女の夫を演じ、少しばかりぎこちない。夫婦がお互いに気まずく見えるようになってからは特にそうだ。また、彼がそれを必要とするかどうかにかかわらず、ワッツが能力をみせた苦しみの演技レベルにはマクレガーは達していない(この映画は悲劇を演じることを勝負するものではない)。マクレガーの演技は悪くはないのだが、その役は他の俳優に簡単に入れ替えることができ、実際にそうなっても映画はそれほど変わることはなかっただろう。

41位 『アメリア 永遠の翼』(2009)

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飛行士のジーン・ヴィダル、つまりヒラリー・スワンク演じるアメリア・イヤハートが結婚生活を送りながらも狂おしいほどに恋をしてしまう相手の男を演じるのがマクレガー。ミーラー・ナーイルが監督をした有名な不運の女性飛行士を主人公にしたこの伝記映画で、マクレガーはそれなりに思いやりがあるように見える。もちろん、そうでなければならない。マクレガーはイヤハートの夫を演じるリチャード・ギアと競い合う。だが実は、全くダメな脚本や、完璧なまでの堅苦しい題材に打ち勝つことができるものは誰もいない。それは、禁じられた恋愛対象を演じている俳優にとって特に致命的だ。

40位 『ミス・ポター』(2006)

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ピーターラビットのクリエイターであるビアトリクス・ポターについて想像力を働かせて描いた本作は、恋に憧れる気持ちを心に秘めつつ、空想力の豊富な天才として彼女を見せながら、家族向けのエンターテイメント作品にする狙いがある。気取り気味のレニー・ゼルウィガーが作家兼イラストレーターを演じ、マクレガーは出版者と愛人を演じている。彼は、出版を営む家族の中では年下であり、見下されていて、一見つまらなさそうな本を担当することになる。予想通り、マクレガー演じる役はその本の中に、そしてポターの中に真の可能性を見つける。彼の演技には多くの哀愁が存在する。彼はポターと同じように負け犬だ。また、この映画自体はそれほど記憶に残るものではないが、スターとしてのマクレガーの強みを中立的なやり方で(あらゆる優しさと品の良さを使って)発揮している。

39位 『アレックス・ライダー』(2006)

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マクレガーの役は、この派手さのない楽しいスパイ冒険映画ではカメオに過ぎない。今までになかったシリーズの始まりを描く本作は、諜報員の叔父(演じたのはもちろん君の思っている人だ)が死んだ後、MI6にスカウトされる10代の少年の物語である。マクレガーはもちろんいつものように魅力的な存在であり、彼ならジェームズ・ボンドを上手に演じられたかもしれないと簡単に想像していた私たちに、遅ればせながらも、この映画で一瞬にしてそのことを十分に証明してみせた。

38位 『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)

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この映画で重要なことがある。ユアン・マクレガーは、「スター・ウォーズ」のプリクエルで素晴らしいオビ=ワン・ケノービを作り出し、偉大な故アレック・ギネスがジェダイのマスターとして作り出した堂々とした声の抑揚を自分の物にしたことだ。ジョージ・ルーカスが監督したエピソード1〜3の三部作は、かなり評判が悪く、非常に個人的なものでもあり、時には苛立つこともあるが、素晴らしいことも多い。その1作目では、マクレガーでさえ順応するのに苦労した。彼がどれほど頻繁に立ち止まっては、戸惑っている様子を見てほしい。また、不自然な特殊効果も役に立っていない。ジャージャービンクスとのある会話では、彼は視線が合っていないようにも見える。それでも、脚本上にしっかりと描かれていない役にニュアンスと深みをもたらすのに苦労しているとはいえ、マクレガーは素晴らしい俳優であることは明らかだ。 この続編以降は、はるかにうまく役を演じられている。

37位 『ブローン・アパート』(2008)

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ミシェル・ウィリアムズは若い母親を演じ、その夫と息子はアーセナルのサッカーの試合でテロリストの仕掛けた爆弾により命を落としてしまう。マクレガー演じる役は、裕福なジャーナリスト(今回のジャーナリスト役は裕福だ)で、ウィリアムズを口説く。そして、夫と息子を亡くして悲しむ未亡人に正義がもたらせるように手を尽くす。マクレガーは、説得力を持って饒舌に話す躍動感をこの役で見せている。彼は女たらしだが、このウィリアムズ演じる女性には苦労する。残念ながら、物語的にも感情的にも我々観客をエンディングまで騙した後、この映画は全くどこにも進まない。それは実際には俳優のせいではないが、面白いキャラクターが登場しても、手持ちぶさたになっている状況に独特なフラストレーションが起きてしまう。

36位 『ヤギと男と男と壁と』(2009)

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ユアン・マクレガーはこれまでに何回ジャーナリストを演じてきたのだろうか? マクレガーがこの一風変わったコメディで演じるのは、イラクで元特殊部隊のやり手ジョージ・クルーニーのあとをついてまわるジャーナリストの役だ。ストーリーは、テレパシーの力を利用しようとするアメリカ軍の進行中の計画を含む数十年にわたる軍事実験についてである。わかっている。この説明は、このページではありがたみのないものだ。だが、マクレガーは、観客の代わりとなるジャーナリストの役以上に多くのことをしている。また、彼とクルーニーは、時折、「珍道中シリーズ」のホープとクロスビーのコンビのように、相性がよく、陽気なところがある。

35位 『天使と悪魔』(2009)

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ダン・ブラウンの大ヒット作『ダ・ヴィンチ・コード』の続編となる本作で、教皇の突然の死により教皇庁の支配権を握るバチカンの役人「カメルレンゴ」の役を決める際に、インスピレーションでマクレガーが選ばれた。そのキャラクターは、若く、礼儀正しく、論理的で、協力的な内部の人だ。のちになって、彼は、教皇の殺害とその有力な後継者の誘拐に関する首謀者で、攻撃的で独裁的な人間であることが判明する。マクレガーは、スターウォーズの成功をきっかけに、このような役を何度か引き受けた。そのうちのいくつかの役では、彼が本来得意とする信頼感のある役から離れ、隠謀を企んだり、怒鳴ったりする役を演じるチャンスを手に入れた。映画は全体的にはくだらないが、マクレガーは楽しんでいるように見える。

34位 『リトル・ヴォイス』(1998)

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このオフビートな小さな映画の主人公は内気で静かな若いヨークシャーに住む女性である。映画の中では実に素晴らしいバグパイプが見られるが、本当の主演はジェーン・ホロックスの力強い歌声とモノマネに対する神業的な才能だ。マクレガーは彼女に夢中になる風変わりな電話回線の修理作業員を演じているが、これまでの演じてきた役のように、魅力的であるが深みのない恋愛の引き立て役だ。彼はこの時点でスターとしてやっと輝き始めていたので、映画が彼(または彼の演技の幅)を最大限に活用していないことは理解できる。しかし、彼の存在はこの映画では重要であり、彼とホロックスは引かれ合う2人の変わり者として、とてもいい相性を見せた。

33位 『ジャックと天空の巨人』(2013)

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マクレガーは本作品で自分の二枚目俳優としてのイメージを楽しみながらも冷やかし、イケメンでありながら役に立たない騎士を演じている。その内容は、古典的な童話をいくつも組み合わせて映像化したことで配慮に欠くところもあるが、CG満載の映画だ。この作品の公開時点で、マクレガーは映画史上最大のシリーズ映画「スター・ウォーズ」の1本に出演し、有名人にはなっていた。その大ヒット作での英雄的な言動をさらに本作でも打ち出すよりも、彼が自分のペルソナで演じている役を見られるのは新鮮だ。

32位 『ビッグ・フィッシュ』(2003)

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ティム・バートンの感傷に訴えるこの寓話では、マクレガーはしばしば比較されてきた俳優アルバート・フィニー演じる人物の若い頃の役を演じている。『トム・ジョーンズの華麗な冒険』の主演だったフィニーが演じる寝たきり老人の家長の姿には、『トレインスポッティング』のイケメンなヒップスターとはあまり共通点がないように見えるかもしれない。だが、類似点は立ち振る舞いにも見た目目にも見られる。それは、興味深いまでに二極化している。マクレガーは、非の打ちどころのない振る舞いをして、驚くほどの自信を持った男を演じる。その男は、時には神秘的でもある思いも寄らない冒険に次から次へと向かっていく。彼にとって、弱さとは単なる感情をいたずらに揺り動かすものでしかない。フィニーは、そこから歳をとり、虚弱になった人物を演じていて、すべてのことにおいて弱さを見せている。後者は大きく感動をするシーンがあるが、若いマクレガーには、自分の役にある程度の人間性、つまり、ある不安感と野心を、そして優しささえもひそかに取り入れる。マクレガーの演技をフィニーの演技なしで考えるのは難しい。

31位 『悪魔のくちづけ』(1997)

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1799年、有名なオランダの造園設計士を装った男がエレガントな英国の田舎の家に到着し、巨大な庭を作る。その後、彼は仕事をしていたその家族の間の感情が絡んだ人間関係の問題に巻き込まれる。伝説の映画カメラマンのフィリップ・ルースロ(『危険な関係』、『リバー・ランズ・スルー・イット』、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』)が長編映画の監督に進出した唯一の本作品は予想通りゴージャスであり、ハンサムな若い詐欺師であり庭の専門家の主人公を演じるマクレガーはちょうど良いぐらいに無邪気さと情熱さを役にもたらしている(彼はグレタ・スカッキ演じる造園の依頼主の妻とカルメン・チャップリン演じる情熱的な娘の2人に可愛がられている。彼女たちを責められはしない)。彼の演じる役は専門知識があるふりをしているが、そうしているのは高潔な理由があるからだ。少なくとも彼の心の中ではだが。そして、マクレガーは詐欺師を演じているが故に、怪しいオランダ語のアクセントで話していることは許しておこう。

30位 『ナニー・マクフィーと空飛ぶ子ブタ』(2010)

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この映画の見どころは、一風変わったメリー・ポピンズ的な魔法使いのベビーシッターを演じているエマ・トンプソンであり、マクレガーは数シーン出演しているだけだ。かろうじてカメオ出演と認められるが、マクレガーはこの役を最大限に活用している。彼が演じる父親役は、故郷から遠く離れた戦争に行くが、戦地で行方不明となり、死亡したとみなされてしまう。とは言っても、早い段階で、彼と妻役のマギー・ギレンホールの過ごした楽しくロマンチックな日々がフラッシュバックの短いシーンとして映し出される。彼は今まで見た中で最大の笑顔を垣間見せている。その瞬間に、その2人がかつていかに幸せだったのか分かる。彼はエンディングで家に帰ってくると(ちょうどナニー・マクフィーが去るとき)、美しく、そして深く感動的な歓声をあげて、自分の幸せと喜びを表現している。彼はおそらくこの辛辣でありながらも感傷的な映画の中で最もマイナーなキャラクターだが、それでも感動的なクライマックスを自分のものにしてしまっている。

29位 『ジェーン』(2015)
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マクレガーは生粋のヴィランを演じることはめったにない。たとえ悪役として映画に出ても、大抵その役は複雑なものだ。だが、このナタリー・ポートマン主演の西部劇では、彼は冷笑的かつサディスティックで、精神に異常をきたした正真正銘のモンスターを演じる機会を得た。マクレガーは、ポートマン演じるキャラクターを売春婦に仕立てようとするカウボーイの首謀者を演じている。そして、自分の仲間を撃った彼女の負傷している夫に復讐しようと躍起になっている。その夫を演じるのはノア・エメリッヒで、かつてはマクレガー演じるカウボーイの仲間だ。彼の髪の毛は真っ黒で、不快なあごひげをしているが、声はやはりはっきりとユアンだとわかる。かなり優しい話し方をした悪役であるが故に、彼の存在はさらにゾッとするようなものになっている。

28位 『プーと大人になった僕』(2018)
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Laurie Sparham /© Walt Disney Studios Motion Pictures /Courtesy Everett Collection

『くまのプーさん』の物語を実写にした最近のディズニー映画で、マクレガーは、可愛いが不運に見舞われたプーの大人に成長した友人を演じている。マクレガー演じるクリストファー・ロビンは仕事中毒であり、高級カバン会社で有能なマネージャーとしてのストレスの多い仕事によって、家族と過ごす生活が妨げられしまい、小さな娘と辛抱強い妻はクリストファーをおいて旅に出てしまう。彼は100エーカーの森の友人たちと再会した後、自分の内にいる子供と再び繋がるが、この映画はノスタルジーに迎合するものではなく、大人の世界に存在する息の詰まるようなあらゆる力を非常に真面目で温かい目で紐解いている。クリストファーは堅物ではなく、単に心の落ち着きを失った真面目で善良な人だ。そして、マクレガーは冷静で毅然とした態度の演技で不安を見せてくれる。それは、不快すぎるものでもなければ(結局のところ、この映画は子供向けだ)、軽薄すぎるものでもない。

27位 『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密』(2015)
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ジョニー・デップ主演のこの惨めな映画は、盗まれた絵画の謎を解こうとする口ひげを生やした美術商のストーリーで、どんなに想像力をたくましくしても良い映画とは言えない。だが、大きな例外が1つある。ユアン・マクレガーが素晴らしい演技を見せているのだ。彼は警部補を演じ、デップ演じる美術商とは大学時代の友達で、その友人の妻(マクレガーが出演した『Emma エマ』での共演者グウィネス・パルトロウが演じている)は高嶺の花の存在だ。そして、面白いほどに無表情な警官を演じているが、手に入れられない好きな女性を目にすると優しくなってしまう。さらに、彼女と二人きりになれるようにデップを世界の果てに送る計画を考える。彼はこの映画の中で唯一ハートがあるように思われるキャラクターだ(それに本物の笑いも引き出している)。デップが出てこない続編をぜひ作ってほしい。

26位 『ブラス!』(1996)
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Miramax/courtesy Everett Collection

北イングランドのとある町の炭鉱夫たちから成るブラスバンドは、炭鉱の閉鎖に脅かされ、どうやってそれに対処するべきかを探り出そうとする。マクレガーはイケメンの若いテナーホーン奏者を演じ、タラ・フィッツジェラルド演じるフリューゲルホルンの天才が街に戻ってくると、子供のときに彼女に恋をしていた気持ちを再燃させる。残念ながら、彼女は鉱山を閉鎖しようとする側で仕事をしている。この映画はラブコメの部分もあれば、負け犬の物語の部分もある。もちろん、ブラスバンドは選手権で演奏する。しかし何よりも、これは、死にかけている産業に命を捧げてきた労働者に対して政治的に鋭く視線を向けた作品だ。マクレガーは演技に常に一定の改良を施し、ブルーカラーの役では荒っぽい感じを出さないようにしていた。だが、本作品では、その考えを少しもてあそんでいる。マクレガーは最初穏やかな人のような印象を与えるが、恋に落ちた女性が自分たちの反対側で働いているかもしれないと思い始めると、彼の態度はガラリと変わってしまう。

25位 『美女と野獣』(2017)
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通常、このようなランキングには声優としての演技は含まれないが、(以下ネタバレ)マクレガはこの映画の最後にわずかだが自分自身の体でキャラとして登場するので、リストに入れることを許すことにしよう。また、彼はディズニーの傑作アニメを実写でリメイクした映画で傑出した役目を果たした1人であるので、リストに入れるのはいいことだ。マクレガー演じるルミエールは冗談が好きな上に思いやりのあるフランスの燭台で、ググ・バサ=ロー演じる羽ぼうきのプリュメットに恋をする。そして、この2人はスクリーン上での相性がとても良い。マクレガーは陽気な演技を見せ、この映画に必要とするふさわしい演技のトーンを捉えている。デタラメなフランス語のアクセントで話し、大方のその話し方には冗談めいた感じを含んでいて絶妙だ。それは全く現実的なものではないが、彼がとても楽しんでいるのは明らかであるので、我々が気にすることではない。

24位 『エージェント・マロリー』(2011)
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スティーヴン・ソダーバーグ監督のこのアクション映画は、隙のない強靭な女性の秘密諜報員が自分を裏切った男たちを倒していくというシンプルな娯楽作で、MMA(総合格闘技)の格闘家ジーナ・カラーノが銀幕デビューを飾ることをメインの意図とした作品だ。この映画には不思議なぐらいに有名俳優が勢ぞろいしているが、そのほとんどは使い捨てである。だが、マクレガーは主人公のかつての恋人で二重ボスを演じ、映画の主なヴィランの1人となっている。マクレガーが悪役を演じるのはいつでも新鮮だ。今回の場合、イケメンで信頼できるいい男のイメージで弄ぶことをハッキリと楽しんでいるので、特に惚れぼれとする。

23位 『ノーラ・ジョイス 或る小説家の妻』(2000)
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ユアン・マクレガーはジェイムズ・ジョイスを演じられるのか? 笑わないでほしい(少なくとも笑い過ぎないでほしい)。この映画は、『フィネガンズ・ウェイク』を書いたジョイスが労働者階級出身の活発な妻ノーラ・バーナクルとの恋愛に苦しみ、売れない空想家から不機嫌で無情な天才へ変容していく姿を見せつける激しいメロドラマだ。ストーリーが展開していく中、2人の結婚生活は大きく変化する。夫は妻に身持ちの悪さを感じ、恥と怒りに駆られる。これは難しい役だ。マクレガーは、その屈辱感をハッキリと見せながらも、作家として自分の中で強まっていく有毒性も伝えなければならい。天才的な作家を題材にした他の映画で見られるように、この作品は主人公の業績を映画として魅力的に見せることに苦労している。だが、マクレガーは全力を尽くし、それが映画の中で大変効果を上げている。

22位 『ウディ・アレンの夢と犯罪』(2007)
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犯罪と野心をテーマにして、ひねりの展開が続くウディ・アレンによるコメディスリラーの本作では、マクレガーとコリン・ファレルは兄弟を演じる。1人は口が達者な上昇志向のある男。もう1人がお人よしのバカだ。この兄弟は言いくるめられて、トム・ウィルキンソン演じるギャングと一緒に殺人の手はずを進めていくことになってしまう。マクレガーとファレルが非常に対照的であることが1つの理由だが、この映画は評判以上に優れた映画である。マクレガーは威勢が良くスマートであるが最終的に芯まで腐ってしまう。一方で、ファレルは心配性で、あまり明るくなく、最終的に罪悪感に悩まされる。2人の演技は各自の好きなようにやっているが、あまりにも広範囲に渡っている。2人をまとめると、表裏一体として捉えることができ、人間のありようについてゾッとするようなことを伝えている。

21位 『ブラックホーク・ダウン』(2001)
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リドリー・スコットが監督した強烈で非情なまでのこの映画は悲惨なモガディシュの戦闘を題材にして、有名俳優が多く出演しているが、不透明な戦場を速いテンポで混沌として描いているために、誰が出ているのか見分けがつかない。事務職に任命されたが、急きょ本物の戦闘で闘うことになる兵士を演じるマクレガーは、他の俳優に比べれば突出できている。実際に映画の一部で彼の顔が見られる。だが、最終的に彼は戦場の狂気に飲み込まれてしまう。泥沼へと見事に落ち込む中で、同時にキャラクターの持つ恐怖心や戸惑い、勇気を伝えている。

20位 『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002)
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ジェダイとシスの間の永遠に続く戦いとは異なり、ジョージ・ルーカスが監督して激しく非難されたプリクエル3部作のエピソード2は、暗闇と光の間の戦いであり、下手な演技で表現される不自然な恋愛ものと独創的でかなり面白みのある宇宙ミステリーものの間の戦いでもある。この映画でついに、マクレガー演じるケノービがついに主人公として真価を発揮する。ルーカスは、マクレガーの鋭い眉毛とかすかな笑みだけではなく、彼が生まれ持った好奇心を効果的に利用している(その姿はまるで再びジャーナリストを演じているかのようだ)。この映画にもちょっとした陰影を巧妙に見せている。それは、このオビ=ワンはビジネスライク的なところだ。その一本筋の通った意思の硬さは、彼の怒れる弟子アナキン・スカイウォーカーがのちにフォースのダークサイドへと向かってしまう理由の1つだ。

19位 『ムーラン・ルージュ』(2001)
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この世界には2種類の人間がいる。『ムーラン・ルージュ』を愛する人と、そうではない人。劇場公開時に賛否が真2つに分かれた、バズ・ラーマン監督による熱気を帯びた華やかなこのミュージカル映画は、オペラ的なものとモダンなもの、魅力的なものと恐ろしいものが順番に登場してくる。間違いなくミュージカルの代表作となるもので、その一役を担ったのが、恋に夢中になる中で、不運に見舞われるパリのダンサー役のニコール・キッドマンのオスカーにノミネートされた演技だ。この映画での主役となる男側についてどう考えるべきか? 貧しい中、恋に悩む作家クリスチャンを演じるマクレガーは、恋に歌に忙しい。おかしな話だが、彼はその両方でかなり上手にこなしている。彼女は死んでしまうかもしれないが、彼こそが表に出てこないが映画の花なのだ。そして、マクレガーとキッドマンの間で相性の良さを見せることがないという事実でさえ、問題のようには見えない。ああ、神様!

18位 『マネートレーダー/銀行崩壊』(1999)
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1990年代に複雑な詐欺行為を通じて、ブローカーのニック・リーソンは、シンガポール国際金融取引所で巨額の不公正取引を多数行った。最終的には刑務所に収監されるが、イギリスで最古の金融機関の1つを破綻させてしまう。マクレガー演じるリーソンは才気あふれるやり手で、その彼が犯した主な罪は忠誠心とプライド。彼にとって最初の不正行為は同僚の間違いを隠蔽する結果から生じる。後年の彼の失敗は自信過剰と市場を支配したいという願望が原因だ。胃が痛むような不安感が映画の中に漂っているが、マクレガーは観客を詐欺師側に感情移入させる素晴らしい仕事をしている。彼がしていることは明らかに違法であるし、それは絶対に最悪な結果をもたらすことになるのだが、この男に感情移入しないのは難しい。

17位 『ガンズ&ゴールド』(2014)
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マクレガーが正真正銘の愚劣な男を演じる姿の清々しさを思い出す必要があるのならば、この憂鬱な刑務所からの脱獄映画でありつつも意外な展開が起きる強盗スリラー映画でもあるこの作品を見るのを勧める。この映画でのマクレガーは刑務所暮らしを強いられているタフなオーストラリアの銀行強盗の役だ。ブレントン・スウェイツ演じる若い囚人が刑務所に収監されると、マクレガーはスウェイツを刑務所仲間のグループに入れ、大胆な脱出を計画する。そのあとには、彼らは突拍子もない金塊強奪に乗り出し、その結果には予想通りに裏切り行為がある。この映画では、マクレガー演じるキャラクターを正確に理解することは難しい。彼はある時は病的なまでに暴力的になったかと思うと、次の瞬間には徹底的に優しくなっている。結局のところ、この作品はマクレガーの演技の振り幅を見せてくれる素晴らしいショーケースではある(アクセントのことについては別だ。彼はオーストラリアの陽気な話し方はせずに、スコットランドの話し方にかなり寄せている)。

16位 『われらが背きし者』(2016)
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そう、マクレガーはこの映画では、他の出演者全員と一緒に、ステラン・スカルスガルドの演じる陽気で、冷たく、優しい役に人気を奪われる。その役はマクレガーと協力して残忍な敵役を倒すロシアのギャングだ。しかし、マクレガー演じる主人公は塞ぎ込みながらも知識欲の旺盛な真面目な男であり、このジョン・ル・カレの原作の映画化には非常に重要な存在だ。この作品は本質的には、全く異なるタイプの男2人の間に極めて稀に築かれた友情関係を描いた映画である。マクレガーは結婚生活が危機に瀕している大学教授を演じ、そのあまりの退屈な生活は、ある意味で、物語が進展する中でスパイ映画ではよくあるずるい手段を隠すには最適なものだ。彼はジミー・スチュワートと『三十九夜』主演のロバート・ドーナットを混ぜ合わせた理想的な人物である。また、キャラクターの葛藤を効果的に伝えている。自分の置かれている状況に魅了されつつも、それにいくらかは戸惑いも見せている。

15位 『ピーター・グリーナウェイの枕草子』(1996)
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肌に文字を書くことに虜になった日本のモデルを主人公にしたピーター・グリーナウェイ監督によるこの映画はとりわけ難解な内容であり、マクレガーは中盤ぐらいまでしか出演していない。その役はバイセクシュアルの翻訳家であり、ヒロインと激しい恋に落ち、その後、有力な出版社へのパイプ役になることを受け入れる。そして、基本的には彼女は彼の体に自分の作品を書くことができる。そのシーンの演技は驚くほどにセクシーで艶かしい(この時は、彼が積極的にオールヌードになることで有名になった時期だった。ただ、正直に言って、マクレガーがそのことに全く問題がなかった理由を理解するのは簡単だ)。しかし、彼がグリーナウェイの冷ややかで考え抜かれた物語に暖かさを注ぎ込むのは意外だった。彼の演じるキャラクターが自殺する時、ボトルに入ったインクを自然に飲み込み、我々はその時のヒロインの悲しみと裏切りの感覚を共有する。

14位 『アメリカン・バーニング』(2016)
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長編映画の監督デビューとして、マクレガーは本物の獣に取り組んだ。小説家の故フィリップ・ロスによる戦後の覚醒と60年代の闘争の素晴らしい叙事詩だ。だが、マクレガーの望むほどには映画はうまくいかなかった。『アメリカン・バーニング』は20世紀後半のアメリカの本質への恐ろしい旅路だ。しかし、主役のスウィード・レヴォヴはマクレガーにとって理想の役であり、長年にわたって完璧に演じてきた2つのタイプが組み合わさっている。イケメンで男らしい美徳を持つ人と、人を惑わす理解不能で複雑な関係にとらわれてしまう無実の普通の人だ。映画はそれ自体が凡庸であるためにうまくいっていない。ただし、彼は演者としてこの作品で真の素晴らしさを示したように見える。

13位 『普通じゃない』(1997)
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マクレガーがダニー・ボイルと『トレインスポッティング』のチームと3回目のタッグを組んだこのラブコメ映画は、無理やり感があって、退屈な誘拐事件を描いているが、その中でマクレガーが飛び抜けて一番いい。彼が演じる男はロサンゼルスで管理人の仕事をしているが、その仕事を失い、何かの拍子で上司の問題のあるキレイな娘を演じるキャメロン・ディアスを人質にしてしまう。デルロイ・リンドーとホリー・ハンターが演じる銃を持った天使のキャラクターも存在していて、この作品は歪んだ奇抜な恋愛映画として作られようとしたが、奇抜さのための奇抜さで終わってしまい、それはほぼ無意味なものになっている。それにも関わらず、マクレガーはこの映画でほとんど痛手を負っていない。完全に場違いな若者の役を演じている姿を見ていて、観客はまだまだ大いに楽しめてしまう。この映画が成り立っているのは、ほぼ完全に彼の圧倒的な魅力のおかげだ。

12位 『T2 トレインスポッティング』(2017)
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この映画はうまくいくべきではなかった。そう、ある意味でこの映画はうまくいってしまっているのだ。20年以上前の『トレインスポッティング』1作目からキャラクターを再登場させたダニー・ボイルは友情、恩義、後悔、裏切りに目を向けるが、それは残念なもので型にはまったものになっている。マクレガー演じるレントンは、エディンバラに戻って数十年前に裏切った仲間のジャンキーたちと再会することで、物語が動き出す。まず、彼らの変化によって、マクレガー自身のリアルなスターの地位が面白いように映画に映し出されている。マクレガーの主人公には健康的で幸せなサクセスストーリーがあるが、他のみんなは落ちこぼれている。彼はだいぶ昔に悪い少年のイメージを脱ぎ捨てて、信頼できる頼りがいのあるイメージになっている。その演技は感動的なもので、かつての自分に対する嫌悪感と物悲しさの両方がその演技には混ざり合っている。彼が高級レストランで「人生を選べ」というモノローグを思い出し、SNS世代に合わせてその言葉を言い直すときには、気の荒い若い頃のレントンが垣間見える。もちろん、悲しげな今のレントンの姿も見える。裕福で中立的な立場にいるレントンは、いろいろな新しい手段をもって、誰も傷つけないように生きている。

11位 『ゴーストライター』(2010)
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ロマン・ポランスキー監督による迫力ある政治的サイコスリラーの本作でマクレガーが演じる役は、問題の多い元英国首相(ピアース・ブロスナン)の自叙伝を執筆するために雇われた作家で、この雇い主に疑問を投げかけては、いろいろな陰謀説をでっち上げる(それは当然だ。この仕事のために雇われた以前のゴーストライターが興味深いことに死亡していたからだ)。この映画は実際にはブロスナンの素晴らしいパフォーマンスの見せ場となっている。無情で、冷淡で、謎めいた政治家であり、トニー・ブレアのように国家を悲惨な戦争へと導くことに一役買った。だが、マクレガーはそれ以上のことをしているとも言える。また再び、あまり派手でない役を演じていて、結合組織も提供する人物であり、その好奇心と恐怖心が独特の雰囲気のある物語を推し進めている。映画が不気味なほどに残酷なエンディングにたどり着く頃には、自分がこのキャラクターにどれだけ時間をつぎ込んでいるのかということに驚くかもしれない。

10位 『人生はビギナーズ』(2010)
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マイク・ミルズの心温まるこのコメディドラマに出演しているマクレガーの役は、年老いた父(クリストファー・プラマー)が亡くなる数年前に、母に先立たれて、ゲイだと告白してきた時のことを思い出す。プラマーはこの父親役でオスカーを受賞。結局のところ、この映画がうまくいったのは、残された数年間の人生で多くの経験を詰め込もうとする男を繊細にそして複雑に表現したプラマーの演技だ。しかし、ここでもマクレガーは非常に素晴らしい。この映画の構成は、マクレガー演じる息子が父親と過ごした最後の日々を思い出しながら、その思い出を新しい人間関係に踏み出そうとする息子の姿に反映する形になっている。そして、マクレガーは、プラマーがあからさまに演じていることと同じことを曖昧な形で演じなければならない。その2段構造で見せる演技は素晴らしい。

9位 『パーフェクト・センス』(2011)
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デイヴィッド・マッケンジー監督はこれまでにマクレガーと2本の映画を製作していて、彼のベストな活かし方についてしっかりと理解しているようだ。人間の感覚を徐々に奪う疫病が世界的に蔓延している中で、マクレガーは、ひどく苦しんでいる科学者(エヴァ・グリーン)に恋をする女たらしのシェフを演じている。この映画は非常に象徴的な危機を背景にした恋愛ものであり、この感染症が蔓延するごとに、人間は感情全体に過剰な負担をかけてしまう(例えば、臭覚を喪失すると悲嘆し、味覚を喪失すると恐怖にかられる)。この映画での課題は、映画の空想的な魅力を帳消しにしてしまうぐらいの大げさな演技はせずに、感情の爆発をどのように伝えるのがベストなのかということだ。中核となるラブストーリーが段取りを踏んで進む中、主人公の2人があらゆる感情を経験する姿を見てほしい。どうやって映画が成立しているのかがはっきりとわかるだろう。彼ら2人の相性も素晴らしい。マクレガーの他の作品で共演した恋愛相手には、必ずしも同じことは言えない。

8位 『猟人日記』(2003)
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ユアン・マクレガーがどれほど表情豊かであるかを忘れてしまうことがある。アレグザンダー・トロッキの小説を2003年にデヴィッド・マッケンジー監督が映画化した雰囲気のある本作品は、緊迫感を持って雄弁さを備えた印象的な静寂に満ちている。マクレガーは作家を志している魅惑的な甲板員を演じる。そして、ティルダ・スウィントン演じる石炭船の持ち主とは、ピーター・ミュラン演じるぶっきらぼうで素っ気ないその夫の目と鼻の先で、激しい情事を始めてしまう。それはねじれた三角関係になり、観客が期待するような形にはあまり発展しない。3人の主人公は全員完璧だが、実に際立っているのは、スウィントンとマクレガーの肉体関係を表現するシーンだ。喜びと絶望、情熱と疑念が交互に現れる。もちろん当時、マクレガーはスクリーン上で全裸になる傾向があることでは有名になっていた。彼のペニスがスクリーンに現れる頻度について冗談を言う人がいた。だが実は、演者としての大胆不敵さは彼にとって途方もなくプラスとなった(エミリー・モーティマーとの常軌を逸した暴力的な性行為を見てみてほしい)。『猟人日記』のような映画のおかげで、マクレガーは、当時の若い役者にひどく欠けていた本能のままの優雅さと無防備さを表現している。

7位 『フィリップ、きみを愛してる!』(2009)
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ユアン・マクレガーにとって、スクリーン上の恋愛相手として相性がこれまでで最高に良かった人物が、ジム・キャリーだったとはなんと皮肉なことなのだろう。この映画は実話に基づいた刑務所ものであり、恋愛ものでもあり、コメディ・ドラマでもある。そして、マクレガーが演じるのはブリーチしてブロンドになった男。『エース・ベンチュラ』のジム・キャリー演じる詐欺師を引きつける対象となる。マクレガーの役は刑務所に入ることになる少年から始まり、奔放な詐欺師の自分に対する執着の具合をよく理解していない。だが、2人の関係は深遠で甘ったるいものへと発展する。そして、マクレガーは、これまでの多くの映画と同様に、自分が共演者に対して寛大であることを証明している。この作品はキャリーの映画だ。しかし、映画の中核を作り上げる繊細で重要な仕事をしているのはマクレガーだ。キャリー演じる派手な役が次第に度を越して悪ふざけをする中で、マクレガーは穏やかに落ち着いている。彼は恋人であり、引き立て役であり、そして同時に”ストレートな男”――異性愛という意味ではなく、真面目という意味のストレート――でなくてはならない。

6位 『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005)
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ジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」のプリクエル3部作のラストとなるエピソード3で観客は気付くことがある。それは、この3部作がある意味で最初からオビ=ワン・ケノービの物語であったことだ。確かに、アナキン・スカイウォーカーは優れた才能のあるジェダイかもしれないが、最終的にはダークサイドに落ちていってしまった。だが、本当に感情に訴える強烈なものは、年長の騎士であるオビ=ワンが若い弟子のアナキンを正しい方向に導くことを失敗したことに気付くところだ。それまでの2作品では、オビ=ワンとしてのマクレガーの演技は素晴らしいが、いくぶんか周りから切り離されたものだった。彼はしばしば周りを忘れて彼自身の物語に没頭していた。ところが本作では、自分が輝くだけでなく、他の俳優をより良く見せようとしている。マクレガーが最後の戦いで放つ「お前は弟と思っていた、アナキン! 愛していた!」というセリフの言い方は、”はるか彼方の銀河全体のシネマティック・ユニバース”で最も衝撃的な瞬間だ。

5位 『恋は邪魔者』(2003)
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非常に完璧なキャスティングであるがゆえに、この作品には痛みがある。『夜を楽しく』のような1950年代のロマンティック・コメディを陽気に色鮮やかに再現したペイトン・リード監督によるこのパロディ映画は、文化における性差別を風刺に富んで脱構築的に解釈し、真の愛を見つけることを真面目に描いている。そのため、一度に何人ものペルソナを具現化できる俳優を必要とする。しかも、すべて同じ1人のキャラクターの中での具現化だ。マクレガーは話し上手で、きらめく笑顔を見せる女好きの男(もちろんジャーナリストだ!)を演じ、口説き落とした相手は女性について意味深い皮肉を漏らす。彼はまた、情熱的な男の主人公として自分にふさわしい場所を見つけるために、そして、ルネ・ゼルウィガー演じる独立心の強い主人公との真の愛を見つけるために、正しいと思えるあらゆる方法で変わらなければならない。マクレガーは、わざとらしさと誠実さ、うぬぼれ具合と好感度を適度に役に取り入れている。まじめな話、これをうまくやり通すことができる俳優がマクレガー以外の他にいるのだろうか?

4位 『シャロウ・グレイブ』(1994)
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『トレインスポッティング』でトップに躍り出る以前だが、ダニー・ボイルとマクレガーは、展開にひねりを効かせたスタイリッシュなスリラーの本作品でタッグを組んだ。ストーリーは、新しいルームメイトが出所の不審な大金が詰まったスーツケースを残して死んだのを機に、グラスゴーに住むヤッピーの3人が深みにはまっていく内容だ。マクレガーが演じるのは、楽しげに思い上がっていて、いたずら好きなジャーナリスト(またジャーナリスト役だ)であり、一般的には嫌なやつだ。しかし、茶目っ気のある笑顔でそれをすべてやっているので、当然、我々は彼が好きになる。バランスを取るのは見かけによらず難しい。すでに書いたように、このキャラは非常に迷惑かもしれない。だが、マクレガーが役に意外な人間らしさだけでなく、異常なほどの魅力をもたらすのは当然のことだ。そして、彼はこの映画にとって一番ヒーローに近い存在になる。彼の友人は欲望と妄想に圧倒されるが、ユアンのキャラクターは何らかの形で感情を抑えられる唯一の人物なのだ。

3位 『ベルベット・ゴールドマイン』(1998)
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「ミシガン州のアルミニウム・トレーラー・パーク」の産物、マクレガー演じるハードロックのきらめく神カート・ワイルドは、ジョナサン・リス=マイヤーズ演じる変形自在のデヴィッド・ボウイの代わりとして創作されたブライアン・スレイドにとって、シャーマン的な発想の源や恋愛対象、クリエイティブ面での引き立て役として役割を果たしている。マクレガーがこのような熱狂的で好色で傲慢的な役に真っ向から飛び込むのを見るのは最高だ。性差を曖昧にするグラムロックの時代をトッド・ヘインズが架空のストーリーとして描いている内容と実在の人物には類似がある。ワイルドはルー・リードとイギー・ポップを足して2で割ったような存在だ。それでも、トッド・ヘインズとマクレガーはワイルドにもっと多くのことを与えている。彼はロンドンの音楽シーンに荒々しくハードな鋭さをもたらすアーティストだ。また、アイデンティティーをリミックスして、作り直すという創造的かつ破壊的な力を描いた物語の中で、ワイルドは常に自分自身に忠実であり続ける数少ないキャラクターの1人でもある。

2位 『ユアン・マクレガー/荒野の誘惑』(2015)
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「何よりも神を愛するのだ……人生を愛するんだ」。このセリフが『トレインスポッティング』での「人生を選べ」というレントンのセリフをどの程度まで皮肉を込めて踏襲しているのかを自分で判断して構わない。ここでのマクレガーのイントネーションには、どこかなじみがある。そこには曖昧さがあることを理解できるだろう。というのも、砂漠を放浪する「神の子」についてロドリゴ・ガルシアが監督した胸が痛むほどに美しく深刻なこのドラマの中で、マクレガーがイエスと悪魔の両方を演じるからだ。その2人の演技を見せられるのに、なぜ1人だけの際立った演技を見せるのか? イエスとしては、マクレガーは父親と心を通わすことに苦労している男性を表現しなければならない。そして、悪魔としては、疑念や身勝手さをもってイエスを本気で誘惑しなければならない。悪魔の言葉は自分の内から生まれているのか、それとも外から来ているのか? それは自分の外にいる悪なのか、それともイエスの頭の中から聞こえてくる声なのか? これは、マクレガーが渡らなければならない非常に危なすぎる橋だ。過小評価されているこの映画の中で、彼が華麗かつ感動的に演技をしているということだけでも、その成果がいっそう印象的なものになっている。

1位 『トレインスポッティング』(1996)
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Figment/Noel Gay/Kobal/Shutterstock

ユアン・マクレガーをスターにしたこの映画は今でも間違いなく楽しめる。また、華麗な役をたくさん演じてきた中でも最高の作品であり続けている。ダニー・ボイル監督が1996年にアーヴィン・ウエルシュのカルト小説を映画化したこの作品は、ぶっ飛んだスタイルとロックンロールな奔放さを持ち、スコットランドの貧民街でジャンキーのたむろしている強烈に愉快な世界感に観客をのめりこませてしまう力も持っている。そして、落ちこぼれたちにも魅力があるということだけでなく、消費世界のシュールな脅威も伝えている。しかし、ボイルが作り出す映画の中のあらゆる騒動の中で、マクレガーの演じる役がこの作品全体の鍵だ。主人公でありナレーターであるマーク・レントンは正常な世界をひどくあざ笑ったかと思うと、そのあとには皮肉なことにその正常な世界を受け入れてしまう。我々がこの物語の旅に感動をするのは、彼の誠実さや無邪気さ、自分を身ぎれいにしたい思いと完全に自分を見失いたいという狭間であまりにも人間的な気持ちの揺れ動きを見せるレントンのことが大好きだからだ(実際、「人生を選べ」というくだりのセリフは、そのすべてを一挙にカバーしている)。考えてみれば、この映画にはほとんどストーリーがない。全体的にばらばらのエピソードが連なっている。それを繋げ合わせる接着剤的な役割を果たすのが、マクレガーのとてつもなくカリスマ的な演技だ。”象徴的”という言葉は、少し漫然と口にされすぎているが、この作品のマクレガーには紛れもなく当てはまる。