10年後の2030年、東京オリンピック・パラリンピックが開催される今年2020年からそう遠くない未来ですが、目まぐるしく変化する世の中、日本はどのような状況になっているのでしょうか。特に、私たちの生活と深い関りのある経済状況は気になるところです。社会保険制度の変化や、AIの影響を受けた平均年収などについて予想してみました。

  • 2030年日本の「平均年収」が激減?! 300万も夢の話か……?

<2030年の日本経済を考える>

年金受給額の減少や医療費の自己負担増

少し先の日本を想像した時、気になることの一つとして年金の問題があります。2019年に、公的年金の長期見通しを示す財政検証結果が厚生労働省によって公表されました。公的年金は、現役世代の支払う保険料で年金受給者の給付をまかなう「賦課方式」によって維持されていますが、このような年金制度の健全性をチェックするために5年に一度の頻度で行われているのが、この財政検証です。

これによると、現役世代の手取り収入に対する年金受給額の割合(給付水準)は、経済が成長したとしても、2047年には50.8%まで下がり、現在の受給額より2割近く減少するというのです。さらに、経済が低成長の場合は、50%を割り込むと試算されています。

では、10年後の2030年はというと、給付水準を示す所得代替率は最も楽観的な試算で57.2%、最も悲観的な試算では53.8%と発表されています。ちなみに、2019年の年金の所得代替率は61.7%。所得代替率と年金受給額は必ずしも比例しませんが、2030年には年金受給額が下がることが予想できそうです。

若い世代の負担も増えるでしょう。2030年には、65歳以上の高齢者人口が対人口比で3割を超える数になっています。年金財源はさらに悪化し、社会保険料の引き上げにより手取り収入が減る可能性もあるでしょう。さらに、増加の一途をたどる医療費についても、自己負担割合が現役世代、高齢者ともに引き上げられることも考えられます。

AIの台頭で仕事がなくなる?

将来の平均年収を考える上で外せないのが、AI(人工知能)の存在です。今や、資産運用から車の自動運転まで、AIがこなしてくれるようになりました。「これまで人間がやってきた仕事はAIに取って代わられる」などと言われて久しいですが、実際のところどうなのでしょうか。

近年、AIの進化は目覚ましく、様々な分野で活用されています。それにより、大規模な人員削減が予定されている業界もあります。たとえば、金融の世界では、みずほFGがAIなどのIT技術を活用することで、全社員の約3割に当たる1万9,000人分の業務量を減らすことを決定しています。さらに、メガバンク3行では、合計で3万人分の業務量を減らすという試算も出ているそうです。そうなれば、多くの行員が失業の憂き目に遭う事態となりえます。

銀行以外にも、AIの波は保険業界にも押し寄せています。フィンテックの発展により、今ではスマホやパソコンから自分に最適な保険を簡単に見つけることが可能になりました。保険を提案してきた生保の営業がAIによって減少したり、なくなったりする未来が訪れ、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーの仕事も、AIが行うものになるかもしれません。

さらには、弁護士や税理士、会計士といった高度な知識を必要とする専門職の仕事も、すでにAI活用に取り組んでいると言います。海外では、弁護士助手の仕事の一部が、人間の業務からAIに取って変わられているそうです。人気の高いこれらの士業ですが、「一生懸命に勉強して資格を取得しても、人間が活躍できる場が少ない」という事態も、今後はないとは言い切れないでしょう。そして、医師や歯科医師、薬剤師など医療の仕事も、AIが活躍することにより、人間の業務が減る恐れがあります。

このように、専門性の高い仕事までAIがこなす未来は、SF映画の中の話だけではなくなることが現実的になってきたのです。ただし、AIに仕事を奪われる「AI失業」が広がることを防ぐため、仕事から完全に人間が排除されるのではなく、一定数の人間を配置して雇用を守る政策がとられると考えられます。それでも、AIが専門知識を駆使して仕事をすることで、人間の業務は単純作業化し、収入が激減する恐れもあるでしょう。

それでは、もしこうした未来が2030年に訪れているとするなら、平均年収はどのくらいになっているのでしょうか。今より極端に減ることはないとしても、正社員の30代でも300万円台にとどまる可能性はあります。

さらに深刻なのは、非正規雇用です。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、平成30年の非正規雇用の平均年収は179万円となっています。2030年の経済状況によっては、非正規雇用の平均年収が150万円程度に減少しているかもしれません。

<収入を上げるためにできることがある>

2030年の世の中がどのようになるかは、その時が来てみないと実際にはわかりません。しかし、収入が減らないように今から努力することはできます。たとえば、最近では多くの人が副業に興味を持ち始めています。仕事を複数持ち、お金の入り口が増えれば、たとえ会社の給料が減っても全体的な収入は増える可能性があるでしょう。また、投資をして資産が目減りするのを防ぐことも目指せます。どのような未来が来てもいいように、今から行動して備えておくことが大切なのです。