メンタルの強い子に育てるために親は何を心がけるべきか。メンタルヘルスの専門家が解説します

◆子どもの心を強くするカギは?
「三つ子の魂、百まで」といいます。人の気質は3歳までに決まるのか、それとも、生まれて3年も経てば元々の気質がはっきりしてくるということなのか――といった微妙な命題はさておき、できるだけ心の強い子、メンタルの丈夫な子になってほしいと願う親御さんは少なくないかもしれません。

大人になって社会に出れば、つらいことやため息をついてしまうような出来事は多々あるもの。苦しい時代に頼りになるのは、何といっても自分自身の強い精神力でしょう。

ここでは、あなたのお子さんをメンタルの強い子に育てるために、精神医学的にぜひ知っておいていただきたいことを詳しく解説します。

◆結局、適度がよい? しつけは厳し過ぎも甘やかし過ぎもダメ
まずは精神医学的な話に入る前段として、しつけは厳しい方がよいのか、甘やかしてよいのか。結論からですが、これはいずれも過剰にならないことが大切かと思います。

子どもが大人になった時、いわゆる立派な大人――「立派」の定義は意見が分かれるところでしょうが、礼儀正しく、ある程度周りの空気を読め、相手の気持ちを思いやれる、そして、頑張らなくてはいけない時は頑張ることができる――になるためには、やはり子ども時代に受けるしつけは大切です。

とはいえ、厳し過ぎるしつけは、かえって子どもの成長には逆効果。厳しいしつけの極端な例として、生まれたばかりの子どもを千尋の谷につき落としてしまうライオンの話は有名ですが、もしも親のしつけが過剰に厳しくなってしまえば、人間の子どもの心にはトラウマができてしまう恐れもあります。実際のところ、ライオンだって、もしも子どもライオンが谷に落ちれば、すぐさま助けに向かうそうですよ……。

反対に行き過ぎた過保護も避けるべきです。お子さんの自立を妨げるほどの過保護の弊害は近年いわれている通りですし、もし子どもが過剰にママにべったりに育ってしまったら、ある程度成長してから周りから、からかわれてしまったり、いわゆるマザコンの大人になってしまってからでは、お互いになかなか大変なのではないかと思います。

いずれにしても、しつけはほどほどに、行き過ぎた過保護の弊害にはぜひご留意ください。

◆子どもの頃に芽生えた劣等感は大人になってからも尾を引く?
お子さんには、お子さんの世界があります。周りの子どもたちと遊んだりしているうちに、子ども心に「負けている……」と、引け目を感じることは、よくあること。そして意外に、それは大人になった後まで尾を引くものです。

それは自分自身の能力面だけでなく、例えば、「周りの子どもたちが皆、親に動物園へ連れて行ってもらっていた頃、自分だけはいくら言っても連れて行ってもらえなかった」といった記憶も、大人になった後も意外と覚えている人はいるものです。

劣等感は子ども心に自信を失わせますが、反対に、自分に自信を持てれば、劣等感は和らぎます。自信を持たせるために作りたいのが、何かしらの「得意分野」です。人間誰しも、得手不得手がありますが、得意なことは子どもの時分から、はっきりしていることが多いように思います。

例えば、ダンスの才能があるお子さんなら、無理に苦手なピアノを習わせて劣等感を感じる場面ばかりにするより、好きなダンスを好きなように楽しくやらせておくことで自信が持てるでしょう。やがてすごいダンスキッズになって、周りから一目置かれるようになるということはないかもしれませんが、本人が好きで自信を持てるようになれば、それだけでも充分です。

改めて言うまでもないことかもしれませんが、お子さんが得意な分野をぐんぐん伸ばしていけるように手助けするのがベスト、ともいえるかもしれません。

◆性的発達段階とトラウマ
さて、ここから一段階深く精神医学的なお話になります。子育て中の親御さんには、子どもの性的発達段階はぜひ、意識していただきたいところです。

性的発達段階とは、著名な精神医学者ジークムント・フロイト(1856~1939)が唱えた概念のひとつで、フロイトによれば、人は生まれてからいくつかの性的発達段階を経て大人へと成長していきます。

性的発達段階には、授乳期である「口唇期」(生後18カ月頃まで)、トイレ訓練の時期である「肛門期」(生後18カ月~3歳頃)、異性への関心が芽生える「エディプス期」(5歳~6歳頃)などがあります。フロイトによれば、もしも、子どもが性的発達段階のどこかで、つまづいてしまうと、大人になってから、心の病気のリスクが高まります。

例えば、口唇期で口唇の欲求が充分、満たされなかった場合、大人になってから他人に不信感を持ちやすくなるとされています。また、肛門期に欲求のまま、排泄がやりたい放題だった場合、大人になってから、いい加減な性格になりやすいといったことがフロイトの理論でいわれていますので、親御さんは、お子さんが性的発達段階のテーマを問題なく、こなしているかどうか、目を光らせておいた方がよいかと思います。

また、子どもが大人になってから、心の病気のリスクが高まる代表的原因のひとつに、幼少期のトラウマがあります。「交通事故で入院していた時、長期間、家に帰れず寂しかった」「見知らぬ旅先で迷子になって、怖い思いをした」「遊び友達に不幸があった」など、時には、子どもの心が大きく傷つくような出来事が起きてしまうこともあります。

小さなお子さんなら、心のつらさを上手く表現できないでしょうが、それでも、もしも、お子さんが何度も夢に出てくるようなつらい体験を口にするようなことがあれば、親御さんはぜひ、お子さんの話を聞いてあげて、その体験を過去のこととして、お子さんの心の中で終わらせることができるように手伝ってあげてみてください。

◆最後に、子は親の鏡ということも、お忘れなく!
子育て中の親御さんに変にプレッシャーをかけるつもりはありませんが、子どもは小さいながらも親の言動を隅から隅まで実によく観察しているもの。お子さんが自分の言動を真似しているのに気付いて、思わず、ドキッとしたことはなかったですか?

実際、親のライフスタイルの影響で、子どもが大人になった時、心の病気のリスクが高まってしまう場合もあります。例えば、アルコール依存症などもそのひとつです。一般に、心の病気は遺伝的、心理的、社会環境的要因がネガティブに相互作用した結果、発症しますが、アルコール依存症の場合、お酒に飲まれてしまっている親の姿が子ども心に複雑な傷を作ってしまい、それが病気のリスクを高めてしまうといわれています。

昔から「子は親の鏡」という言葉もあります。お酒に関するような問題行動はもちろんですが、子どもに真似されたら困るような、ご自分の言動には充分、お気を付けください。

文=中嶋 泰憲(医師)