左からジークフリード・キルヒアイス役の梅原裕一郎、ラインハルト・フォン・ローエングラム役の宮野真守。

アニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱」第3章の舞台挨拶が本日11月30日に東京・丸の内ピカデリーにて開催され、ラインハルト・フォン・ローエングラム役の宮野真守とジークフリード・キルヒアイス役の梅原裕一郎が登壇した。なお本記事は映画の内容に関する重大なネタバレを含むため、第3章鑑賞後の閲覧を強くおすすめする。

壮大な音楽とともに、観客の前に姿を現した宮野と梅原。昨日11月29日に封切られ、上映2日目を迎えた気持ちを宮野は「プロジェクトの立ち上がりのとき、ここ(第3章)までを目指していたんです。オーディションのときも第3章のシーンを演じたり、ここまでをしっかり全うしたいと思ってました。それをついに皆さんに観てもらえるのは非常にうれしく思いますし、いろんな感情が込み上げています」と明かす。梅原は「キルヒアイスを演じている身としては、このお話が1つの山場。こういう退場の仕方になってしまったんですけど、キルヒアイスの見どころの1つでしたので、演じられて、そして皆さんに劇場スクリーンでお届けできてうれしかったです」と語った。

本編を鑑賞した感想を問われると、宮野は「思い出すだけで苦しい……何をしゃべっていいのかもわからないくらい」と、第3章で凶弾に倒れたキルヒアイスに言及。「梅ちゃんと、しっかりとラインハルトとキルヒアイスの関係性をお芝居できてよかったなと思うし……うーん……思い出すと、なんだろう、入り込みすぎちゃって言葉が出てこないんです。苦しい思いが込み上げてしまって……。でも、梅ちゃんと一緒にお芝居できた時間は非常に有意義でした」と心境を表す言葉を探し出すように答えた。梅原は「ラインハルトは、覇道を行くには変わっていかなきゃいけない。第3章は、ラインハルトの乗り越えなきゃいけないところを、乗り越えたお話です」と話し、キルヒアイスについて「登場したときから死ぬ直前まで一貫していたんです。彼なりに成長もしているんですけど、最初から本当にできた人物で隙がないので、いい意味で変わらない。だから最後のシーンまで清々しくいたいなと。最後のシーンはアフレコする際に迷ったところなんですけど、キルヒアイスはラインハルトが宇宙を手に入れることを少しも疑ってないので、自分が死んだとしても後悔はなくて、その一本筋が通ったところをどうにか表現できないかと思っていました」と思いを打ち明ける。

宮野は「ヴェスターラント(の惨劇)のことは、僕もラインハルトを演じるうえで悩んで悩んで苦しんだ決断ではあったんです。そこをキルヒに突かれて、ぶつかるシーンがオーディションで演じたシーンでした。そのときから(梅原と)2人で組んでのオーディションだったんですけど、僕らの間合いでやっていいよと。そこで『ラインハルトとキルヒアイスの関係が見えた』って言ってもらって……あのシーンで、僕は(ラインハルト役に)選んでもらったんです。それから僕らの関係性を見せていけたらと強く強く思っていたので、アニメーションで演じられてグッとくるものがありました」と、オーディションを述懐。キルヒアイスへの思いを絞り出すように語る宮野とは対照的に、梅原はキルヒアイスが死ぬシーンのアフレコに臨む際、「朝から『今日は死ぬんだ』って思って、意外と清々しい気持ちでした」と微笑む。「宮野さんと掛け合ってみて思ったのが、先立つほうより先立たれるほうがつらいんだなと。隣でお芝居していて感情を引っ張られないように、キルヒアイスとして正々堂々と死にたかったので、2人で感情がぐちゃぐちゃになったら困ると踏ん張りながらお芝居をしました」と語ると、宮野は「僕は踏ん張れなかったね(笑)。ぐちゃぐちゃになってしまった」と吐露した。

舞台挨拶の終盤には、多田俊介監督から2人へのサプライズメッセージが読み上げられる。「『銀河英雄伝説』は、まだまだ先のある作品ですので、続けていきたいという思いでおりますが、まずは24話まで演じ切ってくださったお二人に、感謝とお疲れ様という気持ちをお伝えさせて頂きます」と代読されると、観客から大きな拍手が贈られた。梅原は「キルヒアイスの最後のアフレコで、音響監督の三間(雅文)さんからお花をいただいて、そのときに『終わりって思わないでね』って言われて。もし次が作られれば、回想シーンとかで登場できる。その言葉はありがたいですし、次があることをものすごく期待しています」と力強く話す。最後の挨拶で宮野は「キルヒアイスの存在ってこんなに大きかったんだなってことを感じていて。もうオープニングを観れないんです。ブリュンヒルトとバルバロッサ(ラインハルトとキルヒアイスの戦艦)が並んで飛んでいて、ラインハルトとキルヒアイスが銀河に夢を馳せている。そして幼い3人(ラインハルト、キルヒアイス、アンネローゼ)の姿があって、僕に突き刺さってしまうものがある。でもこうやってみんなに作品としてしっかり観てもらえるのはうれしいですし、キルヒがずっといてくれるからこそこれからの覇道に進んでいける。その力強いものは僕自身も示していきたいと思ってるし、沈んでばかりはいられない。この先も制作されることを信じて、これからも銀河を駆け抜けていきたい」と語った。そして宮野は梅原に握手を求め、抱擁。ファーストシーズン「邂逅」全12話、そしてセカンドシーズン「星乱」全3章をともに歩んできたお互いを称え合った。

多田俊介監督からのメッセージ

宮野さん・梅原くんへ

「銀河英雄伝説 Die Neue These」第1話から24話まで長きにわたり、
ラインハルト、キルヒアイス、各役柄に大して誠意を尽くしてお芝居をして頂き大変嬉しく思っております。

◆宮野さんへ
宮野さんへのオーダーでは『全く新しい「ラインハルト像」、ラインハルトは20歳そこそこの若い青年ということを意識してほしい、けどただの青年ではいけない』とお伝えしました。そのイメージが作品の中で余すことなく表現され、とても宮野さんらしいラインハルトを見ることができました。とても満足しております。
宮野さん、ありがとうございます。

◆梅原くんへ
キルヒアイスは「能ある鷹は爪を隠す」といった言葉があるように、『ラインハルトと並ぶ才能を秘めながらも、ラインハルトに付き従う青年として演じてほしい』というオーダーを出させてもらいました。それを、梅原くんは見事に表現し「強くあり、でも奥ゆかしさもある」理想のキルヒアイスを演じてもらえました。梅原くん、ありがとうございます。

「銀河英雄伝説」は、まだまだ先のある作品ですので、続けていきたいという思いでおりますが、まずは24話まで演じ切ってくださったお二人に、感謝とお疲れ様という気持ちをお伝えさせて頂きます。

(c)田中芳樹/松竹・Production I.G