• (C)フジテレビ

――今回は、キャスティングがどの方もぴったりだと思いました。

いやー、よくキャスティングしましたよね(笑)。次から次へと良いキャストからどんどん決まっていって。マスオさんが西島秀俊さんとか、夢のようじゃないですか。濱田岳(カツオ)なんかもすごく的を射ているし、ワカメちゃん(松岡茉優)もそうだし。中でも、成田(凌)君のタラちゃんがいいなと思いました。よく見つけましたよね。ホームドラマでこのキャスティングって、なかなかできないですよ。天海さんももちろんそうだけど、キャスティングはすごくいいなと思いました。

――誰もが知っているキャラクターなので、皆さんの役作りにご苦労などはあったのでしょうか?

『サザエさん』のカツオを見て、ワカメを見て、まあイクラちゃんは「バブー」しか言ってなかったけど(笑)、みんなあのキャラクターのポイントを何か持ってくるんですよね。芝居をするための材料として、それをまんまやるわけじゃないんですけど、それを種にしてやるから面白かったんです。

例えば、サザエさんだったら、手を振るときに反対側の下ろしている手を開いているとか、マスオさんは「エー!?」って言うとか、波平さんは「バカもん!」って怒るとか(笑)。やっぱり『サザエさん』って50年やっているそれぞれのキャラクターの要素があるじゃないですか。そういう要素がある役作りってなかなかないことだから、それを楽しんでいるっていう感じでしたね。

でも、それに全部引き込まれちゃいけない。新たなものを作っているので、そこまで近づけなくていいよっていうのもあって、その辺の手加減がすごく面白かったなと思いました。何もないところじゃなくて、おぼろげな土壌があるところから積み上げていくっていうのは新しい感覚の作品作りでした。

  • (C)フジテレビ

■サザエさんをどれくらい基にするか

――監督と天海さんは初めてのタッグでしたが、どんな印象でしたか?

天海さんはね、もう天海さんしかいないよね(笑)! すごいですよ、宝塚の中でも別格。サザエさんと天海さんって最初は全然ピンとこないじゃないですか。だって、サザエさんはその辺の街にポッといそうな感じなのに、天海さんは街の中にポッといないですから(笑)。でも、やっぱり笑い顔とか、ふとした表情とか、男役の天海さんじゃないかわいらしさというか、ほわっとしている、そういう部分がすごくサザエさんだなと思いましたね。

――20年後のサザエさんの髪型をどうしようか、すごく悩んだとお聞きしました。

今までの実写版の『サザエさん』はアニメに寄せて作っていたと思うんですけど、20年後ということで、ある意味リアリティのある感じを出して、多少変貌・変容させていってるんです。それをどの辺に置いていくか、どのくらいベースのサザエさんを基にするか、大事にするかっていう加減は難しかったなと思いました。

  • (C)フジテレビ

――監督の中で、このキャラクターに注目してほしいという人はいますか?

それはみんな良かったですよ。さっき出た成田君のタラちゃんもすごく良かったしね。僕は成田君とも初めてだったんだけど、あぁこんな風にできるんだ…って思いました。松岡茉優ちゃんも演技派として活躍されているのでやっぱりすごいなと思ったし、濱田岳はね、まさに濱田岳なんですよ(笑)。あと西島さんとも初めてですごく良かったし、ヒトデちゃんの桜田ひよりさんは、また良い役者さんと新たに出会えたなと思いましたね。編集をやってると、「ああ、この子は分かってるんだなぁ」って、すごく感じました。

他にも、伊武(雅刀)さんは、最近はすごくエグい役が多くてこういうホームドラマのお父さん役があんまりないってすごく楽しんでいらしたし、フネさんの市毛(良枝)さんも初めてだったんですけど、かつてお嫁さんにしたいナンバーワンと言われていたのでその片鱗がやっぱりありましたね。だからちょっと話が戻りますけど、いろんな意味ですごく良いキャスティングでした。それだけに、少ししか出番のない人はもったいないなと思いましたね。

――連ドラでやるというのは、いかがでしょうか?

いやあ、僕の口からは何も言えないんだけど(笑)。でも、こういうお祭りみたいな感じでやるのも、いいと思いますよ。

  • (C)フジテレビ

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に今回の見どころを教えてください。

今までの『サザエさん』にはなかった、子供が大人になった彼らだからこその葛藤みたいなところですね。家族から外に出て、1人1人になっていって、それぞれが悩みを抱えて、だけど家族に戻ってきて頑張ろうと思える。そういうお話なので、それぞれがバラバラに悩んでいる物語をどう描いて、それが最後にどうまとまっていくか…そこを見ていただきたいです。

  • 鈴木雅之監督

●鈴木雅之
1958年生まれ、東京都出身。79年に日活芸術学院卒業後、共同テレビジョンを経て、94年にフジテレビジョン入社。『白鳥麗子でございます!』『29歳のクリスマス』『王様のレストラン』『世界で一番パパが好き』『ショムニ』『HERO』『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』などのドラマや、『GTO』『HERO』『プリンセス・トヨトミ』『マスカレード・ホテル』などの映画を監督。編成局第一制作室長を務めた後、現在は第一制作室役員待遇エグゼクティブディレクター。