NEW YORK, NY - APRIL 10:  A General View of Michael Pineda #35 of the New York Yankees pitching against the Tampa Bay Rays during the New York Yankees home Opening game at Yankee Stadium on April 10, 2017 in New York City.  (Photo by Al Bello/Getty Images)

女性がマイナーリーグで初のフルタイムコーチ

 シカゴ・カブスは公式ホームページで傘下マイナー組織のコーディネーター及びコーチングスタッフの新たな人事を発表し、その中でレイチェル・フォールデン女史を打撃研究所の主任とルーキーリーグの4thコーチに起用することを明らかにした。女性がマイナーリーグでフルタイムのコーチになることはMLBの歴史で初めてのことだ。
 
 フォールデン女史は元プロソフトボール選手。引退後は自ら設立したトレーニング施設で最先端の科学的データに基づいた野球とソフトボールの教室を主宰していた。また別の野球教室で打撃コンサルタントを務めていた。いくつかの大学と高校でソフトボールチームでのコーチ経験もある(自身のホームページによる)。
 
 奇しくも同日、フォールデン女史と同じファーストネームを持ち、また同年齢(32歳)でもあるレイチェル・バルコベック女史がニューヨーク・ヤンキース傘下マイナー組織の巡回打撃コーチに就任することも発表されている。
 
 バルコベック女史も大学でソフトボール選手であったが、専門は運動科学で修士を取得している。卒業後はストレングス・コンディショニングスのコーチとして、セントルイス・カージナルスとヒューストン・アストロズのマイナー組織での経験が既にある。
 
 元ソフトボール選手の2人には無論のことMLB傘下での選手経験はない。それどころか野球チームに所属したことすらない。女性であるということを差し引いても、カブスやヤンキースといった伝統あるチームが彼女らのように最先端テクノロジーに明るい人材を傘下マイナー組織の指導陣に招き入れるのは、MLB組織が近年進めているダイバーシティ(多様性)への取り組みと同時に科学的な指導方法の導入を象徴するものだと言えよう。
 
 カブスは10月からフォールデン女史が務めていた野球教室の主宰者であるジャスティン・ストーン氏を組織全体の打撃指導を統括するディレクターに採用している。ストーン氏もまたプロ野球選手としての経験を持たない、データや運動科学に基づく打撃指導のスペシャリストだ。さらにカブスはストーン氏と同じような分野の人材を何人も民間の野球教室や大学からコーチングスタッフに迎えることを発表している。彼らに共通するのはコーチよりむしろコンサルタントのようなイメージだ。




白人男性優位な一面があるのも事実

 往年の名選手が現役引退後のセカンドキャリアとしてコーチや監督に就任し、自らの経験を基に後進の指導にあたるという従来のやり方はどうやら過去のものになりつつあるようだ。
 
 やはりNPBやMLB傘下での選手経験を持たず、ミネソタ・ツインズ傘下ルーキーアドバンスドリーグでコーチを務める三好貴士氏はこのように語ってくれた。
 
「MLBは失敗を恐れない組織なのです。ヤンキースやカブスは長い歴史があるチームですが、その伝統は大切にしつつも、新しい取り組みを積極的に行っています。僕がいるツインズもキャッチャー経験がないタナー・スワンソンという人を球団のキャッチング統括コーディネーターにしました。この人は大学野球では有名な理論家でしたが、プロでの経験はまったくありませんでした」
 
「今回の女性コーチが採用されたのもその流れでしょうし、野球界全体から見れば多様性が広がることは間違いなく良いことです。ただ野球界にはまだまだ白人男性優位な一面が残っていることもまた事実です。僕らマイノリティが周囲に認められるには目に見えない困難を乗り越えていかなくてはいけません。彼女らも最初は苦労すると思いますが、頑張ってほしいですね」
 
*三好氏は米独立リーグのソノマ・ストンパーズ監督時代に1950年代以降初めての女性プロ野球選手をチームに受け入れた経験もある。
 
 
角谷剛