STMicroelectronicsの日本法人STマイクロエレクトロニクスは、11月20日~22日にかけて神奈川県・パシフィコ横浜にて開催されている組込み総合技術展 & IoT総合技術展「ET&IoT Technology 2019」にて、スマートインダストリアルをターゲットとしたセンサやAIを活用したソリューションを披露している。

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    STブース前面で行われているセンサやAIを活用したスマートインダストリ向けデモ

中でもブース前面に設置されたステージでは加速度センサやモーションセンサと機械学習などのAIを組み合わせた複数のデモが実演されている。例えば予知保全とMEMS加速度センサを組み合わせた「モータ高周波振動検知デモ」は、同社の5KHzまでの帯域を検出可能なMEMS加速度センサを活用することで、モータの振動の変化を幅広い周波数帯で検知。どういう状態になれば、どれくらいの不具合が生じるのか、といったことの判定などにつなげることができる仕組みが構築されている。また、機械学習とMEMSモーションセンサを組み合わせた「モータ故障判定デモ」は、6軸モーションセンサデバイス内部で機械学習で得たデータをもとにした推論処理を入れ込むことで、センサ自身がモータの回転異常把握するといったことを可能とした。プロセッサなどの演算部分を追加することがないため、消費電力的にも推論部の追加だけなので、マイクロアンペアオーダーの増加だけで済むという。

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  • モータ高周波振動検知デモの様子。一般的の加速度センサだと1~1.5kHz程度までが測定限界であったが、5KHz対応することで、柔軟にモータ振動を把握することができるようになった。今回のデモでは4KHz付近で振動が発生している

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    モータ故障判別デモの様子。モーションセンサ内にAI(推論処理)を搭載することで、システム変更なしに回転異常を検知できるようにした

STM32マイコンでAI画像認識を実現

また、STM32マイコンを活用したデモとしては、AI画像認識のデモが複数行われている。例えばボルトとナットの画像認識。これは、ボルトなのか、ボルトに巻きついたナットなのかをカメラで判別するというもの。ナットはボルトのどこの位置にあろうと、ナットとして把握ができることが示されていた。

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  • STM32を用いた物体認識デモ。ボルト単体なのか、ボルトとナットが組み合わさった状態なのかを随時判別することができていた

STM32を用いたAI画像認識として奔放初公開となっているのが、「Food Classification(食品分類)」のデモ。これは18種類の画像をカメラで識別し、それぞれが何であるか、といったことを分類するもので、Cortex-Mベースのマイコンで、200msを切る推論時間で、認識精度はほぼ98%以上を達成できることが示されていた。

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  • STM32を用いたFood Classificationのデモ。映像の食品を撮影し、それが何であるかを判別するというもの。デモでは18種類の食品が登録されており、200msを切る速度で高精度識別ができることを示していた。ちなみに開発チームは、同社の本社がある欧州とのことで、表示される食品は欧州的?なものが多い

このほか、STM32のプロセッサ(MPU)「STM32MP157」を用いた複数の処理の同時実行デモも行われている。これはモータの制御をCortex-M4で、そこからのフィードバックされたデータの演算処理をCortex-A7(1コア。もう1コアは通信用途などのために非使用状態)でそれぞれ処理しつつ、グラフィック制御なども並列に実行することが可能であることを示すというもの。

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    STM32なのにマイコンではなくMPUという新機軸を打ち出した「STM32MP1シリーズ」。Cortex-A/Mのマルチコア構成を採用しており、その性能はかなり高い

STM32のMPUシリーズは2019年に登場したばかりの製品だが、産業分野からはさまざまな側面から声がかかっているとのことで、今後出てくるであろう第2世代以降に向けて、まずは順調な滑り出しといった状況となっているという。