皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、念願のリタイア生活がいよいよ実現する40代の独身会社員。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◆リタイアに向けて、リスク資産の配分は落とすべきでしょうか?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回の相談者は、念願のリタイア生活がいよいよ実現する40代の独身会社員。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◇相談者
シングルデラックスさん(仮名)
男性/公務員/47歳
神奈川県/実家

◇家族構成
父(自営、年金生活)、母(無職、年金生活)

◇相談内容
即リタイアを想定した場合、資産構成は組み替える必要があるでしょうか。リスク資産を減らさなければならないとすれば、どの程度でしょうか。リスク資産からの配当等で今日に至るまで相当メリット(年間200万以上の不労所得)を得てきました。

リタイア後のアルバイトなどの労働所得は考えていません。生活費は1カ月15万~20万円を想定しています。最近、地方にリタイア後に住むマンションを購入しました。

◇家計収支データ
「シングルデラックス」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足
(1)ボーナス「100万円」の使いみち
旅行、他の支出で50万円、貯蓄50万円

(2)リタイア用マンションについて
地方の駅近で物件価格3500万円。うちローン20年返済は2000万円(返済終了66歳、年間110万返済額)、金利は当初5年0.75%、以後1.35%。

(3)保険について
・個人年金保険(55歳から終身、年金額99万円)=保険料3万5000円
・がん保険(終身タイプ終身払い、入院5000円)=、保険料5000円
・終身保険(60歳から生存金5年毎に200万円×4回、死亡保障200万円、入院1万5000円)=保険料1万円

(4)趣味娯楽費について
主に往復航空運賃、付随する旅行代金

(5)退職金と年金について
退職金1200~1300万円、公的年金12万円程度

(6)実家について
築40年だが、今後大きなリフォームがあれば直す。

(7)相談者が語る、これまでの経緯と今後
1. 幼少より集団行動が苦手、生理的に忌避する傾向(小⇒中学⇒高校、例外で大学は束縛力が弱いので感じなかった)。

2. 就職:入った1日目よりこの規律っぽい生活が30年以上続くのかとうんざり思う。同期の中で1秒でも早くリタイアしてやろうと決意、1日たりとも思わなかった日はない。いじめられたとかブラック企業とかそういうことではない。仕事も、一部であるが、楽しいと思うこともあり。要は、本能的にサラリーマン生活が向いてないと感じたため。

3. 20歳ぐらいより、「両親子供2人が「標準世帯」と見るなんてそのうち、そんな見解なんぞ崩壊するよ」と、思っていたフシあり。自分の好きなことのために時間を使い、人生を終わりたいと決意。裏腹に蓄財・投資に励むようになる。(投入した労力・知力の割に成果がなかったと悔いあり。もっと機敏に動けたのでは……。成果があるとしても時間が掛かりすぎ、自分の要領の悪さを思い知らされる)その後いまにいたる。

◇FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1:今後の収入だけで老後資金を確保
アドバイス2:それでも資産配分は1対1に
アドバイス3:繰上返済で固定支出を減らす

◆アドバイス1:今後の収入だけで老後資金を確保
資産構成について考える前に、即リタイアされた場合のキャッシュフローを考えてみたいと思います。まずリタイア後、アルバイト等はせず、その代わりに生活費は15万~20万円に落とせるとのこと。仮に20万円として、85歳までの38年間で9120万円。

一方、今後の収入ですが、退職金1200~1300万円に加え、個人年金保険から55歳以降、終身で年金額99万円支給されますから、30年間で約3000万円。公的年金は65歳から月12万円ということなので約2900万円。あと、終身保険から生存金として、計800万円が受け取れます。

これらを合計すれば、リタイア後の確定している総収入は約8200万円。つまり、あくまで生活費だけで試算すれば、貯蓄や投資に回しているお金から1000万円程度取り崩すだけで、老後生活がカバーできるということになります。

また、85歳以降も公的年金と個人年金保険で月20万円の収入が確保できていますから、長寿によりリスクもさほど心配することはないといえるでしょう。

したがって、極論をいえば、投資部分の大部分を損失してしまっても、老後の基本生活資金は確保できているということになります。

◆アドバイス2:それでも資産配分は1対1に
では、今の資産状況について今後も手を付けなくていいかといえば、やはりある程度、リスク資産は減らしておく方が賢明だと思います。

先の生活費の試算はあくまで、老後生活全般にわたって支出が一定と想定した場合です。途中、病気やケガ、実家のリフォーム、その他、不測の事態でまとまった支出が発生する可能性は否定できません。

そもそも、貯蓄は現在250万円ですから、退職金を全額それに加えても1500万円。個人年金保険の年金支給までの8年間、これだけでは生活費が不足すると考えられます。

理想としては、貯蓄と投資の資産配分は1対1。65歳をめどに徐々に投資商品を現金化していく。

これまで長年、安定した運用で不労所得を得てきたのですから、売却のタイミング等も熟知していると思います。ご自身の判断で効率よく、リスク資産を減らしてみてください。

それでも6000万円程度、投資商品が残ります。老後の楽しみとして運用する(=リスクを取る)には十分な額ではないでしょうか。

◆アドバイス3:繰上返済で固定支出を減らす
現金を増やすべきだとするもう1つの理由は、住宅ローンです。66歳のとき完済ということですが、それを待たずに繰上返済で完済してしまってはどうでしょうか。借入金は2000万円で金利は当初5年が0.75%、以後1.35%。支払う利息は220万円ほどになります。

2000万円を投資に回せば、それを超える運用益を生む可能性もあるでしょう。とはいえ、なるべく固定支出を減らし、生活費を抑えることは、とくに年金等の収入がまだないリタイア生活にとってはプラスです。

ローンがなくなると、家計に余裕が生まれ、結果的に無駄な支出が増えてしまうというケースもありますが、相談者の場合はそういう心配もないと思われます。

◆「シングルデラックス」さんから寄せられた感想
この度は、私めのような者に親身なアドバイスありがとうございます。漠然たる未来における経済的不安でしたが、大変心強く思っています。少し心の荷が下りたようでもう少し勤め人頑張ってみるかみたいな気持ちも湧いてきました。

勤め人現役中は、かような凡人でもタダみたいな当初金利0.75%で借りられた住宅ローンも抱えながら過ごしたいですし、先生からアドバイスいただいた資産再構築工程は、もう数年辛抱して、実行開始したいと思います。

先生をはじめ、記事をおまとめいただいた記者様に御礼申し上げます。

教えてくれたのは……深野 康彦さん

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武

文=あるじゃん 編集部