井上直久氏も絶賛!宮崎駿監督の絵や文章を中心に約640点!ジブリ美術館新企画展示

2001年10月1日にオープンした三鷹の森ジブリ美術館は、宮崎駿監督はじめ美術館スタッフが設立時より一貫してきた「お客様に面白いものをご提供し、楽しんでいただく」をモットーに、建物から数々の企画展示まで制作してきた。そこで11月16日(土)よりスタートした新企画展示『「手描き、ひらめき、おもいつき」展〜ジブリの森のスケッチブックから〜』(〜2021年5月予定)では、その創作の過程を宮崎監督が描いてきた絵や文章を中心に約640点(模型、立体物、映像作品含め)を展示紹介している。

まず第一室は、企画展示『千と千尋の神隠し』を皮切りに宮崎監督が携わった企画展示の数々の制作作業を紹介。宮崎監督自身が展示したい物などをイメージボードに描いたり、企画テーマからスタッフに伝えたい物を漫画で表現したり、あるときは何度も言葉を紡いで伝えたり、宮崎監督と美術館スタッフのやり取りが垣間見える展示になっている。
もう一つの第二室では、アニメーション制作会社である「スタジオジブリ」が美術館を作ろうとした経緯や、開館までに生まれた数々のアイデアを多数展示。宮崎監督が建設中の設計図面にまで修正を入れているのを見るとその思いが感じられる。

また開催に先駆け11月15日(金)に内覧会が行われ、スタジオジブリ作品『耳をすませば』に美術として参加し、ジブリ美術館オリジナル短編アニメーション「星をかった日」(上映時間:約16分)の原作者であり、画家の井上直久氏が大阪から来場し、安西香月館長と企画展示に関するスペシャルトークが行われた。

▲安西香月館長(左)と、井上直久さん。 (C)Museo dArte Ghibli (C)Studio Ghibli

安西館長がさっそく井上さんに見た感想を伺うと、「もう、面白くて(笑)。いろいろすごく情報量が多いんでね、(お客さんは)まずビックリされるんじゃないかと思うんです。見たことないものが山盛りで」と率直な感想を伝えた。
また井上さんが宮崎監督と初めて会ったときのことに触れ、「監督がね、『井上さんと僕は同じなんだよ!』ってジブリへ戻って言われたそうなんですけど、『えっ!? どこが!』って思ったんですよ、外見は全然違いますし(笑)、やってる仕事も違うんだけどなぁって思って話聞いてましたら共通項がね、『始めてから考える』っていう事なんです。つまり自分が絵を描くときは画面に下描きしないで色をバババッと撒き散らして出来たランダムな模様を応用したり、思いついたりした模様で絵を描いて行くんです。宮崎さんそれを知って、『実は僕もそうなんですよ。映画全体のイメージは何となくあるんだけど、まだ何も見えないところから作り始めるんでね、だから最後のほうは大変なんですけども、それが面白いんです』と」二人の共通項を明かしてくれた。

安西館長が、ジブリ美術館の企画展示は今回で19回目で、そのうち宮崎監督が関わったのが15回、第一室ではそれを中心に展示し、第二室では「美術館が出来るまで」という形で展示していると説明。続いて井上さんに印象に残った展示を尋ねると、美術館建設当時の話になり「一番最初、オープン前に入れてもらって、宮崎さんに『ここは良いですね。住むのに気持ち良さそうなとこですね』って言ったんですよ。そしたら宮崎さんが『良いですね、井上さんここへ来て住みませんか?』って。『美術館の前に井上さんの絵に出てくるような小さな可愛いお家を建てますから、そこに住んで引き出しをベッドにしといて…』とかって具体的なんですよ(笑)。美術館に毎朝そっから通って館内で絵を描いてもらったり、子どもの相談に応じるのをしてもらったらどうでしょうって言うから、面白いですねって言うたんですよ。そしたら横にいた篠原征子さんといって、ラナとかクラリスをね描かれた僕の大好きな女性のアニメーターの方がおられて、笑いながら『井上さん、そこでいいですよって言ったらダメですよ』って、『次来たら、本当に小屋が建ってますから』って言われて、それはちょっと困るなと(笑)。じゃあ開館とあわせて来て壁に絵を描きますかって事で壁に描かせてもらったんです。宮崎監督の特徴はそれなんですよね。『面白いから』と言ったら絶対やるんですよ」と楽しそうに当時を振り返った。

宮崎監督はとにかく面白くて皆がビックリするような事が好きだという話から、井上さんが本企画展示のメインビジュアルの絵を見ながら、「この絵もね、好きなんですよ。監督らしき人が…人じゃ無いですけど(笑)、『そうだ!』って言ってるでしょ? 後ろでちょっと困った顔してるのがスタッフなんですよ(笑)。自分のポリシーをものすごくハッキリ持っていらっしゃって、人を喜ばせるには、自分がこれで良かったと思うにはどうしたらいいかってことを考えてらっしゃる。でもその後ろでちょっと困ってる人も常に意識にある(笑)。僕、監督のそこが好きですね」。



また今回の企画展示の中で井上さんが特に好きなのが、石臼のことについて宮崎監督が描かれたものだそうだ。これは美術館のオリジナル短編アニメーション『パン種とタマゴ姫』(上映時間:約12分)の制作展示のときのもので、宮崎監督のすごく夢のある話の中にそういう昔から日本にある石臼みたいなものがちゃんと入っていて、それをまたわかりやすく楽しく描いているのが好きだと話してくれた。

▲2階ギャラリーでは2010年の企画展示「ジブリの森のえいが展」よりオリジナル短編アニメーション作品を紹介。宮崎駿監督による『パン種とタマゴ姫』の「臼の仕組み」もここに展示されている。 (C)Museo dArte Ghibli (C)Studio Ghibli

安西館長も特に好きな展示として、オープン2年目にやった『天空の城ラピュタ』の展示で監督の希望で次々に作ったパネルのために描かれた原図を挙げ、当時は意識してなかったが、パズー達が逃げていくシーンの所をずっと解説するために描いたこの原図を今回改めて見て、宮崎監督が映画の中で紹介しきれなかった事を展示で描かれたんだなと思ったと明かした。

▲『天空の城ラピュタ』の展示より。 (C)Museo dArte Ghibli (C)Studio Ghibli

井上さんは宮崎監督と一緒に映画制作していた当時を振り返り、「僕自身が驚いたのは、私が担当したシーンで高い塔がいっぱい建ってて、それを上から映していって下までカメラが行くっていうシーンがあるんです。宮崎さんは最初、簡単に描いたスケッチを持って来られて、絵画では遠近法と言いまして遠くのものは1点に収束していくように描くんです、でもその絵を見るとそれがバラバラなんですよ。『宮崎さん、消失点がバラバラになってますけど、このままでいいんですか?』って言ったら、ガッハッハッて笑って『井上さん、アニメなんていい加減なんですよ、好きにして下さい』って言われたんですよ(笑)。えええ〜! そういうもんなんかと思ってですね、自分流に1点に消失点作ってスカッとした絵にしたら、あれ? 何かおかしいなぁと。手で枠を作って上からこう画面を下ろしてくるとですね、宮崎さんが描いたスケッチはカメラが本当に降りてるように見えるんです。僕の絵はただ1枚の画を映してるようにしか見えない。『宮崎さん、こうしたら迫力無くなったんですけど、どうしたんでしょう』って言ったら、また笑いながら『わかりましたか、映画っていい加減なんですよ』って(笑)。聞いたらそれはカメラが降りてきてるんだと。だから消失点もカメラと一緒に降りてくる。しかもカメラが降りきったところで下へ振っていくので、今度は消失点が下へ行きながら下がってきてまたカメラが上がってるんだって言われて、えええ〜! 何てすごい事してるんだと思って。アニメとは恐ろしいもんだと思ったんです」と宮崎監督が描く空間との兼ね合い度の凄さ、動く視点と1点を見つめる視点の違いについて話してくれた。

▲宮崎駿監督と井上直久さんが一緒にやった映画『耳をすませば』のポスター。(C)1995 柊あおい/集英社・Studio Ghibli・NH

もう一つ、井上さんがいたく感動されたのが紙で作られた「トトロぴょんぴょん」のゾートロープ。これは館の入口進んで右手奥の常設展示室にある立体ゾートロープ「トトロぴょんぴょん」を作るために見本として紙で制作されたもので、「僕、感動したのは、子ども達があの完成品見たらこれは魔法の世界で自分たちにはとても出来ない夢の世界なんだと思うと思うんですけど、あの紙のを見たらこれなら僕たちだって出来るんじゃないかって思うんじゃないかと思うんです」と絶賛した。

▲紙で作られた「トトロぴょんぴょん」のゾートロープ。 (C)Museo dArte Ghibli (C)Studio Ghibli

さらに井上さんより「この美術館に僕も20年の間、結構通ってきてるんですけど、さっきも迷いかけたんですよね(笑)。それがすごく面白いと思います。それは宮崎さんの、アーティストとしての品格の高さ、つまりちゃんとしたものを作らないと自分が許せないっていうことなんですね。だから宮崎さんはホントに面白くって心が温まるもんでないと、それは許せない。そういうものを作らない自分は許せないというのがあって、何が何でもされる。そのためには締切も延ばすしスタッフも泣かせる。ただし品格というのはそれだけで通したらただの暴君でね、その後ろには人に対するすごい愛情と労りと優しい心があって、いつもそれがせめぎ合ってるんです。それが映画を作り終わると『もう映画作らない』という理由なんですよ。すごく頑張って作ったけどそのために多くの人が一生懸命泣いて、汗を流してやってくれた、もうこんな辛いことはしたくないっていうのが毎回出てくるんですよね。そういう宮崎さんの求めるもの高さと、自分の大好きないろんな人たちを大事にしたいという気持ちがね、今度の展示は特に感じました。とてもいい展示だと思います」と宮崎監督への思いと共に本企画展示について語られた。

展示期間中、映像展示室「土星座」にて原作・脚本・監督:宮崎駿(ナレーションも)、オリジナル短編アニメーション「空想の空とぶ機械達」(上映時間:約6分)を特別上映予定。

「空想の空とぶ機械達」 (C)2002スタジオジブリ

■三鷹の森ジブリ美術館新企画展示
「手描き、ひらめき、おもいつき」展〜ジブリの森のスケッチブックから〜
【開催期間】2019年11月16日(土)〜2021年5月(予定)
【開催場所】三鷹の森ジブリ美術館(東京都三鷹市下連雀 1-1-83)
★三鷹の森ジブリ美術館の入場は日時しての予約制
ジブリ美術館のチケットは全国のローソンで毎月10日午前10時から、翌月入場分のチケットを販売。※web、モバイル、点灯Loppiにて予約、ローソン店頭で引き換えになります。
【問い合わせ先】ごあんないダイヤル TEL 0570-055777(休館日を除く9時〜18時)

三鷹の森ジブリ美術館公式サイト http://www.ghibli-museum.jp/