本日11月15日に発売となった雑誌『SOCCER KING』12月号では、「異変だらけの序盤戦、36のなぜ?」と題し、各国の序盤戦で生まれた36の疑問に迫っている。そんな雑誌『SOCCER KING』12月号から、一部コンテンツを公開!

WHY? 13
【LA LIGA】

CL3連覇の“魔法”はどこへやら。第二次政権、不振のなぜ?

文=北川紳也 Text by Shinya Kitagawa
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

※データはラ・リーガ第11節終了時のもの

 今年3月、ジネディーヌ・ジダンの帰還は大いに歓迎された。レアル・マドリードはその直前に行われたコパ・デル・レイとラ・リーガの“ダブル・クラシコ”に敗れ、チャンピオンズリーグでもアヤックスに逆転負け。「どん底に落ちたチームに再び救世主が舞い降りた」と、誰もが思った。

 しかし、あれから半年以上が過ぎた今、マドリディスタに笑顔はない。

 リーグ開幕11戦を終え、6勝4分け1敗の勝ち点22。第9節でマジョルカに今シーズン初黒星を喫したとはいえ、首位バルセロナと勝ち点は並び、優勝戦線から脱落したわけでもない。しかし、王座奪還が期待されたCLではパリ・サンジェルマンに完敗(0-3)し、クラブ・ブルージュにはホームでドロー(2-2)。3戦目のガラタサライ戦で初勝利(1-0)を挙げたとはいえ、前人未到のCL3連覇を成し遂げたジダン第一次政権の面影はすっかりなくなっていた。

 再建のための時間は十分に与えられたはずだった。しかし、なかなかパフォーマンスが上がらない。公式戦で連勝を達成したのは、たったの2度で、2連勝が最長である。レアル・マドリードが3つ続けて勝てないとなると、“事件”だろう。

 そもそも、今夏の時点で悪い予感はあった。エデン・アザールを筆頭に、ルカ・ヨヴィッチ、フェルランド・メンディ、エデル・ミリトン、ロドリゴ・ゴエス、アルフォンス・アレオラを獲得。しかし、ジダンが本命としていたポール・ポグバは取り損ねた。パワーとダイナミズムを備えた同胞のMFは、ジダンが思い描いていた“レアル・マドリード2.0”に不可欠なピースだった。その一方で、ギャレス・ベイルやハメス・ロドリゲスの売却はかなわず、人員整理は進まなかった。

 マテオ・コヴァチッチ、マルコス・ジョレンテ、ダニ・セバージョスを手放した中盤は、守備を一手に請け負える選手がカゼミーロただ一人に。かたやウイングのポジションには、アザール、ベイル、ヴィニシウス・ジュニオール、マルコ・アセンシオ、ハメス、ルーカス・バスケス、ロドリゴ、ブラヒム・ディアスと、毎試合数名は“スタンド送り”にしなければならないほどの人員過多となった。この時点ですでに、ジダンのプランに狂いが生じていたと言える。

 それでも、フレッシュな新加入選手が期待どおりのパフォーマンスを見せていれば、チームに対する印象はもう少し違ったものになったかもしれない。だが現実は違った。リーグ開幕10試合終了時の出場時間を見ると、最も長くピッチに立っていたアザールですら357分と、チーム12番目の数字。ジダンは昨シーズン終盤に「我々はチームを変える」と宣言したものの、開幕当初のスタメンの顔ぶれは第一次政権のときと何ら変わらず、レボリューションのかけらもなかった。

 得点力不足も解消できたとは言い難く、10月22日のCLガラタサライ戦では、27本のシュートを放ち、そのうち13本が枠内に飛んだが、奪った得点はわずかに1つだった。昨シーズンのチーム得点王であるカリム・ベンゼマが好調をキープし、新星ロドリゴが3戦2ゴールと気を吐いているのは明るい材料だが、最も頼りにしていたはずのアザールやヨヴィッチはここまで1ゴールと結果を残せていない。スペイン初上陸とはいえ、2人合わせて200億円近くの移籍金を支払った見返りとしては物足りない数字だ。スペイン紙『マルカ』が行ったアンケートでも、不振の要因として「決定打に欠けること」に半数以上の支持が集まった。クリスティアーノ・ロナウドの穴を埋める作業はいまだ難航しており、チームの足かせとなったままだ。

 そして最大の誤算と言えるのが、頻発するケガだ。プレシーズン中にアセンシオが左ひざの大ケガに見舞われると、10月初旬までに計13人が16度も戦列を離れた。10人を超える選手に筋肉系のトラブルが発生したのは、“異常”と言うほかない。

 一部のメディアから、今シーズンからフィジカルコーチに就任したグレゴリー・デュポンの仕事ぶりを疑う声が上がったのは必然だった。デュポンはそれまでフランス代表でフィジカルコーチを務めており、ロシア・ワールドカップ優勝の“陰の立役者”と言われた。しかし、シーズン開幕前にアメリカ遠征や欧州巡業を強いられた選手たちには、トレーニングの負荷が強すぎた可能性がある。「チーム内には前任者のアントニオ・ピントゥスを懐かしむ選手すらいる」という噂まで浮上したほどだ。

 その真偽はさておき、ジダンのチームでは何よりも選手のフィジカルコンディションが重要視される。CL3連覇を果たしたときも、極端なほどのローテーションを採用して体調管理を徹底させていたのは有名な話だ。予期せぬアクシンデントの連続で“必勝パターン”を崩されたことも、ジダンに追い打ちをかけた。

 誤解を恐れずに言えば、ジダンのチームは“人ありき”だ。「戦術がない」と揶揄されるフランス人指揮官の最大の武器は、ピッチ上の主役である選手を最大限に輝かせるためのマネージメント力だ。その武器を発揮するためには、(その時点で)最高レベルの、そして最良の状態の選手たちがそろっている必要があるが、そうではなかった。歯車がかみ合わない要因はここにある。

 無論、あくまで序盤戦の話である。各国代表での活動に一区切りがついて、選手たちのコンディションが上がってくれば状況が一変する可能性もある。11月26日にはCLでPSGとのリターンマッチが、そして12月18日にはバルセロナとの“エル・クラシコ”が控えている。ジダンの魔法が解けたのかどうかは、この2試合で明らかになるはずだ。