デルはXPSシリーズを「3年先を見据えた最先端のラインアップ」と主張しています。しかし、このところのXPSはInspironシリーズとの差別化が分かりづらくなっているなど、最上位ラインアップという訴求が難しくなっていたというのが正直なところ。また、競合するノートPCベンダーが投入するハイエンドノートPCもデザインに配慮し、外装パネルも高級感のある素材やカラーリングを採用するようになると、XPSシリーズの「特別感」はだいぶ弱まっている、というのが超私的に思う最近の印象でした。

しかし、2019年8月に発表(製品公開はCOMPUTEX TAIPEI 2019に合わせた5月末)した「New XPS 13 2-in-1」は、冒頭で紹介したXPSのコンセプト「3年先を見据えた最先端のラインアップ」たるモデルといえる内容になっています。そういう根拠は、インテル製CPUで最新世代となる「Ice Lake」をいち早く採用したことだけではありません。ボディや搭載するディスプレイも含めて新たに開発した部材を集約した、全く新しいXPSのモバイルノートPCに生まれ変わったことで、従来とは明らかに一線を画するモデルとなったといえるでしょう。

  • Ice Lake世代のCPUを搭載しただけでなくその他の項目も一新した「New XPS 13 2-in-1」

    Ice Lake世代のCPUを搭載しただけでなくその他の項目も一新した「New XPS 13 2-in-1」

この検証記事では、ディスプレイやキーボードなど、従来モデルから大幅に改善したポイントを紹介しつつ、個人向けモバイルノートPC(超私的にはディスプレイサイズが15型未満で本体の重さが1キロ台前半のモデルはモバイルノートPC)でいち早く搭載した10ナノメートルプロセスルールのIce Lake世代CPU、特に「全く新しい第11世代グラフィックスエンジンがベース」というCPU統合グラフィックスコア「Intel Iris Plus Graphics」の処理能力を詳しく検証していきます。

  • パームレスト右端に第10世代CPU搭載をさりげなくアピール

素材レベルから見直し、機能美も感じるボディデザイン

New XPS 13 2-in-1は、ボディデザインからして従来から一新しました。本体サイズは幅296×奥行207×高さ7~13ミリと、従来モデル(XPS 13 2-in-1 2017)と比べて、幅はわずかに短く、奥行きはわずかに長く、高さはわずかに薄く。一方で、重さは最軽量構成で約1.33キロとこちらは、従来モデルの1.24キロからやや重く。ボディパネルはアルミダイキャストからの削り出しで成形した一体型で堅牢性に優れているとデルは訴求しています。

  • 外装パネルはアルミ削り出しのプラチナシルバー

  • 底面も同様で、排熱用と給気用のスリットを設けている

堅牢性の向上としては、他にもキーボード側の外装パネルとディスプレイのベゼル側パネルでファイバー材質を採用しています。New XPS 13 2-in-1にはカラーリングの違いでブラックモデルとホワイトモデルがあり、(どちらも天板と底面はアルミのプラチナシルバー一択)。ブラックモデルではカーボンファイバーを、ホワイトモデルは白に着色したグラスファイバーを用いています。

本体の使い勝手に影響する要素として、堅牢性ととともに重要になるのが「閉じているディスプレイをどれだけ容易に開くことができるか」。片手で簡単に開き、それでいて開いた角度を確実に保持できることが必要ですが、それには、ディスプレイを本体に固定しているヒンジにおけるトルク調整(どのぐらいの力がかかれば動き始めるのか)が重要になります。弱い力で動くようにすると、開くのは簡単になりますが開いた角度を維持できません。角度を維持できるように強い力が必要になるとディスプレイは簡単に開きません。New XPS 13 2-in-1では、可変トルク方式にすることで、片手で簡単にディスプレイを開くことができる一方で、開いたディスプレイの角度は確実に保持できるようにしています。

  • 2-in-1 PCということで、ディスプレイを360度開くとタブレットスタイルで利用可能

ディスプレイのサイズは従来の13.3型から13.4型に変わりました。使い勝手としては、サイズの大型化より画面の横縦比率が従来の16:9から16:10となった変化の影響が大きいでしょう。解像度は3940×2400ドット(俗にいう4K)、もしくは、1920×1200ドットと縦方向に拡大。2-in-1 PCということで、タッチパネルを組み込み、オプションのDellプレミアムアクティブペンを用いれば、4096階調を認識できる筆圧感知によるタッチ操作や入力も可能です。また、タッチパネル搭載ディスプレイでは光沢タイプのパネルを採用しますが、New XPS 13 2-in-1では反射防止コーティングを施すことで、周囲からの映り込みを防ぐようにしています。実際、評価中に文章入力の作業をしていても、照明や外光などが気になるようなことはありませんでした。

  • New XPS 13 2-in-1のディスプレイとキーボードレイアウト

ディスプレイとキーボードが思った以上に好印象

主観的な意見で恐縮なのですが、評価中に最も気になったのがディスプレイに表示する「色」でした。デルの製品説明には、客観的指標として「90% DCI P3の色域」「HDR 400認定取得で10億7000万色を認識」「Dolby Visionコンテンツは、最大40倍の明るさと最大10倍の黒の濃さ」という記載もあります。今回はたまたま、並行して色を扱う原稿データを作成していたのですが、今回のXPSで見ると、従来のXPSと比べて「あざやかで、でも、派手過ぎず、きれいになった」「くっきりと、でも、きつくなく、見やすい描画」と思う場面が多く、数値で表せない“感想”ながら、あえて述べておきたいと思うほどでした。

もう1つ、数値で表現できない主観的な“感想”として、キーボードをタイプした感触についても言及しておきましょう。New XPS 13 2-in-1のキーボードはキーピッチで約19ミリを確保し、かつ、キーレイアウトを改善してほぼ均等ピッチとしたことで運指は楽になっています(ただ、カーソルキー周りは他のキーと分離しておらず、かつ、「PageUp」「PageDown」キーが接しているため誤爆しやすい)。

キーボードはアイソレーションタイプ。1つ1つのキートップはボタンのようになるわけですが、その突起部はほんのわずか。そのため、見た目スクロールが少なくて打ちにくそうでも、実際にタイプすると「カチッ」と押し込んだ指の力を押し返してくれます。そのおかげで、浅めのストロークでも「タイプしている!」という感触を得ることができます。

  • キートップの突起がわずかでストロークが浅いように見えるが、「MagLev」(磁力浮遊式)キーボードのおかげで、カチッとしたタイプ感を得ることができている

これは、2018年に登場したXPS 15 2-in-1から採用を始めて、New XPS 13 2-in-1でも取り入れている「MagLev」(磁力浮遊式)キーボードのおかげです。メカニカルにしてもメンブレンにしてもキートップを支える「物体」でタイプする指の力を押し返していたのに対して、MagLevでは磁力(の反発力)を利用します。固体が要らないおかげでキーボードユニットを薄くできますが、一方で、従来のキーボードと比べてタイプする感触が変化して慣れが必要とする意見もあります。

実際にタイプすると、たしかに「すっ」とキートップを押し込む感触はあまりなく、すぐに「カチッ」と押し込んだ指を押し返してきます。そういう意味で、従来のキーボードとは異なる感覚。スイッチやボタンを押す感触に近いかもしれません。しかし、実際にタイプした主観的感想としては、確実に押した指の力を押し返してくれるので、安心してタイプを続けられます。また、これは好みが分かれるところかもしれませんが、感触は「カチッ」ですが、タイプ音は「パク」と静かだったことも、「使えるところを選ばない」という意味で評価できると思います。

本体に搭載するインタフェースは、2基のUSB 3.1 Type-CとmicroSDスロット、そして、ヘッドフォンとマイクのコンボジャックのみ。USB 3.1 Type-Cは、Thunderbolt 3に準拠しており、PCI Express 第3世代の4レーン接続となっています。電力供給とDisplayPortとしても利用できます。USBメモリなど利用する機会がまだまだ多いUSB Type-Aについては、標準で付属するType-C-Type-A変換アダプタを用いて使うことが可能です。

  • 右側面にはUSB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3)とmicroSDスロットを備える

  • 左側面にはUSB 3.1 Type-C(Thunderbolt 3)とヘッドフォンとマイクのコンボジャックを搭載する