ユーロ2020の出場権を獲得したイタリア代表 [写真]=Getty Images

 アッズーリがミッションを成し遂げた。10月12日、イタリア代表はローマのオリンピコ・スタジアムでギリシャを迎え撃ち、2-0と快勝した。これで7大会連続、通算10度目となるユーロ本大会出場が決定。ユーロ誕生から60年記念を祝う、12カ国で開催される2020年大会の出場権をつかんだ。強敵不在の予選とはいえ、2018年のロシア・ワールドカップや、U-21代表が2019年東京オリンピックの出場権を逃していただけに、イタリア・サッカー連盟(FIGC)の関係者は胸をなでおろしたに違いない。

 フィンランド、アルメニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ギリシャ、リヒテンシュタインと同組のグループJを戦ったイタリアは、予選突破を決めたギリシャ戦を終えて7戦全勝。さらに15日のリヒテンシュタイン戦にも5-0と大勝した。これでユーロ予選は無傷の8連勝、昨年11月20日に行われたテストマッチのアメリカ戦を含めれば9連勝となり、1934年、1938年と史上初のワールドカップ2連覇を成し遂げた時代の大記録に肩を並べた。フランスやブラジルを倒し、さらには1938年ワールドカップ決勝でハンガリーを破って達成した80年前の9連勝と比較するには物足りなさが残るが、イタリアメディアはロベルト・マンチーニ監督率いる現イタリア代表の記録を評価した。

 ギリシャ戦では、1954年のアルゼンチン戦以来となるマッリャ・ヴェルデ(緑色のユニフォーム)を着用して臨んだ。前半こそゴール前を固める若手主体の相手に苦しみながらも、63分にジョルジーニョがPKでゴールをこじ開けて先制。78分にはフェデリコ・ベルナルデスキがミドルシュートをねじ込み、2-0で勝利した。5万7000人の大観衆の声援に勝利で応えたマンチーニ監督は試合終了後にインタビューで、「ギリシャが守備を固めてくることはわかっていた。しかし、我々はこのような戦い方に慣れなければいけない。これからもこういった自陣に引きこもるチームと戦うことになるのだから。正しい突破口を待てず、見出すこともできなかった。あまりにプレーに夢中になってしまった。今日のような雨で水浸しになったグラウンドで戦うには、こういった戦い方は褒められるべきではない」とプレーの内容に不満を示したものの、「先制点を奪ってからは、チャンスも作ったし、戦い方は確実に良くなった」と評価するところもあった。

 ワールドカップで4度優勝の実績を誇るイタリアだが、ユーロでの優勝は地元開催の1968年大会一度だけと相性は良くない。51年前の本大会出場国は4。しかも旧ソ連との準決勝は、延長戦を終わっても決着がつかず、グラウンド上で審判によってコイントスが行われ、その結果イタリアが決勝に駒を進めた。さらに、ユーゴスラビアとの決勝は延長戦を1-1で終えて試合終了。2日後の再戦を2-0で制したとはいえ、諸手を挙げて「優勝した!」とは言い難いものだ。それ以来、今日まででもっとも優勝に近づいたのは2000年大会。アレッサンドロ・デル・ピエロやフランチェスコ・トッティら多くのタレントを擁して臨んだ大会は、フランスとの決勝でダヴィド・トレゼゲにゴールデンゴールを奪われ涙をのんだ。長く優勝から遠ざかっているだけに、来年の大会制覇を望む声は少なくない。その思いは、代表の再建を託されたマンチーニ監督も同じだろう。

 イタリアは本大会で、グループリーグ3試合をローマのオリンピコで戦うことが確実となった。ワールドカップやユーロといったビッグイベントを首都ローマで戦うのは1990年のワールドカップ・イタリア大会以来。この大会では、グループリーグから準々決勝までの5試合をオリンピコで戦った。当時、選手として招集されながらもピッチに立つことは一度も叶わなかったマンチーニ監督だが、「“ノッティ・マジケ(魔法の夜)”が戻ってくるように願っている」と、イタリア中が熱狂した1990年ワールドカップの再現を欲していることを明言した。

 マンチーニ監督の最大の功績は、若手の積極採用だろう。筆頭は、ニコロ・ザニオーロ(ローマ)だ。セリエAの出場がなかった当時19歳の若者を昨年9月に大抜擢。この招集は一時は批判を浴びたが、今のローマでのザニオーロの活躍を見れば、マンチーニの目利きの良さが光るばかり。来年の本大会では攻撃の中心を司ることが期待される。また、26日のジェノア戦でセリエA初ゴールをマークしたサンドロ・トナーリ(ブレシア)も19歳ながら期待が高まる。昨年11月に初招集し、15日のリヒテンシュタイン戦ではフル代表デビューも経験した。さらに、フィオレンティーナで非凡なテクニックを披露しているガエターノ・カストロヴェッリも年内の代表戦で招集されると予想される。これで、マルコ・ヴェッラッティ(パリ・サンジェルマン)、ステファノ・センシ、ニコロ・バレッラ(ともにインテル)といった能力の高い選手が揃う中盤のレギュラー争いはさらに熾烈になる。マンチーニ監督にとっては新たな悩みの種となりそうだ。

 また、ユーロ予選では格下の相手が多かったとはいえ、8試合3失点はかなり評価できる数字だ。ジャンルイジ・ブッフォン(ユヴェントス)に代わって新守護神となった“もう一人のジャンルイジ”、ドンナルンマ(ミラン)は20歳とは思えない風格を表し、レオナルド・ボヌッチ(ユヴェントス)がリーダーとしての存在感を発揮している。ただ、やはりジョルジョ・キエッリーニ(ユヴェントス)の復活が待たれる。35歳とはいえ、世界屈指の対人能力を持つ“守備のエース”で、欧州制覇を目標とするならば不可欠な存在だ。

 一方、懸念されるのが絶対的な点取り屋の不在だ。予選ではチームとして25得点を記録しているが、最多得点はアンドレア・ベロッティの3ゴール。その内訳は、アルメニアから1得点、リヒテンシュタインから2得点と弱小国からのもの。セリエA第11節終了時で得点ランキングのトップに立つチーロ・インモービレ(ラツィオ)は、9月8日のフィンランド戦でゴールを記録しただけ。セリエAで2度得点王に輝いたストライカーだが、代表ではこれが2年ぶりの得点と、国際舞台で実力を発揮できずにいる。3月のフィンランド戦でイタリア代表史上2番目の若さでゴールを決めたモイーズ・キーンは、今夏に移籍したエヴァートンでゴールを奪えずにいる。今のままでは代表復帰は難しいだろう。

 そんななか、昨シーズン、カリアリで16ゴールをマークしたレオナルド・パヴォレッティがじん帯損傷からの復帰に近づいているのは朗報だ。大型FWが不在なだけに、復帰後のパフォーマンスが良ければ、すぐに声がかかるに違いない。今夏からブレシアでプレーするマリオ・バロテッリも当然、マンチーニ監督によって注視されているはずだ。5試合で1ゴールとまだ全快とはいかないが、内容自体は悪くない。ゴールを量産できれば、今の代表にはないタレントだけに必要な存在となろう。

 そして、この17歳もすでに招集候補に入っているだろう。インテルのセバスティアーノ・エスポージトだ。アントニオ・コンテ監督によって今夏のプレシーズンマッチから多くのプレー機会が与えられ、高い評価を得た。10月23日のチャンピオンズリーグ・グループステージ第3節、ドルトムント戦では百戦錬磨のマッツ・フンメルスにスピードで競り勝ち、PKを誘発する狡猾さも見せた。その3日後にはパルマ戦でセリエAデビューを実現し、臆することなくポテンシャルを発揮している。今後もコンスタントにピッチに立つ機会を得て、1度でもネットを揺らすことがあれば、マニチー二監督から招集の連絡を得ることとなるかもしれない。コンテ監督は、経験値の低い10代の起用について「私は年齢を考えない」と語った。それはマンチーニ監督にとっても全く同意見であるに違いない。来年のユーロでは、若く勢いのあるアッズーリが見れそうだ。

文=佐藤徳和/Norikazu Sato