住宅ローン返済が75歳まであるということで悩む専業主婦の方。夫の定年は60歳で退職金はあまり期待できないとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◆私がうつ病で働けないため、ギリギリの生活で老後資金を思うように貯められていません
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回は、住宅ローン返済が75歳まであるということで悩む専業主婦の方。夫の定年は60歳で退職金はあまり期待できないとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◇相談者
青薔薇さん(仮名)
女性/専業主婦/54歳
近畿/持ち家(マンション・集合住宅)

◇家族構成
夫(49歳)

◇相談内容
住宅ローン完済が75歳で心配です。住宅ローンがボーナス併用5万円あります。主人は70歳ぐらいまで働くから心配するなと言いますが、今年金利見直しで固定1.3%、10年後に金利見直しがまたあります。その時にボーナス併用部分残り16年を現金で入れて月々の払いにしようかと思っております。

主人の職業が大型トラック横転手で遠方に出かけ週1日しか帰宅しないので、お小遣いはタバコ代、週初めはお弁当を持たせますが、SAかコンビニでの食事が多く、食費が割高なので4万円としています。

医療保険に入りすぎているのは、病気をして入院した場合、お給料がほぼ0になるからです。過去4回保険でなんとか助かったこともあり、ストレスも溜まる職業なので手厚くしています。

娯楽雑費1万円は私のフィットネスクラブ代6000円と主人のサプリ代です。投資は今月からつみたてNISAを毎月1万円で始めてみました。給料に変動があり、悪い時で25万円、良い時で30万円です。

私がうつ病で働けないため、ギリギリの生活で老後資金を思うように貯められていないのが悩みです。

定年は60歳らしいのですが、退職金はあまり期待していません。定年後も会社は県内で運転手として雇ってくれるようです。もちろん収入は15万円程度になると思います。

何とか私が少しでも働いたほうがいいのですが体調が思わしくなく、心配ばかりしてどうしようもなく過ごしております。

◇家計収支データ
相談者「青薔薇」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足
(1)住居費について
・購入時の物件の状況:新築9年
・借入時期:平成22年5月
・物件価格:2130万円
・頭金:50万円
・ローン残高:2080万円
・借入期間:35年
・金利のタイプ:固定1.3%※10年後に金利見直し
・毎月の返済額:5万4000円
・ボーナスの返済額:5万円
・固定資産税:8万8000円

(2)車両費について
車の所有台数は1台です。夫がバイク通勤しています。また、この先、車を買い替える予定はありません。

(3)加入保険について
・本人/医療保険(入院1万円/日、終身払い)=毎月の保険料4737円
・本人/共済(入院6000円/日)=毎月の保険料1600円
・本人/三大疾病=毎月の保険料2961円※あと4年で切れるのでガン保険に近々加入予定
・本人/個人年金(年100万円受取、60歳から15年確定、60歳まで支払い)=毎月の保険料1万3210円
・夫/終身保険(100万円、終身払い)=毎月の保険料2761円
・夫/家族収入保険(万が一の場合、月13万円、65歳まで保障、65歳まで支払い)=毎月の保険料6539円
・夫/医療保険(入院1万円、終身払い)=毎月の保険料9223円
・夫/医療保険(入院5000円、終身払い)=毎月の保険料3444円
・夫/ガン保険(終身払い)=毎月の保険料6441円
・夫/個人年金(年102万円受取、60歳から10年確定、60歳まで支払い)=毎月の保険料2万8460円

(4)ボーナスの主な使い道について
全額貯金。ボーナスは冬のボーナスだけ3万円をつみたてNISAに追加するつもりです。

(5)お勤め先について
退職金がいくら受け取れるかはわかりません。

(6)年金について
・夫:公的年金は年金番号がわからないため不明。夫が今年の12月で50歳になるのでねんきん定期便を待っている状態。
・本人:正社員で働いていた合計6年と3カ月ぐらい、あとは夫の扶養

◇FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:心配しすぎず、今できることをやっておけば大丈夫
アドバイス2:公的年金と個人年金で老後資金の目途は立っている
アドバイス3:住宅ローンは繰り上げ返済せず、年金からの返済でOK

◆アドバイス1:心配しすぎず、今できることをやっておけば大丈夫
頼りになるご主人ですね。70歳ぐらいまで働くと言っておられるのは、何よりも心強いことです。青薔薇さんは過度に心配することなく、ご自身の体調を整えるように、穏やかに過ごしてほしいと思います。

絶対無理は禁物ですが、可能であれば月2万円でも3万円でも収入が得られるようバイトなどしてみてはいかがでしょうか?

家にこもってばかりだと、不安や心配ごとが募ってしまうこともあるでしょう。外に出て、だれかと話ができるだけでも、心の持ちようが変わるのではないでしょうか? 主治医がいらっしゃると思いますので、ご相談しながら、外に出る機会をもう少し作られてください。

とはいえ、金銭的な心配ごとが解消されなければ、青薔薇さんの気持ちも落ち着かないでしょう。ひとつずつ、解決していきましょう。

まず、住宅ローンについてです。今年、金利の見直しをされたとのことですが、それでも見直し後の金利は、高いです。10年固定で現在は0.4%台~0.5%台です。

借入している金融機関ではなく、別の金融機関への借り換えで、検討してみてください。借り換えに費用がかかりますが、長期で考えれば、今、低利のローンに借り換えておければ、ひとつの安心材料になるでしょう。

保険については、やや過剰に保険に頼りすぎているように思います。病気入院などの場合、収入がゼロになるということですが、会社員であれば、傷病手当金など公的な保障があり、収入がゼロになることはありません。

また、一定額以上の医療費はかからない高額療養費制度(これは国民健康保険でも適用されます)もあります。ご主人の会社の社会保障については、再度確認してみてください。

その上で、ご主人の保険は、家族収入保険と入院日額1万円の医療保険、個人年金保険のみ残し、終身保険は払い済みに。入院日額5000円の医療保険とガン保険は解約でいいでしょう。

青薔薇さんご本人は、医療保険と個人年金保険のみ残し、他の2つは解約。これで、1万6000~1万7000円削減でき、貯蓄に回すことができます。つみたてNISAと合わせて、2万5000円は毎月貯蓄、積み立てをしていけます。

ガン保険については、血縁関係にガンに罹患した方が多く、心配であれば、継続しても構いません。

ボーナスからの貯蓄は、住宅ローン返済以外の30万円は貯蓄できるようなので、ご主人が60歳までに330万円貯まります。

毎月の貯蓄分が330万円になりますから(つみたてNISAの運用分は考慮せず)、合わせて660万円。現在の貯蓄330万円ですから、合計で990万円。これがご主人60歳時点で残せる金融資産となります。

今、できることをしっかりやり、青薔薇さんが働いて得た収入は、生活のゆとりのために使っていいでしょう。

◆アドバイス2:公的年金と個人年金で老後資金の目途は立っている
990万円では不安と思われるかもしれませんが、ご主人と年齢差が5歳あることが、プラスに働きます。

ご主人が55歳の時、青薔薇さんは60歳。ご主人は現役で現在の収入が維持され、青薔薇さんの個人年金約100万円の受け取りが始まります。ご主人が60歳になれば、ご主人の個人年金102万円が受け取れ、青薔薇さんは公的年金の受給開始年齢になっています。

つまり、ご主人55歳、青薔薇さん60歳からの5年間は、青薔薇さんの個人年金分は、そのまま貯蓄にできます。

ご主人60歳、青薔薇さん65歳からの5年間は、ご主人の収入が15万円に減っても、二人の個人年金が月額約17万円ですから、現在の収入より多くなり、貯蓄に回すことも可能でしょう。

このように、順繰りに個人年金の受け取り、公的年金の受け取りがやってきますから、青薔薇さんが60歳以降、経済的、かつ大きく困ることはないと思われます。

個人年金の受け取りは、ご主人が70歳、青薔薇さんが75歳の時に終了しますので、それ以降は、公的年金のみとなりますが、その間、貯蓄を取り崩すことなく、逆に貯蓄が増えていることでしょう。

公的年金についても、ご主人はおそらく年180万円程度、青薔薇さんは国民年金78万円+厚生年金分で9万円程度。つまり月額22万~23万円の年金が受け取れますから、現在の生活費を少しコンパクトにすれば、年金だけでも生活していけるでしょう。

公的年金額が、いまのところ不明とのことですから、しっかり確認しておいてくださいね。

老後を迎える準備は、十分できていますので、70歳、75歳までの期間で、990万円にどれだけ、上乗せして貯蓄しておけるか、ということになると思われます。大丈夫です。

◆アドバイス3:住宅ローンは繰り上げ返済せず、年金からの返済でOK
最後に、ご主人が75歳まで続く、住宅ローンの返済ですが、今、低利のローンに借り換えたとしても、そのまま返済を続けていけばいいでしょう。

もし借り換えができれば、60歳以降、ご主人のボーナスがなくなる可能性もあるので、ボーナス返済をなしにして毎月返済のみに組み直すのもいいかもしれません。

いつまでも住宅ローンが残るのは心配かもしれませんが、アドバイス2で説明したように、年金を受け取りながら、住宅ローンの返済を続けることに無理ではないので、一括繰り上げ返済などで現預金を減らすことなく、返済していっていいと思います。

完済するまでは、団体信用生命保険の保障がありますから、万一の時には残りの住宅ローンは相殺され、負担はなくなります。

まったく心配がないわけではありませんが、保険の見直しと少しの家計見直しで、安心して老後を迎えることができますので、青薔薇さんは体調を整え、ご主人は事故のないよう、安全運転第一で過ごされることを願っています。

ご主人が週1日しかご帰宅されないのも心配ごとになるかもしれません。70歳まで働くとおっしゃっていますが、どうかお二人の時間を大切になさってください。

◆相談者「青薔薇」さんより寄せられた感想
この度はお忙しい中、相談にのっていただきありがとうございました。保険のほうは少しやはり見直し検討してみます。ガン家系ですのでガン保険は持っておきたいです。

年金を受け取りながら、住宅ローンの返済を続けることに無理ではないと言っていただいたのが、本当に安心しました。けれども油断せずにこれからも家計のダウンサイジングしつつ貯蓄に励んでいきます。

先生のおっしゃる通り家に引きこもってばかりは良くないと承知してます。なにか軽いバイトがないか探してますが、募集をみてるとなかなか責任感のある職種ばかりでため息をついてます。

唯一の息抜きはフィットネスで汗を流すことです。この度は、私達夫婦の5歳の歳の差の、この複雑な老後のお金の収支を解明していただき、感謝します。ありがとうございました。

教えてくれたのは……深野 康彦さん

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文:伊藤加奈子

文=あるじゃん 編集部