【FPが解説】政府のNISA恒久化見送りと「つみたてNISA」への期待

金融庁が財務省に提出する2020年度税制改正要望にNISA制度の恒久化が盛り込まれる方針でしたが、今回見送られることになったとのこと。富裕層への優遇とみなされたのが原因です。今後、改正に盛り込まれそうなNISAに関わる制度についてご紹介します。

NISAは2023年まで「時限制度」の問題点

2019年3月末時点で、NISAの口座数は約1,283万口座で累積買付額は約16.5兆円、「つみたてNISA」の口座数は約127万口座で累積買付額約1,332億円とかなり利用者が増えています。ただ、NISAは非課税期間5年で2023年まで投資可能、「つみたてNISA」は2037年までの時限制度です。

この時限制度に関わる問題点を整理しておきましょう。

まず、NISAの場合、非課税で運用できる期間は2023年までの投資です。2023年までであれば5年間の非課税期間が終了した後もNISAで運用を継続できますが、仮に、2019年に投資をした場合、その資金の非課税期間は2023年までとなります。もし同じ資金でNISAでの運用を続けようと思っても5年後は投資可能期間をオーバーしてしまうため、ロールオーバーできません。つまり、2019年以降の投資は、文字通りの5年間のみの非課税期間となってしまっているのが現状です。 

非課税期間終了後は売却するか、課税口座に移すことになりますが、問題となるのは、運用で損が出るため売却せずに非課税期間終了時に課税口座に移すケースです。

この場合、課税口座での取得価格は課税口座に移管した時点での基準価格となるので、移管後に値上がりした場合には損が出ているにもかかわらず、課税されてしまいます。運用ではなくて制度の仕組みで損が出てしまう可能性があるのは本末転倒ですし、投資は長期でと言いつつも実際にはあまり長期投資には向いていない、という点で特に若い人にとっては使いにくかったのが現状です。

また、現行制度では「つみたてNISA」は2037年までの投資が非課税の対象です。

制度開始の2017年から投資を開始する人は20年間の積立期間が確保できる一方で、2018年以降の投資では、積立期間が1年ずつ短くなり、長期の積立投資を奨励する制度であるにもかかわらず、 20年の積立期間が確保されません。加えて、投資開始が1年遅れるごとに40万円ずつ投資可能金額も減ってしまうという問題点もありました。

つみたてNISA恒久化は今後も模索

こういった問題点がある中で、金融庁は以前からNISAの恒久化を政府・与党に要望していましたが、今回、政府・与党は、NISAの恒久化を見送ることを正式に決定しています。

現行の一般NISAは、比較的資産がある層が短期売買に使用しているケースが多く、富裕層への優遇だとの指摘があったのが原因といえます。

一方、完全に廃止してしまうと株価に悪影響を与える可能性もあるため、制度設計を見直した上で時限措置で存続させる方法を模索するそうです。反面、若年層・中年層などに資産形成を促すためにつくられた「つみたてNISA」は期限の延長を議論していきます。

今後は、金融庁と財務省が議論を進めて内容を詰めたうえで、与党の税制調査会で検討して、年末にまとめる2020年度の税制改正大綱に反映させる見通しとのこと。

「つみたてNISA」において投資の開始時期に関わらず、20年間の非課税期間が確保されれば、資産運用する側からするととても嬉しい改正案です。

ちなみにいわゆる一般のNISA利用者は約7割が50歳以上の利用者に対して、「つみたてNISA」の利用者は約6割が20~40代です。より老後の資産形成が必要な若年層が使いやすい少額から長期分散投資が可能な「つみたてNISA」のみを恒久化する、というのはうなずけますね。

転勤などで海外移転した場合も改善か

また、今回、改正案が盛り込まれるかどうかはわかりませんが、海外移転した場合の取り扱い改善も要望されています。

現状、NISAは日本に居住している者しか利用できないため、NISA口座保有者(一般NISA、つみたてNISA)が海外転勤等により一時的に日本を出国する場合、既にNISA口座で保有している金融商品は非課税口座では運用を継続することはできず、課税口座に移さなければなりません。

さらに、帰国後、一旦課税口座に払い出された金融商品をNISA口座に戻すこともできない仕組みとなっています。運用の中断が生じてしまうのは長期運用という観点では効果的ではないので、NISA口座保有者が、海外転勤等により一時的に出国する場合など、日本を離れている間であっても引き続きNISA口座を利用できるようにする改定案も出されているようです。

そのほか、企業が従業員の資産形成を支援するため、「つみたてNISA」向けに企業が奨励金を支給する場合、その一部を非課税にする制度の導入も2020年度の税制改正要望に盛り込む話もあります。奨励金は現在、給与所得とみなされて課税対象となっていますが、このうち毎月1,000円を上限に、所得税や地方税が掛からないようにする制度改正を、3年間の時限措置として求める方針とのことです。

有利に将来の資金準備ができる仕組みですので、アンテナをしっかり張って使い漏れのないようにしたいものですね。今後の動向に要注意です。

執筆者:金子 千春