皆さんこんにちは!旅行へ行ったら河原で石拾いをしている科学コミュニケーターの鈴木です!

だいぶ昔のことになりますが、この科学コミュニケーターブログでオパールについてご紹介しました。

「オパール色に輝く」
https://blog.miraikan.jst.go.jp/other/20170821opal.html

上の記事では、オパールの色についてご紹介しました。石がもつ不思議な「色」は石の大きな魅力の一つですが、自然が作るその「形」も興味深いものがあります。中には、ほかのものと見間違えてしまうような奇妙な見た目・形の石が存在します。20191014_t2-suzuki_01.jpg

オパールがあのような色に見えるのは、小さな二酸化ケイ素のビーズが規則正しく並んでいるためでした。地中で温度や圧力などの条件が整うと、自然とそのような見た目の色にできあがります。石の形についても話は同じです。周囲の環境によって、「石がその形になりたがって」そのような形になります。

石の見た目が他の別のものに似てしまうことがあったとしても、それには理由があるのです。

今回は、皆さんも石の気持ちをもっと感じ取れるよう、石の形の話をお届けします。

■なぜか石ではないものに似ている石

<しのぶ石>
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植物の化石や、シダなどに似た見た目をしている石です(シノブというシダにちなんだ名前でしょう)。その正体は二酸化マンガンという金属酸化物です(写真の黒い部分です。これがしのぶ石です)。白っぽい部分の石にできた隙間に二酸化マンガンが染み出して固まって成長するのですが、なぜこんな見た目なのでしょうか。

それは、二酸化マンガンが成長するときの性質が原因です。二酸化マンガンを含めて石は基本的にきれいな形にまとまりたがります。しかし、きれいな形にならずにヒビやズレができてしまうと、そこから新たに成長が始まるという性質があります(たとえば、棒状に成長する石の途中にヒビなどができると、そこから新たに棒が生えてくるという具合です)。

しのぶ石は非常に早く成長してできた石です。成長が早いときれいな形にまとまらないことが多くあります。二酸化マンガンがヒビやズレだらけで成長するので、枝分かれが多いこのような見た目になります。

<ぶどう石>
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マスカットに似ている石です。カルシウムやアルミニウム、ケイ素などが成分の石です。本来は無色の石ですが、鉄が少量含まれるとマスカット色になると考えられています。

ぶどう石はその名の通り丸いマスカット状の形をしていますが、よく見ると表面が凸凹していることがわかります。実は、ぶどう石は四角い形にまとまりたがる石です。四角い形が寄り集まった結果、丸い形になっているのです。

<豚肉石>
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豚の角煮みたいです。でも石です。白い部分は方解石やあられ石、赤い部分は酸化鉄でできています。

これらの成分が豚肉状の見た目になるのは、単に偶然です。石の見た目は石が作られる場所、つまり、地下の温度や土の成分の違いなどに左右されます。その結果、石の見た目が場所によって大きく変化し、その中にたまたま豚肉のような見た目になるものがあったというわけです。裏を返せば、石を見ればどこの国のどこの鉱山で採れたのか、さらには一緒に採れそうな他の石も予想することができます。

■石の形のバリエーション

上で見てきただけでも石の形はたくさんありました。実は、石の形の種類はある程度分けることができます。なんと、わずか7種類に分けることができます。

でも石は割ったり削ったりすれば形が変わりますね。7種類だけというのは、どういうことでしょうか。

それは、石の「結晶のタイプ」が7種類に分けられるということなのです。結晶というのは、固体状態のひとかたまりのものとは少し違います。例えば、カクカクした角が見えているダイヤモンドや水晶の一粒などがよく目にすることのできる結晶です。単結晶では、原子が規則正しく寄り集まってできています。一方、道によく落ちている石や豚肉石は様々な種類の結晶が集まって固まった"混ざりもの"です。ぶどう石の丸い形やしのぶ石のシダ状の形は一種類の結晶がたくさん集まってできています(ただ、実際にはどこまでが一粒の結晶なのかを見分けるのは難しいです)。

そんな結晶の一粒を分類すると下の7種類になります。この7種類のうち「非晶質」というのは結晶にならないもののことです。

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これらの形は、「縦・横・上に隙間なく無限に敷き詰められる形」と「不規則でぐちゃぐちゃな形」です。こうした形以外に同じようにしてぎっしり敷き詰められる形は他にありません。数学的にも証明されているようです。

■石のルールを破ったノーベル賞

石の形は全部で7種類ということをお見せしましたが、実は例外が見つかっています。

これまで全てだと思っていた7種類は、「縦・横・上に隙間なく無限に」敷き詰めることができる形でした。つまり、単に積み上げるのとは違う敷き詰め方について考えていなかったのです。

実際に、長い間その7種類の固体しか見つかっておらず、それ以外の形について考えた研究者はいなかったでしょう。しかし、1984年に例外が見つかりました。

それを発見したのはダニエル・シェヒトマン博士。発見した例外は「準結晶」と呼ばれ、2011年にノーベル化学賞に選ばれています。先入観と常識をひっくり返した偉大な発見です。

■おわりに+ついでに

石の形のお話、いかがだったでしょうか。

自然にできた変な形の石もそのような形になる理由がちゃんとあり、しかも、その形の種類はほぼ7種類に分けられるのです。(自然の準結晶はなかなか見つからないです)

これできっと皆さんも石の気持ちを感じ取りやすくなったはずです。石のイベントはたくさん開かれていますし、紹介しきれなかった変な見た目の石もたくさんあります。ぜひ、いろんな石に思いをはせてみてください。

<ついでに>

石は原子が集まったものです。原子や並び方によって見た目の違いや性質の差が生まれます。その構造や性質についての研究は化学の分野になります。

しかし、その原子の並び方はどのようなパターンはいくつあり得るか、どのようなパターンはあり得ないか、などは数学の研究分野です。

石と化学と数学がこのように交錯するさまは感慨深いものがあります。私はもともと化学の分野で研究を行っていましたが、他の分野についても知っていないとわからない背景や視点がたくさんあるのだなと感じました。皆さんも趣味と数学をかけ合わせてみてください。きっと新しい見方ができると思います。

未来館では、準結晶のダニエル・シェヒトマン博士がノーベル化学賞を受賞した2011年に、その受賞内容を紹介するブログ記事を公開しました。また、準結晶研究の第一人者である東北大学の蔡安邦博士をお招きしたサイエンティスト・トーク「ノーベル化学賞2011 これが準結晶だ!!」を同年12月に開催しました。数学と化学が交錯する準結晶にご興味をもたれた方は、ぜひどうぞ。

10分でわかるノーベル賞2011~化学賞~(田端萌子 2011年10月6日)
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/201110062011-4.html
続:10分でわかるノーベル賞2011~化学賞~ で、準結晶って?(田端萌子 2011年10月14日)
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20111014102011-1.html
キーワードは「秩序」~12月23日に準結晶のサイエンティスト・トークを開きます~(田端萌子 2011年12月19日)
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/201112191223.html
キーワードは「秩序」その2~大盛況でした、サイエンティスト・トーク!~(田端萌子 2012年1月11日)
https://blog.miraikan.jst.go.jp/event/20120111post-155.html
サイエンティスト・トークのその後(田端萌子 2012年1月21日)
https://blog.miraikan.jst.go.jp/event/20120121post-159.html

とても残念なことに、蔡安邦博士は2019年5月に心不全のため60歳の若さで急逝なさいました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。



Author
執筆: 鈴木 毅(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
大学では、面白そう・あまり難しくなさそうという理由から化学を選択。そして「これからの時代は新エネルギーだ!」という天啓から太陽電池の研究室に進み、博士号を取得。その後一年半ポスドクをし、「もっと色々な人が科学に興味をもち研究者になって欲しい。そのためにはどうすればよいか」と考えながら2016年10月から未来館へ。