人事クラウド大手のWorkdayが本格的に機械学習に取り組んでいる。「今後5年後は、ビジネスプロセスオートーションよりも、予測や異常検出などの機械学習での価値が重要になる」というのは共同創業者兼CEOのAneel Bhusri氏。Workdayが10月18日まで米国で開催した年次カンファレンス「Workday Rising 2019」で、CEOがグループ取材に応じた。

  • Workday 共同創業者兼CEOのAneel Bhusri氏

Workdayのこのところの機能強化は機械学習が中心だ。例えば「Workday Prism」があるが、Bhusri氏はこれについて、データを活用しての予測、一部機能の自動化、異常検出の3つで機械学習を活用していると戦略をまとめる。そして、「Workday、Salesforceなどビジネスプロセスオートメーションのためのプラットフォームがある。我々ベンダーの次の目標は、どのようにデータを活用してより良い意思決定につなげるかになる」と流れが機械学習に移っていることを説明した。

機械学習でのWorkdayの強みは、2004年の創業時から特徴としてきた”パワー・オブ・ワン”だ。1つのデータソース、1つのセキュリティモデル、1つのバージョンを全顧客が使うというもので、データをすぐに活用できるメリットにつながっている。

「データがあるところが機械学習の競争に勝つ。Workdayは(すぐに機械学習に使うことができる)クリーンなクラウドの人事データがある」「レガシーアーキテクチャでは活用できない」と自信を見せる。

競争では、マルチテナントも優位性という。

「マルチテナントで、我々の競合はいない。SAP、Oracleなどのレガシー企業はマルチテナントを完全に受け入れておらず、モダンなアーキテクチャではない」とBhusri氏、人事は持っていない「GoogleやAmazonの方が恐ろしい。彼らはモダンなアーキテクチャを構築しており、迅速に動くことができる」とも述べた。

Workdayのシェアは、Fortune 500では40%、Fortune 50では50%であり、運用環境にある顧客は70%に達しているという。

「大手の70%がクラウドプラットフォームを選び、50%がWorkdayを選んでいる。このうちの70%が運用環境に入っている。我々はソフトウェアを売っているのではなく、顧客の問題を解決している。そのためには運用環境で使ってもらうことが大切だ」と述べた。なおWorkdayは顧客のサクセスサポートで、継続的な受け入れのためのツールの拡充に加え、顧客がWorkdayの機能を使ってビジョンを実現するのを支援する”パーソナルトレーナー”サービス「Workday Success Plans」を導入することも発表している。

Workdayは人事でスタートしたが、財務、プランニングなどの分野にも拡大している。顧客数は人事のHCM「Workday Human Capital Management」が2800社以上、プランニングは4500社以上(Adaptive Insights買収により一気に顧客を獲得したため)、財務の「Workday Financial Management」は725社。そして1年前にスペンドマネジメントとして別立てにした「Workday Procurement」は初年度にしてすでに650社が使っているという。

「素晴らしいスタートを切ることができた」とBhusri氏。

Procurementは「顧客の要望を受けてのもの」と説明しながら、今後1年で製品体系とビジョンをさらに明確にしていくとした。

「(スペンドマネジメントの)この市場は大きい。HCMやFinancialsなどとのクロスセルが可能で、大きなチャンスになる」という。

中核となる人事も強化しており、昨年発表した「Skills Cloud」(従業員のスキルの共通定義ができる)、そして今年は企業が自社のスキルマップを作成してスキルギャップをより正確に把握できる「Skills Insights」を発表した。

これについては、「従業員のプランニングやスキル戦略について洞察が得られる。どんなスキルが社内にあるのかを把握でき、足りないスキルについては、社内のスキル開発でも外部からのソーシングでも、ターゲットを絞って活動できるようになる」とメリットを説明、「企業はより正確に分析したいと思っており、我々としても重要な戦略的投資分野となる」とした。

なお、従業員体験では「People Experience」も登場している。SAPがQualtricsを買収するなど、体験データをえるサーベイが注目されているが、ここではMedalliaと提携して顧客体験のデータを収集し、従業員体験との関連などを探っているという。

このようにシェアを広げ製品範囲を拡大するWorkdayだが、日本での存在感は米国ほどではない。

これについてBhusri氏は、「日本市場にコミットしている。PeopleSoft(Bhusri氏はPeopleSoftの共同創業者で、PeopleSoftがOracleに買収された後にWorkdayを立ち上げた)は日本で成功していた。4月に大量採用、大量異動があるなど、日本独特の文化も理解している」と述べる。

そして、Workdayプラットフォームを拡張できるPaaSの「Workday Cloud Platform」が、カスタマイズを好む日本企業がWorkday採用につながる重要な技術になるとの見解を示した。Workday Cloud Platformはこれまで限定的に提供されており、日本ではすでに楽天が同プラットフォームを利用して拡張機能を開発している。Workday Cloud Platformは2020年に一般提供となる予定で、日本市場の盛り上がりに期待を寄せた。